「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

ガバナンス、マネージメント、アドミニストレーション

以前から、ガバナンスとマネージメントについて考えています。大連載では第4章で書く予定です。関係する書物を読んで、少しずつ考えが整理できつつあるので、書き留めておきます。
(ガバナンス論の民と官)
ガバナンスが取り上げられるようになったのは、1990年代、コーポレート・ガバナンス(企業統治)からのようです。それに触発されて、パブリック・ガバナンスの議論が盛んになっています。
まず、ガバナンスとマネージメントと、どこが違うか。ガバナンスは統治・支配であり、マネージメントは管理・経営です。前者は、株主が経営者を選び、経営を委任し、その執行を監視することです。会社の目的を決定することも含まれます。株主は会社の所有者です。
後者は、経営者が会社を経営することです。さらに、マネージメントには、狭義のマネージメントとアドミニストレーションがあります。狭義のマネージメントは経営であり、経営者が目的に沿って事業戦略を立て、組織・人員・予算、さらには経営システムを決定します。アドミニストレーションは、より下位の監督で、事務の執行管理です。経営者でなく、各部門の責任者(課長など)が行います。
これを政府に当てはめてみましょう。政府が会社であり、株主は国民です。国民が政府の所有者です。国会を通して内閣に行政を委任します。国民が政府を支配することが、ガバナンスです。かつて、統治といえば、政府が国民を統治しました。主体は政府であり、統治客体は国民でした。被治者とも呼ばれます。しかし、新しいガバナンス概念では、統治(支配)の主体は国民であり、統治されるのは政府です。続く。

大きな政府、小さな政府

日本は先進諸国に比べ、公務員数は少なく、予算規模(国民負担)も小さいので、「小さな政府だ」といわれます。もっとも、歳出予算は結構大きく、正確には、国民負担では「小さな政府」で、歳出額では「中くらいの政府」です。
いろいろな議論がありますが、混乱しているように思います。そこで、次のように整理できるのではないかと、考えました。
1 行政機構の規模
これは、簡単には公務員数です。そして、同じ成果を出すなら、より小さい政府=効率的な政府が望ましいです。
2 政府の出力
行政機構が、どれだけの仕事をしているかです。例えば公共事業の額、社会保障の額です。社会保障を考えてもらえばわかるように、これは必ずしも、小さな政府がよいわけではありません。健康保険、介護保険、年金、生活保護が小さいほど良いとは、国民は考えないでしょう。
なお、「出力」と言ったのは、単純に「歳出額」では測れないからです。ムダな予算だと(人件費に消えたりすると)、「有効な仕事」にならないからです。「国民に届く予算額」といえるでしょう。
3 政府の守備範囲
しかし、政府の仕事は、予算だけでは測ることはできません。法令による規制が多いと、国民が政府に依存する範囲が大きくなります。これは、大きな政府です。例えば、文科省が補助金を出さなくても、小中学校を細かく規制で縛ると、大きな政府になります。もちろん、これも小さな方がよいとは限らず、必要なところは政府が責任を持つべきです。
行政の力の源泉は、人=公務員、金=予算、権限=法令です。上に述べた3つは、おおむね、これに合致します。これまでは、ヒトとカネを問題視して、比較していましたが、権限についても取り上げるべきでしょう。国にあっては、公務員数は総務省行政管理局が管理しています。予算は財務省主計局が管理しています。権限については、そのような仕組みはありません。

赤字でも良い第三セクター、悪い第三セクター

自治労の月刊誌「自治研」2008年3月号に、宮木康夫さんの「第三セクターの抱える財政的問題」が載っています。宮木さんは、元日本開発銀行マンで、横浜市の第三セクターである横浜新都市交通(横浜シーサイドライン)の取締役でした。第三セクター経営の専門家として、著書を出すなど活躍しておられます。
この論文では、ほとんどすべての第三セクターは、実質的な赤字である。もうかるのなら、第三セクターで行う必要はない。赤字だといって、すべての第三セクターが不健全ではない。悪い第三セクターと良い第三セクターに分けて、異なった対応をすべきであると、主張しておられます。詳しくは、論文をお読みください。

予算の見える化

23日の日経新聞で、大林尚編集委員が「予算見える化、日本版へ議論。使い切り主義、転換迫る」を解説していました。
・・国の予算は国会承認によって初めて支出が可能になるが、使い道は事実上、役所が決めている。A省の予算を誰がどういう目的でいくら使ったのか、瞬時に網羅的に把握するのは面倒だ。簡単に知る手立てはないか。その仕組みづくりに、経済財政諮問会議が動き出した。
15日の諮問会議では、民間議員の丹羽宇一郎伊藤忠商事会長が「官庁は予算を使い切ることを重視する傾向がある。国民からすると重要なのは結果だ」と改善を求めた。これを受けて、額賀福志郎財務相が新しい仕組みづくりを担当することになった。今年度中に試行し、2009年度から本格稼働させる。
予算の使い方を監視するのは本来、立法府の仕事だが、サイトができれば誰でも骨を折らずにタックスイーターを突きとめられるようになる。
使い切るのが善とされた予算主義。「見える化」はその転換を迫るための簡便なしかけであり、公益法人改革の一里塚にもなる。

税制改革の議論

読売新聞18日、近藤和行編集委員の「政府税調、議論進めず。消費税上げ、唐突感に国民の反発も」から。
・・政府与党は、消費税を含む税制改革の議論を、7月の参院選まで封印することを決めており、調査分析に徹する政府税調の姿勢は、それに足並みをそろえているだけとも言える。また、消費税は過去に政治問題化したこともあり、「参院選の争点にすべきではない」(自民党税調会長)との主張にも一理はある。
しかし、安倍首相や与党は、ともに消費税引き上げなど抜本改革のスケジュールについて、「来年度改正の中で全体像を明らかにしたい」としている。その場合、実質的な議論の期間は、夏休み明けの8月下旬から12月中旬まで、わずか3か月余。消費税率引き上げという事の重大さや、過去の導入・税率引き上げ時に比べ、極めて短時間での政策決定になる可能性がある。
・・選挙戦術上、与党が消費税に関する発現を封印するのはともかく、政府や政府税調は、税制改革への取り組みや課題を、もっと前倒しで発信すべきではないか。