「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

政治の責任

23日の朝日新聞は「失速小泉改革・下」を載せていました。副題は「見えぬ理念ー人々の不安、首相隔たり」です。「改革のエネルギーが年々、弱くなっている。結局、どういう社会をめざすのかがはっきりしないからだ」「首相がこだわるのは各論。全体像やビジョンは関心がない。あるべき理念を共有しないから、お任せ改革になり、最後は数値目標に向けた役所同士のつじつま合わせに終わる」。
正しい指摘でしょう。これに合わせ、今の政治や行政機構、官僚組織も、そのような問題に取り組む仕組みになっていません。総理にも責任がありますが、日本の政治家と官僚にも、大きな責任があると思います。
例えば、そこにも示されているように、国民が悪くなっていると考えている「治安・雇用労働条件・教育・社会風潮」について、取り組む行政組織はありません。
「何かというと財政出動による景気刺激に走った経済無策の振り子を戻した面はある」。私は、これを小泉内閣の主要な功績だと数えています。もっとも、「小さな政府とは裏腹に、この4年間の国債の発行額は歴代内閣でトップ」との指摘もあります。いつもながら鋭い記事ですね、辻陽明記者。

政治の役割

同じく17日の朝日新聞に、連載「幸せ大国をめざして-未来を選ぶ」第3回目が載っていました。1億総中流と言われた日本で、所得格差が広がっているという記事です。フリーターやニートの増加に対し、日本の社会と政治が有効な手を打てていません。
13日の日本経済新聞「経済教室」は、玄田有史先生が、「ニート、学歴・収入と関連」を書いておられました。ニートは、親が子どもを甘やかせた結果だと批判されるが、そうではなく、経済的に余裕のある家庭より、経済的に苦しい家庭である傾向が強くなっているのだそうです。
家庭だけでは解決できず、もちろん学校や職業紹介所で解決できる問題でもありません(拙著p256「手法が難しい政策分野」)。私たちと政治は、何ができるのでしょうか。

社会保障

17日の朝日新聞は、「シリーズ社会保障-選択の時」で、医療・介護・年金の3保険について、世代間の収支(保険料と受け取るサービスの比較)を解説していました。
簡単に言うと、「高齢者は得、若者は損をする」です。理由は、記事にも指摘してありましたが、
①少子高齢化=今の仕組みは、現役世代が払う保険料で高齢者を支える仕組みなので、少子高齢化で若者からの「仕送り」が増える。
②支給額に見合った保険料を取っていないこと、の2つです。
今や、階級対立やイデオロギー対立がなくなった社会と言われます。私は、世代間対立は、今後の日本の社会対立・政治的亀裂の一つになると思っています。
「私の給料は孫が払っている」(拙著p115)は、国と地方の予算について述べた私の「名言」ですが、保険においても、今の日本人はひどいことをやってます。

社会を作る

16日に内閣府が、「裁判員制度に関する世論調査」を発表しました(17日朝刊各紙)。
裁判員制度は、一般市民が刑事裁判に参加して、裁判官と一緒に、被告人が有罪かどうかなどを決める制度です。
調査では、参加したくないが70%、参加したいが26%でした。また、参加したくないの理由は、有罪・無罪の判断が難しそうが47%、人を裁きたくないが46%のほか、裁判や事件にかかわりたくないが24%でした。
まだ国民に知られていない制度ですが、「面倒なことは関わりたくない」という意識が、明白に出ていますね。私が批判している「戦後日本のお任せ民主主義」(「新地方自治入門」p262など)の、一つの帰結です。社会は、みんながつくらないとできないのです。天や外国、あるいは官僚が与えてくれるモノではありません(拙著p309)。

自治体を経営する

11日の日本経済新聞1面連載「平成の開国」第4部3は、「国を飛び越える-架け橋、自治体から」を載せていました。三位一体改革で地方に権限が移ること、そして首長が「自治体を経営する」という発想に立てば、国の指示を待たずに地方から経済外交が進み、地域での外国人教育も変わるという実例と主張です。
拙著「新地方自治入門」第6章では、自治体が取り組むべき課題は、これまでのように国から降りてくるのではなく、地域から起こることを述べました。
ところで、そこでは、地域社会の機能を説明するために、スウェーデンの中学教科書を紹介しました(p175)。「あなた自身の社会」です。先日、皇太子様が詩を引用されたのは、この本です。
読売新聞1面の連載「家族第2部成熟社会のきずな」は、10日が第6回でした。そこでは、国民の意識が『ものの豊かさ』 から『心の豊かさ』に重心を移していることを述べています。これについては、拙著p158で述べてあります。