カテゴリーアーカイブ:行政

忘れられた成長の「約束」

2023年4月6日   岡本全勝

3月30日から日経新聞が「検証 異次元緩和10年」を始めました。
・・・10年にわたって異次元緩和を進めてきた日銀の黒田東彦総裁が4月8日、退任する。発行済み国債の半分以上を日銀が買い上げ、長短金利を押し下げてきたが、目標とした賃上げを伴う物価上昇の実現はいまだ道半ばだ。日銀と共同声明(アコード)を結んだ政府の成長戦略も十分だったとは言いがたい。日本経済をどう押し上げていくのか、実験的な金融政策の総括が必要となる・・・

第1回の「忘れられた成長の「約束」 日銀頼み空転で実質賃金5%減 政府、経済構造変革せず」から。
・・・金融緩和に消極的な白川氏から黒田氏に総裁が代わり、円相場は就任時の1ドル=90円台から2年で120円台まで下落。日経平均株価も1万2000円台から2万円台に上昇した。
ただ、異次元緩和が「虚像」だった面も否めない。緩和開始時の長期金利は0.6%前後で、現在の日銀の許容上限である0.5%と大きくは変わらない。国内銀行が融資する際の約定平均金利(新規)は1%から0.7%に下がったが、長く緩和を続けてきた日本に金利の低下余地はほとんど残されていなかった。

実体経済への影響も鮮明とはいえない。22年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は546兆円で、異次元緩和前から5%伸びた。戦後2番目に長いアベノミクス景気が実現したが、年率では0%台という低成長から抜け出せなかった。
民間企業の設備投資が16%増えたが、家計の最終消費支出は2%減った。賃上げは広がらず、成長のエンジンである個人消費は低迷した。22年の実質賃金(指数、従業員5人以上の事業所)は13年から5%減少した。
共同声明はなぜ成長押し上げにつながらなかったのか。とりまとめを政府側で担当した松山健士元内閣府次官は「日銀は合意に沿って最大限努力してきた。成長力や格差など政府に課題が多く残っている」と語る・・・

・・・科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2022」によると、日本の研究開発費総額は17.6兆円。米国(71.7兆円)、中国(59.0兆円)に続く主要国中3位だ。しかし、00年からの研究開発費の伸び(実質額ベース)は中国の14.2倍、韓国の4.6倍、米国の80%増と比べ、日本は30%増と見劣りする。
経済の実力を示す潜在成長率は10年間で0.9%から0.3%まで下がった。1人当たりGDP(購買力平価ベース)は17年にイタリアに抜かれて主要7カ国(G7)の最下位に転落。18年に韓国に逆転された。低金利下で低収益企業が温存され「生産性を引き上げる経済の新陳代謝が起きなかった」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)・・・

学校の労働環境改善へ

2023年4月5日   岡本全勝

3月31日の日経新聞に「教職 魅力向上へ「2本柱」」が載っていました。
・・・教職の人気低迷を受け、学校の労働環境改善に向けた動きが活発になってきた。長時間労働の一因となっている事務作業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を急ぎ、給与制度は勤務状況に合うよう見直す議論が始まった。優秀な人材を確保するためには働き方と待遇の「2本柱」の改革が欠かせない。現場の人材不足は深刻で、取り組みのスピード感が求められる・・・

・・・日本の教員は事務作業に費やす時間が長い。18年の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、中学教員が1週間で事務作業にあてる時間は5.6時間で、参加した48カ国・地域で最も長く、平均(2.7時間)の2倍を上回る。
教員のストレスにもなっており、同調査で「事務的な業務が多すぎる」と答えた割合は小学教員61.9%、中学教員52.5%だった。文部科学省幹部は「民間企業と比べ業務のDXが遅れたのが響いている」とみる・・・

時代遅れの事例や改善された具体例が載っています。でも、このようなことは、かなり以前から指摘されていましたよね。
学校行政の閉鎖性、市町村長が責任を持っていない、文科省が現場の問題を拾わないなどが、動きの鈍い原因でしょう。大学の教育学部も、役に立っていないのでしょうか。

憲法解釈で銀行救済

2023年4月4日   岡本全勝

3月31日の日経新聞「真相深層」「クレディ・スイス救済で異例の憲法解釈」から。

・・・信用の揺らいだ銀行の救済は是か非か。米国のシリコンバレーバンクが破綻すると、1万キロメートル離れたクレディ・スイス・グループに信用不安が広がった。究極の選択を突きつけられた米欧の金融当局は相次いで「救済」カードを切った。リーマン・ショック後に強化したはずの金融規制の在り方が問われている。

「連邦憲法に基づく措置だ」。日本の内閣に相当するスイス連邦内閣は3月19日、声明を出した。UBSによるクレディ・スイス買収が発表されたこの日、スイス政府は緊急法令を制定。スイス国立銀行(中央銀行)が流動性を供給し、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)が経営統合をお膳立てした。
2.2兆円のAT1債を無価値にすることを命じたのもスイス政府。声明は今回の措置が国を挙げた救済劇であることを明確にした。

異例の介入を可能にしたのが、対外関係を定める憲法の184条と安全保障を規定する同185条だ。184条には「国の利益の保護のために必要とされる場合には、連邦内閣は、命令を制定し、及び決定を下すことができる」とある。185条は「急迫の重大なかく乱に対処するため」の命令を規定している。安全保障の条文を銀行救済に適用したことに、日本の金融庁も「研究に値する」(幹部)と驚く・・・

敵は後ろに

2023年4月3日   岡本全勝

韓国のユン・ソンニョル大統領が、日刊の懸案事項だった元徴用工問題について、韓国国内に反対論も強い中、英断を持って解決策を提示しました。そして、国内の反発に対して、「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べたとのことです。3月22日付け日経新聞「「日本すでに数十回謝罪」韓国大統領 反日の政治利用けん制」。

・・・韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は21日の閣議で、元徴用工問題などの歴史問題に対する自らの立場を表明した。「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べ、反日を政治利用しないよう呼びかけた。
16日の日韓首脳会談で日本から謝罪表明がなかったと国内で反発がある点を意識し「韓国社会には排他的民族主義と反日を叫びながら政治的利益を取ろうとする勢力が厳然と存在する」と言及した。
日本の謝罪表明の具体例として、1998年の日韓共同宣言と、日韓併合から100年にあわせ日本が表明した2010年の菅直人首相(当時)の談話に触れた。16日の会談で岸田政権が1998年の宣言を継承する立場を明確にしたと説明した・・・

組織間の交渉は、しばしば相手方ではなく、味方に敵がいます。ようやく妥協できる案にたどり着いたのに、「そんな甘い案では認められない」と、自分の方の代表を揺すぶるのです。そして長期的・全体的な視野でなく、勇ましい強硬論が民衆に受けます。組織の利益を考えるでなく、時には代表者を引きずり下ろして自分が代表者に取って代わろうとしていることもあるのです。

すると、交渉相手方も、その代表の立場を考える必要があります。強硬策を主張して相手の背後の「敵」を勢いづかせて交渉を破談にするのか、できる範囲でその代表を支援するのか。
3月29日の朝日新聞夕刊に、鈴木拓也記者が「関係改善へ 韓国大統領の決断、どう応える」を書いています。
・・・「解決策」を出せば解決ではない。韓国では日本の関わり方が不十分との声が強く、世論の理解を得たい尹政権は、寄付に日本企業が加わることを期待する。
だが、日本企業が寄付をする気配はない。岸田氏が首脳会談後の記者会見で、直接的に植民地支配への「反省」や「謝罪」に言及しなかったこともあわせ、韓国では日本側の呼応が不十分と見る向きが強い・・・
・・・次は岸田氏の訪韓の番だ。日本の「VIP」はどんな決断とメッセージを携えて来るか。尹政権内で期待と不安が交錯している・・・

男女の賃金差公表

2023年4月3日   岡本全勝

3月27日の朝日新聞生活欄「男女の賃金差公表、見えた会社の姿」から。

・・・男女の賃金格差の解消に向け、政府が企業に義務づけた格差の公表が徐々に始まっている。正社員の賃金格差は、男女の管理職の比率や勤続年数の違いの影響が大きいとされる。一方、賃金水準が低い非正規雇用の女性が多い企業は、全従業員でみた賃金格差が大きくなる傾向がある。

昨年7月以降に決算期を迎えた企業(従業員301人以上)から順次、男性の平均年収に対する女性の平均年収の割合を「全従業員」「正社員」「非正社員」それぞれについて公表することが義務づけられた。
イベントの企画などを手がけるグッドウェーブ(東京都渋谷区)では、正社員(183人中61人が女性)の年収は女性が男性の97%とほぼ同じだった。
その一因が、女性の管理職比率が28%(40人中11人)と比較的高いことだ。厚生労働省が2021年度に調査した企業の平均(12%)の2倍以上になる。
背景には、管理職を選挙制にしていることがある。管理職が昇進して空きができたときなどに、希望者が後任に立候補。管理職になったらどんなことをしたいかなどの「公約」を掲げ、部門の全社員が投票して決める。女性社員の一人は「自分たちで選んだ結果なので納得性が高い」と話す。
一方、非正社員(25人中12人が女性)の年収は、女性が男性の167%にのぼる。仕事内容は正社員と大きくは変わらず、「例えば子育てを優先して時給制の非正規を選ぶことができる。たまたま女性の非正規の方が長く働いていた」(同社)。
その結果、全従業員の年収でみると、女性が107%と男性を上回った・・・

・・・一方、低賃金の非正規で働く女性が多い企業は、「全従業員」で見たときの賃金格差が大きくなる。
のりやふりかけなどを作る大森屋(大阪市)の女性の賃金比率は、正社員では68%、非正社員では105%。だが、全従業員でみると26%と低くなる。
正社員は男性が多いが、工場や物流センターでパートとして働く非正規はほとんどが女性だからだ。「非正規の女性と、正社員の男性の賃金を比べるような構図になっている」(総務部)。
おもちゃ卸のハピネット(東京台東区)も、全従業員における女性の賃金比率が40%と低い。正社員では約7割を男性が占める一方、物流倉庫などで働く非正規では女性が7割以上を占めることが要因だ・・・

次のような解説もあります。
「厚労省の22年の調査で、フルタイム労働者の所定内給与(月額)をみると、女性は男性の75.7%だった。格差は20年前に比べると9.2ポイント縮小した。正社員や管理職に占める女性の割合が少しずつ増えてきたことなどが影響している。
それでも海外に比べると格差は大きい。経済協力開発機構(OECD)の調査では、働き手を男女それぞれ賃金順に並べたときの真ん中の人(中央値)で比べると、日本の女性の賃金水準は男性の77.9%。主要先進国(G7)ではイタリアが91.3%と最も高く、ほか5カ国も80%台で、日本が最も低い」