「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

政権交代の先進国

今日は、明治大学菊地瑞夫先生のお招きで、東アジアにおける「政策形成過程にける高級公務員の役割に関する調査研究」に出席しました。台湾国立政治大学(National Chengchi UniversityのChung-yuang Jan教授、Evan Berman教授との意見交換です
私にとっても、大変勉強になりました。先生方の関心事項は、この表題の通りなのですが、意見交換していく内に、焦点がわかりました。それは、政権交代後の高級公務員と政治家の関係、日本でいう「政と官のあり方」です。
日本は、1年前に初めて政権交代がおきましたが、台湾と韓国は日本より先に、政権交代を経験しています。特に台湾は、2度の交代を行いました。もちろん、両国とも、権威主義的独裁から民主化を実現した上でです。
台湾でも、最初の政権交代後に、新政権は「官僚は敵だ」と主張したそうです。もっとも台湾では、それまでの高級公務員は、日本と違い政治任用だったようです。また、官僚が国会議員と接触することについても、かなり違いがあります。

勉強になったというのは、次のようなことです。日本では民主主義のお手本は、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスでした。そして、アジアでは日本だけが、民主主義を実現したと自負していました。ところが、アジアで民主化に成功した国が出てくるとともに、政権交代に限れば、日本より先に経験した国が、お隣にあったのです。お手本は、ご近所にありました。
政権交代をした時に、何をすればよいか、何をしたら良くないか。政策の転換や官僚との関係について、西欧先進国はお手本になりませんが、ご近所にお手本があったのです。なぜ私たちは、それを勉強しなかったのでしょうか。経済と同様、日本だけが成功したという慢心でしょうか。今からでも遅くありません。政治家、マスコミ、研究者が勉強すれば、有意義だと思います。
Jan教授は、公務員評価担当大臣も経験しておられます。台湾でも韓国でも、公務員制度改革に取り組んでいます。もっとも必ずしも順調ではないようです。しかし、これらの経験も、日本にとって大いに参考になると思います。日本では、目標による管理を導入したのが、まだ2年前ですから。

外国人向けの就労対策

独立行政法人の労働政策研究・研修機構が、地方自治体における外国人の定住・就労支援への取組に関する調査結果を取りまとめました。先月公表されていたそうです。
詳しくは報告書を読んでいただくとして、雇い止めや解雇が増え、帰国する外国人や失業者が増えています。生活や就労の支援が、必要となっています。
そのほか、市町村では、外国人にも利用しやすくするために、ホームページの翻訳、通訳の配置、ごみ分別案内、母子手帳の翻訳などを行っています。

行政の失敗の検証・口蹄疫

12月7日の日経新聞夕刊「ニュースのわけ」は、樫原弘志編集委員の「口蹄疫検証委、県・国を批判。感染防止へ備え不十分」でした。この春、宮崎県で口蹄疫が発生し、牛や豚が約29万頭犠牲になりました。それへの対応を調査していた農林水産省の口蹄疫対策検証委員会が、11月に出した報告書についてです。報告書では、お粗末な宮崎県の防疫の実態や、政府の判断ミスを厳しく批判したと、書かれています。詳しくは、記事と報告書を読んでください。
行政の失敗は批判されるべきですが、このような外部委員を入れた検証が行われるようになったことは、進歩だと思います。農林水産省では、かつて、BSE問題に関する調査検討委員会(2002年)
ありました。その報告書では、生産者優先・消費者保護軽視の行政、不透明な政策決定過程、危機意識の欠如と危機管理体制の欠落が、厳しく批判されました。
行政の失敗、それは間違ったことをした場合とともに、やるべきことをしなかった場合があります。しかし、後者は事件が起きないと、明らかになりません。行政の不作為による失敗です。これまでに指弾された大きなものとして、公害裁判(水俣病など)、エイズ薬害訴訟(非加熱血液製剤事件)、ハンセン病訴訟、1990年代の金融行政などがあります(拙稿「行政構造改革」2008年7月号)

農業政策の反省

11月25日の朝日新聞オピニオン欄、松下忠洋経済産業副大臣の「市場自由化と農業、国際化意識した改革急務」から。
・・私は国民新党に所属しているが、かつては自民党農林族として農産物自由化反対の旗振り役を担ってきた。1993年にはガットのウルグアイ・ラウンド交渉でのコメ自由化案に反対して国会前で座り込み、ガット本部前でも韓国の国会議員と共闘して自由化反対を叫んだ。だが、こうした主張が結果的に国内農業の体力を落としてしまったことを痛切に反省している。
米作農家保護のため、94~2000年に投入されたウルグアイ・ラウンド対策事業費は6兆円。主な内訳を見ると、農業農村整備事業費(灌漑施設、農道空港など)3兆1750億円、農業構造改善事業費など(加工出荷施設、温泉施設など)1兆2050億円ーで、約7割は公共事業、施設整備に消えた。受益者の中心は農家や農業よりも建設業者だったことになる。
この間、農家1戸当たりの農業所得は年159万円から108万円に減り、食料自給率も約3%下落した。何のための6兆円だったのか。農家を直接支援して生産額と販売価格の差額を補填し、集落営農の推進や後継者育成策に回すべきだった・・
就農者の平均年齢は66歳。このままでは10年後に担い手がいなくなる・・
詳しくは原文をお読み下さい。

進まない規制改革

11月14日の日経新聞「検証、ニッポンこの20年。長期停滞から何を学ぶ」は、「内需産業はばたかず。医療・農業・・規制の壁厚く」でした。
・・高齢化やグローバル化を乗り切るためには、医療や農業など規制に守られた内需型産業を経済のけん引役に変身させなければならないーこう言われ始めたのは、1990年代だ。だが、医療も農業も成長の源泉になるだけの地力を発揮していない。業界団体は規制に安住し、その構造を政治が温存してきたことが、成長産業への脱皮を阻んできた・・
日本の自動車産業も、かつては保護の対象でした。情報通信や金融は、保護から自由化に大きく転換しました。規制による保護では、勝ち残れません。消費者・利用者にとっても、供給者にとっても、長い目で見ると損失でしょう。
もちろん、そのようなことを言っても、現在規制に守られている供給者にとっては、今の生活がかかっています。その人たちのうち勝ち残れる人を応援し、残れない人に対し別途支援する。それが、政治の仕事だと思います。改革には、痛みが伴います。