カテゴリーアーカイブ:行政

自民党の派閥、その機能

2024年3月26日   岡本全勝

3月9日の朝日新聞オピニオン欄「派閥という存在」、野中尚人・学習院大学教授の「政権まわす非公式の舞台」から。

・・・自民党でなぜ派閥が続いてきたのか。国会論戦をはじめ、ほぼあらゆる表舞台を避け、派閥を通じて政治を動かしてきたからです。自民党政治はインフォーマルな裏政治なのです。
その特徴は、意思決定のプロセスを隠そうとすることです。国会で質問されてもまともに答えない。政府内の議論も文書を残さず、文書があっても消してしまう。国会や閣議のような公式の場で議論をかわして記録を残すといった、説明責任の姿が見当たりません。

それでも政権をまわすために、もう一つの舞台が必要になります。それが派閥です。カネを配り、ポストを配分し、事前に調整して物事を決め、国会対策までやっている。まさに自民党政治の背骨であり、裏政治を支えています。本当に派閥がなくなれば、自民党は大混乱に陥るでしょう。
岸田文雄首相は、岸田派を解散すると表明しましたが、自分の言ったことが政治に何をもたらすか、意味がわかっていないのではないでしょうか。ただ、表面を取り繕っているだけのように見えます。
自民党リーダーの劣化も、派閥と無縁ではありません。有能さを厳しくチェックされることもなく、有力者に気に入られれば重要ポストを得てしまう。派閥の仕組みはわかっていて永田町ではうまく立ち回るけれど、まったく日本のためになっていない・・・

「政治家よ、言葉で人動かせ」

2024年3月22日   岡本全勝

3月1日の朝日新聞オピニオン欄、増田達夫・開志専門職大学教授の「若者と国の未来のために 政治家よ、言葉で人動かせ」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・歴史をたどっても世界を見渡してみても、国の力の源泉は人にあり、天然資源の乏しい国はなおさらである。若者は良くも悪くも、上の世代を見て育つ。人の力は、おのずと世代から世代へと引き継がれていく。
日本の国力は落ち続けており、国の指導者たちには、このような事態の悪化を何としてでも食い止めようとする覚悟が求められる。そして、民主主義の原点に立ち、言葉の力で人を動かすことに徹しなければならない。しかし今、日本の政治家を見ると、「言葉で人を動かす」どころか、間違いを恐れるあまり原稿にしがみつく始末である。生きた言葉の魅力の前には、言い間違いなどささいなことなのに。国会の白眉といえる党首討論でさえ実に退屈な上、岸田政権では実施すらしていない。

私は、外務省と経済産業省の官僚だった時期、政治家との接点を数多く持つことができた。1970~80年代ごろまでは、自ら地位を勝ち取った一世議員も多く、大義に殉じる気概と迫力にあふれていた。パリの国際エネルギー機関に勤めていた時代や世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)参加の折にも、外国の有力政治家の立ち振る舞いを間近に見た。原稿なしで臨機応変に議論を繰り広げ、言葉の力で人を動かす姿に魅了されたものだった・・・

・・・言葉で人を動かす政治家が出てこないのは、育てるプロセスにも問題があるのだろう。この点、私が英ケンブリッジ大学在学中に経験したことは参考になるかもしれない。主要政党がわざわざキャンパスに来て、将来の候補となるべき人材を発掘する努力を粘り強く進めていた。私も保守党を支持するグループに入り、党が派遣する討論のプロの指導を受けた。仲間のうち何人かはその後、政治家の道を歩むこととなった・・・

内閣支持の理由

2024年3月19日   岡本全勝

報道機関が、毎月、内閣支持率などの世論調査をします。例えばNHK。その際に継続的に調べられるのが、内閣支持率と各党の支持率です。

支持率の上下は気になるのですが、それとともに気になるのが、支持する理由と支持しない理由です。
NHKの3月の調査結果では、岸田内閣を「支持する」と答えた人は25%、「支持しない」と答えた人は57%です。そして支持する理由は、「他の内閣より良さそうだから」が47%、「支持する政党の内閣だから」が25%、「人柄が信頼できるから」が13%です。「実行力があるから」は6%、「政策に期待が持てるから」は5%しかありません。

政党や内閣は、政策を競い国民の支持を獲得するものと、政治学では習いましたが。この数字は、政策が置き去りになっているようです。

「優秀だけど、短期集中突破で持続性がない」

2024年3月19日   岡本全勝

2月29日の朝日新聞「けいざい+」「TSMC誘致の真相:下 前例のない補助額、財務省が条件」は、一企業に多額の補助金を出す事案の解説ですが、記事に次のような話が出てきます。

・・・財務省主計局は、近年の経産省の手法を苦々しく思っていた。「彼らは国土交通省や農林水産省と違って、私たちとまじめに予算の議論をしないんです。官邸など上にあげて、『もう決まったから予算を出せ』とおろしてくる。まるでATMの扱いですよ」。財務省を疎んじ経産省を重用した第2次安倍政権以降、そうした傾向が強まった。

経産相を務めた萩生田光一は「着任当初は素人だったが、のめりこむように半導体を勉強した」と振り返る。TSMCの予算確保に財務省ににらみをきかせる半面、経産省の体質にも問題があると気づいた。この30年余、経産省の半導体政策は前のめりになったかと思えば後ずさりし、振幅が著しい。萩生田は国会で「世界の潮流を見極めきれず、適切な政策を講じられなかった」と同省の失敗をわびた。
「経産官僚は優秀だけど、短期集中突破で持続性がないんです」。まるで高校の文化祭の実行委員のようだと感じた。「短時間でワーッとやるけど文化祭が終わったら、あとは関係ナシなんです」。経産官僚は「弾を込める」「仕掛ける」という言葉をよく使う。前任者の仕事を引き継ぐよりも、新しい政策を打ち出したがる。

萩生田は「異動後も自分が手がけた仕事がどうなったか定年までウォッチしてほしい」と苦言を呈する。TSMC誘致は珍しく4代の局長、3代の課長がバトンを受け継ぎ、彼らの言葉を使うと「仕留めた」案件だった・・・

私が若いとき、ある人が、通産省(当時)の官僚たちの仕事ぶりを「は虫類行政」と呼んでいました。「卵(新規施策)を産むが、育てない」という意味です。
新しい施策を考える気風は、評価されるべきです。しかし、1~2年で異動することが多いと、その施策を実施するのは後任者になります。そして、新規施策を考えることが評価の基準になると、前任者の施策を実施するより、自分で新しい施策を考えることになります。

稲継裕昭先生「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」

2024年3月18日   岡本全勝

稲継裕昭・早稲田大学政治経済学術院教授が、2月26日に日本記者クラブで「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」を話されました。ユーチューブで見ることができます。関係者は必見です。

公務員志望者の減少、若手退職者の増加、心の病の職員の増加・・・。自治体現場の変化を、数値と経験とで説明してくださいます。

この20年間の変化が急速なようです。若者が自治体を選ばなくなっています。若者の意識の変化と労働市場の拡大が、変化をもたらしています。国家公務員法と地方公務員法の縛り、給与体系、年功序列の昇進慣行が、時代に合わなくなっています。

私は、労働慣行が日本の「この国のかたち」をつくっている、労働慣行に「この国のかたち」が集約されていると説明しています。日本社会の変化が、ここに押し寄せています。