カテゴリーアーカイブ:行政

「公文書を守れ」

2023年7月13日   岡本全勝

月刊誌『文藝春秋』8月号に、「公文書を守れ 高市捏造発言、森友事件を叱る」という座談会が載っています。福田康夫・元首相、上川陽子・元公文書担当大臣、老川祥一・読売新聞会長、鎌田薫・国立公文書館長(前早稲田大学総長)、加藤丈夫・前国立国会図書館長(元富士電機会長)による座談会です。

福田総理が法案作成の決断をした理由、担当大臣に上川大臣を任命した理由などを話されているのも興味を引きますが、本年春の元総務大臣の「捏造」発言や重要裁判記録の廃棄問題、森友学園に関わる文書改ざんなどの近年の問題から、原爆開発や金大中事件、トランプ問題まで、実に幅広く文書に関する話題が取り上げられていて、充実した内容です。
そして、公文書は、国家がいまこうなっていることを説明するための資料だということ、これを作成・管理するのは公務員ですが、それを勝手に改ざんしたり捨てたりすることは言語道断であるとお叱りがあります。
詳細は原文をお読みいただかなければいけませんが、まずはこんな肩書や経歴の人たちが公文書についてこんなに心配していることに、驚きです。確かに国家や社会の仕組みを知り尽くした人たちの視点からみると、公文書の重要性がよく理解されるものなのでしょう。

二点、気のついたことを書きます。
一つは、アーキビストという専門職についての期待です。「自分たちの文書は自分たちが責任を持つ」というのが日本の官僚の基本的な姿勢でしょう。外部の専門家をうまく業務の中に取り込んでいけるのか、現状の風土では難しいと思います。とはいえ、公文書の改ざんや廃棄という問題が続くと、「公務員たち自身に任せておけない」との意見が強くなるでしょう。

もう一つは、これだけのメンバーがいながら、官僚出身者が一人もいません。この分野での役人の発言権が無いこと、発言しようとする者もいないことが、さびしいかぎりです。この対談の中に、実務の面から見た提案や将来像が入っていれば、充実していたと思います。関連した公文書管理の経験者などの発言を期待します。
情報公開法の制定や内閣法の改正、公文書管理法などによって、役人の仕事ぶりがどう変わったか変えられなかったなど実務者としての正直な経験を話したり、あるいは国民との共有の仕方についての提案をしてほしいのです。本来、文書を作り保管している役人こそが、発言と提案をしていくべき分野です。そういう提案ができるような雰囲気を少しづつでも作っていきたいと、わたし自身の問題として思いました。
なお、これに関連したことを、コメントライナー「行政文書は正確か」に書きました。

性的多様性法、委員会審議2時間

2023年7月12日   岡本全勝

6月21日の朝日新聞夕刊「取材考記」、松山紫乃記者の「法案審議 熟議せず成立、国会の役割とは」から。

・・・通常国会の最終盤を迎えるなか、マイノリティーの人権、尊厳の擁護を目的とする法整備の動きも進んでいた。性的少数者に対する理解を広めるための「LGBT理解増進法」だ。各党の主張が異なり、与党案のほか立憲民主・共産・社民党案、日本維新の会・国民民主党案の3案があった。

国会を取材するなかで、自民党中堅議員の言葉が印象的だった。「野党の意見にも向き合い、修正協議にも応じる。国会は政局ではなく、充実した審議をもっと行うべきだ」。実際、難民認定の申請中でも外国人の送還を可能にする入管難民法の改正をめぐり、与野党の実務者が修正合意を模索した。最終的にまとまらなかったが、そのプロセスからは真摯に法案審議に臨んでいるように見えた。

LGBT法は違った。各党とも自分たちの支持者を意識した言動ばかりが目立ち、法案審議は先延ばしし続けた。修正協議の指示が首相から出たのは、衆院内閣委員会の審議入り前日の8日。維新などの案を与党が丸のみする形で協議を終えた。内閣委の審議は、わずか約2時間。その日のうちに採決され、1週間後の16日には成立した・・・

正式名称は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律

外国人労働者の受け入れ

2023年7月9日   岡本全勝

6月17日の読売新聞が「特定技能2号 9分野追加 人手不足 外国人材で打開」を解説していました。

・・・政府は9日、外国人労働者の在留資格「特定技能2号」の対象を現在の2分野から11分野に広げる方針を閣議決定した。人口減少と少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しており、経済界の要望を聞き入れた。外国人労働者の安定的な受け入れには課題も多い。
特定技能制度は国内の深刻な労働力不足に対応するため、2019年4月に導入された。一定の技能が必要な特定技能1号と、熟練技能が求められる特定技能2号がある。今年3月末時点で1号の在留者は15万4864人。2号の在留者は11人しかいない・・・
・・・特定技能1号取得には原則、日常会話程度の日本語能力の試験と、就業分野の知識・技能に関する試験の両方に合格する必要がある。さらに、就業分野に関する難易度の高い試験を突破して2号に移行すれば永住への道が開ける。
1号の対象分野は12分野。このうち2号の対象分野でもあるのは「建設」「造船・舶用工業」の二つだけだったが、「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」など9分野も追加されることになった。1号の「介護」は、長期就労可能な別の在留資格があるため加えなかった。
政府が2号の対象を拡大するのは、制度導入後も続く国内の各業界での労働力不足を踏まえたものだ・・・

・・・来年春以降、1号の労働者らが順次在留期限を迎えるため、経済界などから「熟練技術を持つ人材に引き続き現場を支えてもらいたい」といった要望が相次いだことも政府の判断を後押しした。
2号の対象拡大を巡っては、自民党の保守派などからの反発が予想された。制度を導入する際の議論では、「事実上の移民政策だ」といった声が相次いだためだ。
ところが自民が5月に開いた外国人労働者等特別委員会などの合同会議は、波乱もなく政府案を了承。出席者から2号の対象分野拡大に異論は出なかったという。同委員会で事務局長を務める笹川博義衆院議員は「皆が、人材が不足しているという危機感を持っていた」と振り返った。
2号の対象拡大について、経団連の十倉雅和会長は5日の記者会見で、「日本の生産年齢人口は減少傾向にある中、外国人労働者、特定技能を持った方は非常に重要で、歓迎すべきだ」と語った・・・

政府は「移民政策はとらない」と説明してきたようですが、事実上そして徐々に政策は転換しています。これも、日本型の政治過程と言えるでしょう。

自治体のツボ、分権30年の評価

2023年7月2日   岡本全勝

先日紹介した「自治体のツボ」が、分権決議から30年を機に、振り返って評価をしています。
分権決議30年を考える①意識」から始まって、財界人、知事、合併、国地方と、なかなか思いつかない、多角的な分析です。これは、この30年間、分権を追いかけていないと書けない内容です。参考になります。

少子化対策の財源

2023年7月1日   岡本全勝

6月16日の朝日新聞、西沢和彦・日本総研主席研究員の「少子化対策、実態はばらまき」「財源、消費税中心に見直しを」から。

政府が13日閣議決定した「異次元の少子化対策」では、児童手当の拡充など幅広い支援策が並んだ一方、財源の詳細は年末に持ち越した。この分野に詳しい日本総研の西沢和彦・主席研究員に、財源のあるべき姿や、給付と負担からみる持続可能な社会保障について聞いた。
――政府が示した少子化対策をどうみますか。
「少子化対策の名を借りたばらまき政策で、出生率の上昇にはつながらないだろう。例えば、児童手当の拡充策はすでに生まれている子どもに対する政策で、出生率を上げるためには無意味だ。婚姻率を高め、子どもを産みたくなる環境づくりがより重要になる。財源もあいまいで、持続可能性がある制度なのか、疑問がある」

――社会保険料への上乗せが想定される「支援金制度」が検討されています。
「そもそも、社会保険は個人が病気や要介護などのリスクに備えるもので、少子化対策に使うには無理がある。そのうえ、社会保険は高齢者に比べて現役世代の負担が大きく、高齢者や高所得者を優遇することにつながる。例えば、厚生年金保険の場合、徴収対象は賃金に限定され、年金や資産所得は対象外。正義に反するやり方といえる」
「企業は負担が増え、賃上げの流れに水を差される。負担増を嫌って非正規雇用に切り替える動きがでれば、生活が不安定になって逆に少子化を促してしまうだろう。子育て世代にフレンドリーな政策ではない」

――なぜ、社会保険の給付抑制や負担増を打ち出せないのでしょうか。
「政治は、人口割合の大きな高齢者や業界団体の反発をおそれて、給付の抑制や診療報酬の引き下げなどを打ち出せない。社会保障の高齢者への給付が7割に迫るなか、給付の抑制を訴えることは、政治が道筋をつけるべき仕事だ」

――少子化対策の財源をどこに求めるべきですか。
「消費税を中心とした、税体系の見直しでまかなうべきだ。消費税は逆進性が目立つが、所得税の控除を組み合わせるなどして、低所得者の負担感を和らげることができる。税だと、高所得者や金融資産にも課税が可能で、社会保険料よりも公平な制度にできる」

――少子化対策はどうあるべきですか。
「税を中心とした支援にしたうえで、例えば、児童手当の拡充は、低所得者の貧困層対策に限定すれば、使い道の納得感が高まるのではないか。財政が厳しいなかでお金を効果的に使うために、誰に向けた政策なのかを明確にする必要がある。政策に効果があるのかどうかをきちんと検証する仕組みも重要だ」