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行政

社会の変化と行政

住民基本台帳の閲覧制度を、見直すための検討が始まりました。麻生大臣の指示により、閲覧制度そのものを見直すことになりました(26日夕刊各紙、25日朝日新聞社説など)。
住民基本台帳ができた当時(昭和42年)は、みんなが見ることを前提としており、個人を確認するための制度でもありました。その後、他人に知られたくないという要請が高まり、順次、閲覧を制限してきました。しかし、ダイレクトメールに利用されることをいやがる人が増え、さらには、母子家庭や老人家庭を狙った犯罪に利用されるなど、悪用もされるようになりました。そこで、閲覧制度を根本から見直すことにしたのです。
個人情報保護法の施行といい、社会が変わってきているのが、目に見えます。見せるための制度だったのが、他人に知られたくない人が増えてきたのです。代表例は、電話番号簿と職員録だと思います。
かつては、電話を引くのがステイタスであり、電話帳にはみんなが自宅の番号を載せました。今は、多くの人が載せることを拒否します。職員録もそうです。県庁の総務部長だったときに、県立病院の看護婦さんが「住所や電話番号を載せてほしくない」とおっしゃって、「なるほど」と納得し、管理職等以外の職員の住所と電話番号の記載をやめました。時代は変わるものですね。

政治の責任

23日の朝日新聞は「失速小泉改革・下」を載せていました。副題は「見えぬ理念ー人々の不安、首相隔たり」です。「改革のエネルギーが年々、弱くなっている。結局、どういう社会をめざすのかがはっきりしないからだ」「首相がこだわるのは各論。全体像やビジョンは関心がない。あるべき理念を共有しないから、お任せ改革になり、最後は数値目標に向けた役所同士のつじつま合わせに終わる」。
正しい指摘でしょう。これに合わせ、今の政治や行政機構、官僚組織も、そのような問題に取り組む仕組みになっていません。総理にも責任がありますが、日本の政治家と官僚にも、大きな責任があると思います。
例えば、そこにも示されているように、国民が悪くなっていると考えている「治安・雇用労働条件・教育・社会風潮」について、取り組む行政組織はありません。
「何かというと財政出動による景気刺激に走った経済無策の振り子を戻した面はある」。私は、これを小泉内閣の主要な功績だと数えています。もっとも、「小さな政府とは裏腹に、この4年間の国債の発行額は歴代内閣でトップ」との指摘もあります。いつもながら鋭い記事ですね、辻陽明記者。

政治の役割

同じく17日の朝日新聞に、連載「幸せ大国をめざして-未来を選ぶ」第3回目が載っていました。1億総中流と言われた日本で、所得格差が広がっているという記事です。フリーターやニートの増加に対し、日本の社会と政治が有効な手を打てていません。
13日の日本経済新聞「経済教室」は、玄田有史先生が、「ニート、学歴・収入と関連」を書いておられました。ニートは、親が子どもを甘やかせた結果だと批判されるが、そうではなく、経済的に余裕のある家庭より、経済的に苦しい家庭である傾向が強くなっているのだそうです。
家庭だけでは解決できず、もちろん学校や職業紹介所で解決できる問題でもありません(拙著p256「手法が難しい政策分野」)。私たちと政治は、何ができるのでしょうか。

社会保障

17日の朝日新聞は、「シリーズ社会保障-選択の時」で、医療・介護・年金の3保険について、世代間の収支(保険料と受け取るサービスの比較)を解説していました。
簡単に言うと、「高齢者は得、若者は損をする」です。理由は、記事にも指摘してありましたが、
①少子高齢化=今の仕組みは、現役世代が払う保険料で高齢者を支える仕組みなので、少子高齢化で若者からの「仕送り」が増える。
②支給額に見合った保険料を取っていないこと、の2つです。
今や、階級対立やイデオロギー対立がなくなった社会と言われます。私は、世代間対立は、今後の日本の社会対立・政治的亀裂の一つになると思っています。
「私の給料は孫が払っている」(拙著p115)は、国と地方の予算について述べた私の「名言」ですが、保険においても、今の日本人はひどいことをやってます。

社会を作る

16日に内閣府が、「裁判員制度に関する世論調査」を発表しました(17日朝刊各紙)。
裁判員制度は、一般市民が刑事裁判に参加して、裁判官と一緒に、被告人が有罪かどうかなどを決める制度です。
調査では、参加したくないが70%、参加したいが26%でした。また、参加したくないの理由は、有罪・無罪の判断が難しそうが47%、人を裁きたくないが46%のほか、裁判や事件にかかわりたくないが24%でした。
まだ国民に知られていない制度ですが、「面倒なことは関わりたくない」という意識が、明白に出ていますね。私が批判している「戦後日本のお任せ民主主義」(「新地方自治入門」p262など)の、一つの帰結です。社会は、みんながつくらないとできないのです。天や外国、あるいは官僚が与えてくれるモノではありません(拙著p309)。