カテゴリーアーカイブ:行政

忖度の実例

2023年4月18日   岡本全勝

霞が関での忖度の実例が載っていました。朝日新聞4月4日~6日連載「けいざい+ 幻の「戦後最長」景気」です。詳しくは本文を読んでいただくとして、その一部を転載します。

・・・昨年8月、景気をはかる政府の新たな指数がひっそりと加わった。実に38年ぶりだという。この動きに、専門家は「そもそも景気判断を政府がすべきなのか」という根源的な問いを投げかける。背景に何があったのだろうか。
きっかけは、2019年1月末にさかのぼる。
この日、首相官邸で月例経済報告の関係閣僚会議が開かれ、国内経済の基調判断は「緩やかに回復している」と据え置かれた。その後の記者会見で、当時の経済再生相・茂木敏充はこう宣言した。
「我々の政権復帰から始まった景気回復は、戦後最長になったとみられる」
第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」による景気拡大の長さが6年2カ月となり、リーマン・ショックがあった08年まで6年1カ月続いた「いざなみ景気」を抜いた可能性が高い、というのだ・・・
・・・高らかにうたった「戦後最長」宣言の陰で、経済統計を担う内閣府の官庁エコノミストの間には、ある不安がよぎっていた。一部の経済指標が弱く、本当に「戦後最長」になるのかというものだ。
疑念はやがて的中することになる。
景気拡大の期間を実際に決めるのは、直近の景気動向を判断する月例経済報告ではなく、「景気動向指数」がもとになる。景気は時間がたたないと正確な判断ができず、これだと正式な認定に1~2年かかる・・・4日付け「官庁エコノミストの不安的中

・・・そんななか、景気の認定に必要な経済統計がそろったのは、西村への報告から数カ月経った20年の春ごろだった。アベノミクスによる景気拡大が「いざなみ景気」超えには3カ月足りず、18年10月で終わっていたことが明らかになった。
崩れた「戦後最長」――。
ここから官庁エコノミストたちは右往左往する。「戦後最長でなくなっていいのかと、ある意味で忖度した」(別の幹部)結果、浮かんだのはこんな意見だった。
景気後退を認定する前に、景気動向指数のあり方を議論できないか。
幹部は、その意図を次のように解説する。「経済再生相が関わる月例経済報告は、政治的な判断なので間違っていたとは言いにくい。景気動向指数の指標の選び方がおかしい、と言う方が簡単だ」・・・

・・・アベノミクスの生みの親で、官邸の1強体制を築いた当時の首相、安倍晋三はどう受け止めたのか。
関係者によると、安倍に戦後最長にならなかったことを報告した際、「首相は、分かった、それは仕方ないね、とさらっと受け止められていた」という。この年は新型コロナの感染拡大が猛威を振るっていた。
大事にならず、内閣府の幹部たちは胸をなで下ろした。その一人は当時の心境をこう明かす。
「戦後最長にならないことをみな気にしていた」・・・ 5日付け「政治へ忖度「指標あり方議論も」

孤独、引きこもりの調査結果

2023年4月17日   岡本全勝

孤立などに関する調査結果が、報道されていました。

一つは、孤独・孤立の実態調査結果で、孤独感がある人は約40%に上るというものです。4月1日の日経新聞「孤独感「ある」40%に増加 政府22年実態調査」。
・・・孤独感の有無を尋ねた回答の内訳は、「常にある」が4.9%、「時々」が15.8%、「たまに」が19.6%。「決してない」は18.4%だった。年代別にみると、30代と20代では「常にある」が7%超で、他の年代より多かった・・・
これは、内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)」です。

もう一つは、引きこもりの推計が146万人に上るというものです。日経新聞4月1日夕刊「ひきこもり推計146万人」。
・・・15〜39歳でひきこもり状態だったのは144人。男性が女性より多く、8割が未婚だった。40〜64歳では86人だった。内閣府はこれらのデータを基に15〜64歳のひきこもり状態の人を146万人と推計した・・・
これは「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)令和5年3月 内閣府」です。

『中央公論』5月号「官僚の没落」

2023年4月16日   岡本全勝

月刊『中央公論』5月号が、「官僚の没落 エリートはどこへ消えた」を特集しています。
・牧原出教授の「安倍元首相退陣後も漂い続ける「首相の意向」 官邸官僚が生み出した「無責任体制」」
・嶋田博子教授の「米英独仏との比較から浮かび上がるもの 家臣型・無定量・人事一任の日本型は持続可能か」
・「データで見るエリート学生の進路事情」
など、現在の官僚の置かれた位置が、簡潔に説明されています。

大石学教授と北村亘教授の対談「江戸の役人、令和の官吏」も興味深いです。吉宗時代の統治機構改革によって、江戸幕府の能力主義的な人事管理と公文書管理ができあがったのだそうです。

8割の国が複数国籍を容認

2023年4月15日   岡本全勝

4月6日の日経新聞1面連載「人口と世界 逆転の発想4」は「複数国籍、8割近くが容認 高度人材獲得の選択肢」でした。

・・・移民が人口の1割超を占めるドイツで、国籍法改正が議論されている。欧州連合(EU)圏出身者らに限っていた複数国籍を、非EU圏出身者にも認める内容だ。連立与党で広報担当を務める「緑の党」のラムヤ・カドア連邦議会議員は「多くの人がハイブリッド(複合的)なアイデンティティーをもっている。祖国は一つしかないという考え方は完全に時代遅れだ」と説明する。
2022年の出生率が0.78と世界最低水準だった韓国も11年に国籍法を改正し、複数国籍を認めない「国籍唯一の原則」から転換した・・・

図が載っています。
複数国籍を完全に容認するのは、アメリカ、イギリス、フランスなど約90か国。
国内の外国人にのみ容認するのがマレーシアやタイなど約20か国。
国外の自国民にのみ容認するのがベトナムやイスラエルなど約30か国。
認めないが日本や中国、インドなど約40か国です。

アメリカ大統領の起訴

2023年4月14日   岡本全勝

4月6日の朝日新聞「異例の前大統領立件、背景は」から。

・・・米大統領経験者として初めて起訴されたトランプ前大統領は、34件の「重罪」に問われた内容を全面的に否認した。検察官が立件に踏み切った背景には何があるのか。かつてクリントン元大統領の捜査に携わった米ジョージ・ワシントン大のポール・ローゼンツワイグ非常勤講師に、政治捜査の舞台裏を聞いた・・・

――米国では大統領経験者への起訴はありませんでした。なぜでしょうか。
最も明白な理由は、過去の大統領のほとんどが、起訴されるようなことをしていないためです。もう一つの理由は、間違ったことをした大統領たちは、交換条件に合意したことでしょう。暗黙の了解として、刑事責任を問われない代わりに、政界や公職からの引退に合意してきたのです。
ニクソン大統領はウォーターゲート事件で辞任し、特別恩赦を受けました。クリントン大統領も起訴されませんでしたが、(大統領退任後は)妻ヒラリー氏が出馬するまで、政界から遠ざかりました。
トランプ氏はどうか。表舞台から礼儀正しく退いたわけではない。それどころか、大統領に再び復帰しようとしています。

――かつてクリントン氏の捜査を担当しましたね。
クリントン氏が不倫をめぐってウソをついたとして、捜査を要請されたのです。結局、彼は刑事訴追されないための取引の一部として、大統領任期の最後の日に非を認めました。弁護士資格を返上し、民事上の罰金を支払うことに同意したのです。検察官は十分だと判断し、クリントン氏に訴追しないと告げました。

――米国では現職の大統領は起訴されない決まりがありますね。
司法省は、現職大統領を起訴しないと明言している。これは、司法省の法律顧問室の公式な意見として記されています。

――では、元大統領についてはどうでしょうか。
起訴しないという規定はありません。むしろ、退任後は起訴される可能性があるという点こそが大事です。たとえ大統領在任中の行為であっても、退任後には刑法の適用を受ける。だからこそ、現職大統領のうちだけは免責することが許されるのです。