カテゴリーアーカイブ:行政

新しい仕事29

2006年12月13日   岡本全勝
13日の日経新聞経済教室・労働契約を考えるは、笹島芳雄教授でした。「ワーク・ライフ・バランスの実現が困難な最大の要因は、現在の日本的働き方にあり、典型的には長時間労働・恒常的残業という姿で表れている。厚生労働省で進められている労働時間法制の見直しにより、日本社会にワーク・アンド・バランスが根付く政策の実現を期待したい」。
そして、残業時間に対する賃金割増率の引き上げに関して、日本では算定の基礎賃金に賞与分を含んでいないこと、賞与の割合の大きい日本にあっては、割増率だけで諸外国と比較しては間違うことを指摘しておられます。
また、自律的労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)についても、アメリカでは83%の企業で職務記述書が用意されていて、個々の労働者の業務内容ははっきりしていること。それに対し、日本では職務記述書はなく、職務内容のあいまいさは弾力的な業務運営を可能とするが、全体として非効率・長時間労働の温床になっていること。チームワークでの業務が多く、自律的な働き方を困難にしていること。アメリカでは、担当職務の選択権をホワイトカラーが保持していて、転職もしやすいこと。それによって、不満な職員は転職によって、長時間労働をしなくて良くなることなども、指摘しておられます。
日本の雇用慣行や仕事の仕方が、長時間労働・家庭を顧みない父親・企業戦士を生んでいるのですよね。これを改革するのは、容易ではありません。もっとも、前にも書きましたが、他の国でできているのですから、日本にできないはずがありません。
上司であるあなたに、明日からでもできることは、なるべく部下に残業をさせないこと。また自分の仕事を片付けたらさっさと帰ることで、見本を見せることでしょう。残業時間を自慢する上司は、それだけで失格です。それは、仕事が忙しいのではなく、無能の証明です。一時的に忙しいのは仕方がないとしても、恒常的なら、仕事のやり方の変更を考えるべきです。しかも、それで国民に役立つことをしていればいいですが、国民生活向上にあまり役立たないことをしているとすると、税金泥棒という罪も重なります。

新しい仕事28

2006年12月7日   岡本全勝
5日の朝日新聞「分裂にっぽん-政府の役割」は規制改革を取り上げていました。最低賃金で働いても生活保護水準に満たないこと、欧米では最低賃金の改定が選挙の争点になることを紹介していました。また同紙生活面は、「漂う雇用、派遣法20年の現実」として、労働者派遣法施行20年の現場を取り上げていました。(12月5日)
7日の朝日新聞「漂う雇用、派遣法20年の現実」は、正社員化についてでした。

官僚の専門技能

2006年12月5日   岡本全勝
5日の朝日新聞「私の視点」は、山本清教授の「公務員制度、政治と離れ専門性向上を」でした。日本において、「政治家が政策決定をし、官僚が執行する」原則が守られず、政治(内閣・与党)と官僚が一体化した行政運営であること。そして、官僚の政治的交渉技能は高度化したのに、政策決定の基礎となる政策分析能力などの育成はなおざりになっていると、指摘しておられます。
そうなんです。日本の官僚は、政策課題の分析と対処方針の決定などについて、ある分野の政策の専門家になっていないのです。今、どれだけの官僚が、自分の技能を売ることができるでしょうか。現実は、ジェネラリストという美名ものと、1~2年で移動を繰り返し、専門性のない管理職になっています。それが証拠に、自らの経験と技能を元に転職する官僚って、ほとんどいません。スカウトされたという話も、あまり聞きません。国家公務員人材バンクがありますが、実績が出ていないようです。
もちろん、その多くが法学部出身であることも、その背景にあります。管理職のプロという人もいますが、それだけでは、売り物になりません。また、管理職といっても、部下の給料やボーナスを査定できない管理職って、管理職とは言えません。今の官僚が磨いているのは、上手な交渉能力かもしれません。
これが、政と官の関係から見た問題点、そしてそれが生んでいる問題点です。これに関しては、「新地方自治入門」p287~をご覧ください。また、公務員制度改革が長く議論されていますが、それらは、「早期退職・天下り」「一律昇進」「各省官僚制」といった問題に集約されます。人件費削減は、これら仕組みの問題とは別です。官僚論6をお読みください。どうも、公務員改革論議は、盛り上がる割には焦点が絞られず、議論が発散してしまいがちです。

新しい仕事27

2006年12月4日   岡本全勝

4日の朝日新聞「分裂にっぽん-政府の役割」は、「国際競争、働き手守れ。再チャレンジ支援、自助努力任せ」でした。日本の雇用政策にかける公費が先進国で最低レベルであること、就職支援策や職業訓練が先進国に比べおろそかになっていることを指摘しています。

新しい仕事26

2006年12月3日   岡本全勝
再チャレンジ支援策を考えていると、行政のあり方を考えることにつながります。ここでも何度か書きましたが、日本の行政は、任務と手法について、大きな曲がり角にあります。再チャレンジ支援策は、それが典型的に表れるのです。
これまで中央省庁は、いわゆる業界の振興を主な任務としてきました。産業の振興であり、公共サービスの拡大です。それらは、業界を通じて行われてきました。しかし今、再チャレンジ支援政策が対象としなければならないのは、人、国民一人一人です。ここに、行政の大きな転換の方向があります。任務=対象の転換です。金融行政や食の安全などを、このHPでは代表例として示しました。
また、従来の行政は、産業の振興や公共サービスの拡大であったので、「財政資金による整備や支援」と「法令による規制や保護」で達成することができました。今、再チャレンジ支援策が取り組まなければならないのは、従来の規制を改革することとともに、社会の仕組み、国民の意識の改革です。その際、規制の改革は、法制度の改革で達成できますが、社会の仕組みや国民の意識改革は、予算と法律では達成できないのです。この例としては、男女共同参画社会形成があります。
このように、再チャレンジ支援策は、行政の任務と手法において、これまで100年の行政と違った、新しい次元への挑戦でもあるのです。拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」の続編は、このようなことも、盛り込まなければなりませんね。