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行政

危機の際の指導者論

19日の日経新聞経済教室は、ジョセフ・ナイ教授の「指導者のリーダーシップ発揮、状況を察する知力が重要」でした。危機への対処で指導者は鍛えられる、良くある危機とまったく新しい危機を見分けよ、何を自分が決定し、何を委ねるか分別を、と主張しておられます。
リーダーが存在を発揮できるのは、危機の時です。平常時なら、官僚組織が処理してくれます。また、改革をする時に存在を発揮できます。官僚機構は改革を嫌いますから。上に立つ者は、何を自分が判断するか、何を部下に委ねるか、その判断が最も大切だと、私は考えています。これは危機の時だけでなく、平常時においてもです。

その7 目標による管理

民間ベストプラクティスで、官庁組織でも、目標による管理を試みることになりました。先日、県庁の方とお話ししていたら、二つの県でうまくやっておられることを聞きました。
部長が各課長と、年度初めだけでなく、年に何度か、仕事の目標と達成具合を確認しているのだそうです。両部長曰く「やってみると、部下との間でいかに認識が違うか、よくわかりました。部下は何でもないことを悩み、私の意向を測りかねていたんですね」とのこと。ポイントは、定期的に部下との間で、目標と達成度を確認をしあうことのようです。
私も、県の総務部長の時、各課長に年度の主要事業計画表を作ってもらい、お互いに確認しあっていました。「明るい係長講座」中級編p12。
それを、制度化したということですね。簡単なことですが、重要なことです。あまり難しい仕組みは導入しても、定着しませんよね。簡単・イズ・ベストです。
次に課題になるのは、そこに挙げた項目が適切かどうかです。さらに、この結果を、評価に結びつけることです。それには、列記した項目に、ウエイト付けをする必要があります。
さらに進んだ方法で、かつ、うまくやっておられる県や市町村もあると思います。具体的にお教えいただければ、幸いです。

その6 企画への民の参入

行政サービスについて、官と民との垣根が低くなったことを述べました。さらに、実施部門だけでなく、企画についても垣根は低くなっています。企画部門も、官が独占しません。民間のアイデアが良ければ、それを採用すればよいのです。
これまでは、官僚が事実上、政策立案を独占していました。もちろん、審議会などで、民間の知見も吸い上げました。研究者、マスコミ、議員、圧力団体からも、アイデアは提供されました。しかしその場合でも、官僚が取捨選択しました。アイデアを法律や予算にする作業を官僚が担っているので、官僚に都合の悪いアイデアは、法律や予算にならないのです。また、各省協議があるので、一つでも反対する省があると、成案にならないのです。
これからは、官僚による政策の独占が、崩れると思います。その例が、経済財政諮問会議です。民間のアイデアが官僚の頭越しに議論され、実行に移されています。すなわち、民間議員ペーパーが、各省協議なしに提出されます。そして、総理の前で議論されます。もちろん、法案にするためには閣議決定が必要ですが、総理がいったん決めたことを、各大臣が反対することは困難です。

その5 官の独占の終わり

ガバナンスや地域の経営まで視野を広げると、政府(行政組織)は、公共サービス提供の一主体でしかありません。その他にも、公的サービスを提供している、提供できる組織や人はたくさんいます。NPO、ボランティアに限りません。生命を扱う病院や、教育を担う学校なども、私立は多いのです。官が公共サービスを独占しません。
すると、住民が公共目的を達成するために、どのような手法をとることが効果的かまで広げて議論するようになります。ある政策を実行する場合に、企業で担えるか、NPOでできるか、それとも官が担うかを、選択するのです。こうなると、「行政学」という表現は狭く、「公共工学」と言った方が適切かも知れません。
ここには、近代ドイツ国家学からアメリカ社会学への、国家観の転換があります。ドイツ国家学では、社会は弱肉強食なので、中立公正な国家が秩序をつくります。民(社会)と官(国家)は、峻別されます。一方、アメリカ社会学では、人が集まって会社を作り、人が集まって自治体を作ります。そして政府もつくります。行政機構も会社と同じく、住民の目的のためにつくったものです。官と民との間には、垣根はありません(このことは、「不思議な公務員の世界-ガラパゴスゾウガメは生き残れるか」に書きました)。

その4 行政管理と行政経営、地域経営

民間でのマネージメントは、行政では行政管理になります。その改革が、行政改革です。これまでは、行政改革は組織のスリム化・効率化に主眼がおかれていました。それは重要なのですが、マネージメントや市役所の経営という観点からは、スリム化だけでは狭いのです。「効率化」の他に、「有効性の向上」が必要なのです。それは、住民が欲しているサービスを提供しているかです。市役所の生産物である行政サービスが、顧客である住民の要求に応えているかが、問題なのです。今あるサービスをよりやすいコストで行うだけでなく、どのようなサービスを提供するかを問わなければなりません。
すると、行政管理という言葉は不適切になります。これは、決められたことを間違いなく実行することです。せいぜい効率化までしか、担当しません。顧客重視、成果重視になると、行政管理にとどまらず、行政経営という視点が必要になります。
さらに、市役所の経営だけでなく、地域の経営が課題になります。住民が求めるサービスは、行政サービスだけではありません。商店・文化・交通・娯楽、その他のサービス業などなど。民間のサービスをどう確保するかも、重要な問題です。そして、それらより先に、雇用の場をどう確保するかが重要です。これらは、市役所のスリム化や市役所組織の経営を考えているだけでは、でてきません。しかし、働く場がなくなって住民がいなくなったら、自治体は成り立たないのです。