カテゴリーアーカイブ:行政

地方創生10年

2024年8月2日   岡本全勝

7月18日の朝日新聞に「地方創生、夢の跡 提唱10年、東京一極集中変えられず 交付金、計1.3兆円」が載っていました。

・・・第2次安倍政権が「地方創生」を打ち出してから10年。東京一極集中に歯止めをかけ、人口減少を食い止めようと、これまで約1・3兆円を自治体に配ったが、政府は6月の報告書で「大きな流れを変えるには至っていない」と結論づけた。今後の戦略も描けておらず、「地方創生」の旗印は行き場を失っている。

地方創生は、第2次安倍政権が2014年に新たな成長戦略の目玉として掲げた。異次元の金融緩和で大幅な株高が実現し、富裕層を中心に恩恵が広がっていた時期だ。翌年春に控えていた統一地方選をにらみ、「アベノミクス」の果実を地方に波及させる姿勢を打ち出す狙いがあった。
政府は、地方創生の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」を設置。雇用創出や移住などを基本目標にする「総合戦略」を14年12月に閣議決定し、自治体にも数値目標を盛り込んだ地方版の総合戦略をつくるよう求めた。それに応じて新たに創設した「地方創生推進交付金」を配った。

ただ、成果は乏しい。例えば、東京一極集中の是正をめぐり、政府は生活コストの高い東京への人口集中は少子化につながるとみて、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県)から地方への転出増を重要目標の一つに掲げた。しかし、政府がまとめた報告書によると、23年の東京圏への転入数は転出数を11・5万人上回り、14年時点の10・9万人より増えた。報告書は「国全体でみたときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っていない」と認める。当時より人口が増えている自治体についても「多くは移住者の増加による『社会増』にとどまっており、地域間での『人口の奪い合い』になっている」と指摘した・・・

『水害救援法務ハンドブック』

2024年7月29日   岡本全勝

中村健人・岡本正著『自治体職員のための 水害救援法務ハンドブック-防災・減災の備えから初動・応急、復旧・復興までの実務-』(2024年、第一法規)を紹介します。
宣伝文には、次のように書かれています。
「水害に対する事前の備え、初動・応急、復旧・復興という各段階で、水害対策に関する実務上の法務のポイントを提供することで、自治体職員がやるべきことが時系列でわかり、迅速・的確な判断と対応ができる」

毎年、列島の各地で大きな水害が起きています。各自治体職員にとって、人ごとではなくなりました。
同じ著者による『改訂版 自治体職員のための 災害救援法務ハンドブック―備え、初動、応急から復旧、復興まで―』の姉妹編です。

若者の経済不安、見つめなかった対策

2024年7月29日   岡本全勝

7月18日の朝日新聞「少子化を考える 山田昌弘・中央大教授に聞く」「若者の経済不安、見つめなかった対策」から。

日本の少子化が止まらない。1990年、前年の出生率が過去最低の「1・57ショック」が社会を揺るがし、少子化問題が大きくクローズアップされた。しかし、30年以上経ったいま、状況は悪化している。対策のどこがまずかったのか。中央大の山田昌弘教授(家族社会学)に話を聞いた。

――6月に発表された人口動態統計で、2023年に生まれた日本人は過去最少、「合計特殊出生率」も1・20と過去最低だったことが分かりました。少子化の要因は何だと思いますか。

少子化の要因が「未婚化」ということは、私を含む多くの学者が何十年も前から唱えていることです。ただ、いまの若者も結婚への意欲が衰えているとは思いません。未婚化には結婚の経済的側面が影響していると考えます。

――将来にわたってリスクを回避できる見通しがないと、結婚や出産を控える若者が多いのですね。

30~40年前の若者たちの場合、「日本経済はこの先も大丈夫」「子どもを豊かな環境で育てられる」と信じることができた。人並み以上の生活が送れるということを疑わなかったから結婚に踏み切ることができたのです。
ところが、1990年代初頭にバブルが崩壊。日本経済は停滞し、非正規社員が増えるなど若者の間で格差が広がりました。中流生活から転落するという不安が強まり、「親のような豊かな生活は築けない」「子どもに惨めな思いをさせたくない」と考える若者が増え、結婚や出産を控えるようになったとみています。

――人口減少が深刻な地方では、若い女性が進学・就職時に都会に出てしまうことも少子化の要因の一つと指摘されています。

ここ10年ほどの大きな変化として、地方から東京に出てくる若者は男性より女性の方が多くなりました。働き方や地域社会の因習を女性を差別しないかたちで変えていかない限り、若い女性は地元に残らず都会に出て行き、地元で生まれる子どもも増えません。

――少子化問題は30年以上も前に認識されながら、なぜ有効な対策を打てなかったのでしょうか。

非正規雇用者の増大という現実を見ずに、結局、政府の少子化対策が「大卒、大都市居住、大企業勤務」の若者を想定したものだったからです。私は東京23区では対策は有効だったと評価しています。東京23区では2006年ごろから子どもの数が上昇に転じ、約10年間は増え続けた。夫婦2人が正社員で共働きしながら子どもを育てるというモデルが定着しつつあったのだと考えます。
一方、他の地域では失敗しました。日本の若者のうち、かなりの部分を占めている自営業、フリーランス、非正規雇用や中小企業に勤める若者たちの実態を踏まえた対策ではなかったからです。

官僚の活躍

2024年7月28日   岡本全勝

7月26日の朝日新聞「けいざい+ 発着枠争奪戦:4」は「コロナ禍の余波、中立悩んだ官僚」でした。
・・・羽田空港の発着枠の配分を決める検討委員会。これを取り仕切る国土交通省航空局の航空事業課は、省内のエースが集う部署だ。検討委が続いていた6月時点で課員は22人。平時から航空各社とのやり取りをしている。
重田裕彦航空事業課長(現物流・自動車局旅客課長)は発着枠の議論について、「全社の意見は採用できないため、中立の立場で論理的に対外的な説明ができるかどうかを重要視した」と話す。

羽田の発着枠を決める舞台は、航空事業課での勤務経験者によると、「かなり気を使う」。この期間中は、特定の社に肩入れしていると見られないよう、ネクタイの色まで気にする官僚もいるという。
同課には日頃から航空各社が出入りしており、付き合いも深い。
「どの社にもそれなりに納得してもらわないといけない。一方の不満が残りすぎて永田町に駆け込まれたら役人人生も終わり」(国交省関係者)というシビアな世界だ・・・

重田課長は、復興庁発足当初に、組織人事担当として苦労をかけました。平岡・航空局長とは省庁改革本部で一緒でした。

地方選挙、候補者知る経路の多様化を

2024年7月27日   岡本全勝

7月25日の朝日新聞オピニオン欄に、砂原庸介・神戸大教授の「候補者知る経路 多様化を」が載っていました。

・・・7月上旬に投開票された東京都知事選挙では、想定以上の立候補やそれに伴う選挙ポスター掲示場の枠不足、そして貼られたポスターやNHKの政見放送での人々の関心を集めようとする過激さが物議を醸した。現職候補が公務を優先するとして、都民への露出が「控えめ」であったこともあり、期待された政策論争よりも、場外乱闘のようなやり取りが目立つ選挙であった。
そこでなされる「政策論争がない」という批判はもはや定番だが、候補者も有権者も、政策に関心がないというわけではない。今回の都知事選に限らず、たとえ注目されていない候補者でも何らかの政策に対する熱い思いを持っていることがほとんどだ。候補者たちのことをよく知れば、その中に自分の考え方を一番代弁してくれる政治家がいるかもしれない。そして、そう考えて選挙公報を読むことに挑戦する有権者も少なくないだろう。
そんな有権者にとって、候補者を選ぶ重要な手がかりの一つは、候補者の所属する政党についての情報だ。政党間で競争が行われる傾向がある国政に対して、地方自治体の選挙では無所属候補が多く、さらに同じ政党に所属する候補者同士が競争することもあり、政党名を選択の手がかりとしにくい・・・

・・・選挙は、政治家を選ぶことで、政治の選択肢を絞り込むプロセスだ。そして、日本の選挙の特徴の一つは、極めて短い選挙運動期間で、投票を行う有権者が自ら情報を探して選択する傾向が強いところにある。しばしば批判されるが、マスメディアは選挙の公平性を理由に選挙期間中に個別の候補者を深掘りする報道を避けるし、候補者の側も短い期間で有権者に浸透するため、とにかく名前を連呼することが多い。その結果、特に地方自治体の選挙で、有権者が自分自身で候補者に関する情報をつかみ取って投票しなければならなくなる・・・
・・・しかし、そうであれば有権者が多様な情報にアクセスできるような経路が開かれるべきだ。選挙運動期間をもっと長くとることは必須だろうし、戸別訪問や集会などで候補者を具体的に知ることができる機会を設けるようなことも重要だ。都知事選でポスターや政見放送が広く注目されたのは、反対に言えば多くの人にとってそのくらいしか選択肢を絞る手がかりがなかったことを意味したのではないだろうか・・・