カテゴリーアーカイブ:行政

砂原教授、地方議会選挙制度改革

2018年1月18日   岡本全勝

1月17日の朝日新聞に、砂原庸介・神戸大学教授が「選挙制度改革、まず地方議会を。多数派作れず機能不全、野党の組織作り阻む」を書いておられます。

・・・選挙制度改革と言えば、しばしば国政選挙が念頭に置かれる。しかしまず改革が必要なのは地方議会の選挙である。この選挙制度が議会の機能不全をもたらすとともに、国政での野党の統合を阻んでいるからだ。
日本の地方議会の選挙制度は、基本的に選挙区から複数名を選ぶ大選挙区制であり、有権者は1人1票を持った上で候補者を1人選んで投票する。伝統的に日本政治で用いられてきた投票方法だが、議員たちに多くの有権者の支持に基づく多数派を形成させるという観点からは、この制度は深刻な欠陥を持っている。
まずは候補者が個人として選挙を戦うために、自分と考え方が近い候補者がライバルになることだ。そのため、例えば「子育て支援」を訴える候補は、似たような政策を訴える候補より票を集めようとして差異を強調する。同じ子育て支援でも、この地域に特化しますとか、幼稚園よりも保育所に手厚い支援をしますといったアピールである・・・

・・・地方議会の選挙制度に対する現実的な代替案としては、非拘束名簿式比例代表制を挙げたい。個々の候補者への投票を政党ごとに合算して議席配分を行い、政党内での得票順に候補者に対して議席を割り当てる制度である。この制度のメリットは、得票が政党ごとに合算されるので、考え方が似ている候補者が連合を組みやすくなることである。政策の一致する候補者同士が協力することは、地方だけでなく国政でも安定した政党がつくられる基盤となるだろう・・・

的確な指摘であり、提案も現実的です。原文をお読みください。

真山仁さん「怖いものはみたくない」

2018年1月10日   岡本全勝

1月3日の朝日新聞経済面、作家の真山仁さんの発言「財政破綻 誰も言わないなら、私が言う」から
・・・怖いものはみたくない。できたら通り過ぎてほしい。「見ざる」「聞かざる」「言わざる」の3ザルですよね。お上に、よきに計らってもらえばって思っている表れでしょう。でも、そうしていたらろくなことがなかったのが、この20年ですよね。
特に東日本大震災の後、官僚やメディア、大学教授といったインテリに対して国民が嫌悪感をもってしまっていて、福島第一原発事故などに関して「だまされた」という感情がある。「もっと一生懸命言ってくれたら、気にしたのに」と思っている。本当は、スリーマイルもチェルノブイリの事故も隠されてはいないのに。
政治家も、財務省をたたいていれば自分たちの責任が転嫁される、と考えているふしがある。官僚主導が嫌ならば、政治家がもっと勉強して官僚を使いこなせばいいのに、それもできず、警鐘がきちんと鳴らされていない・・・

北村亘先生「文部科学省幹部職員の理念と政策活動」

2018年1月9日   岡本全勝

季刊『行政管理研究』2017年12月号に、北村亘・大阪大学教授の「文部科学省幹部職員の理念と政策活動~2016年サーヴェイ調査における4つの官僚イメージ~」が載りました。興味深い調査結果が出ています。

これまでの官僚制の研究では、官僚を次の3つの型に分けて考えていました。
「古典的官僚または国士型」=政治の上に立とうとする態度の官僚
「政治的官僚または調整型」=政治の中で任務を遂行する態度の官僚
「合理的官僚または吏員型」=政治家によって定められた政策を合理的に実施する官僚。
そして、支配的な型は、国士型から調整型へ、さらに吏員型へ変化すると想定しています。

ところが、今回の調査結果では、国士型官僚像が、さらに2分できるのです。彼らは、政治的合理性を重視しません。その中で、行政的合理性を重視する官僚を「古典型」とすると、行政的合理性も重視しない官僚「超然型」とも呼ぶべき官僚が多くいるのです。
ちなみに、政治的合理性を重視する官僚のうち、行政的合理性を重視しないのが「調整型」、行政的合理性を重視するのが「吏員型」です。
この分析では、文科省本省幹部(課長以上、114人中回答は75人)のうち、調整型が19人、吏員型が15人、超然型が20人、古典型が21人です。

質問票と回答を、これらの型に分類する際の分け方が正しいのか、その点は疑問が残ります。また、他省庁との比較をしないと、一概に評価はできません。が、この結果を見ると、いまだに古典型や超然型が多いことは驚きです。文部行政の理念をどう考えるかとも関係するのでしょう。現在の文部行政の目標は何かです。

このような調査は、有意義ですね。内閣人事局と人事院は、公務員 の人事制度と勤務実態を所管していても、官僚の理念と実態は所管の外のようです。このような学者の分析、マスコミの評価によるのでしょうか。かつては、先輩官僚による指導と薫陶がありました。官僚の役割の転換期(と私は考えています)に、このような議論は必要です。
ところで、国家行政や官僚を対象とした研究誌がないのです。地方行政などはいくつかあるのに。『季刊行政研究』は、貴重な雑誌です。

ここでは、論文の一部しか紹介していません。関心ある方は、原文をお読みください。また、予算の関係で、文科省だけの調査になっています。ぜひ、他省庁を含めた調査、そして継続的な調査をお願いします。

民主政を機能させる指導者がいるかどうか

2018年1月2日   岡本全勝

12月23日の読売新聞解説欄、塩野七生さんの「民主政 アテネの教訓。指導者 衆愚の分かれ目」から。
・・・アテネの全盛期を築いて民主政を完成させたペリクレスは、人々が発する不安の声を冷静に説き鎮め、長期的な視野に立った政治をした。しかし彼の後の指導者は、逆に人々の不安や怒りをあおり立て、戦略を欠いていく。ペリクレス後のアテネが後世、衆愚政と呼ばれることになった。
衆愚政のアテネは、政治の仕組みや有権者のレベルが以前と変わったわけではない。民主政を機能させる指導者がいたかどうかの違い。民主、民主と唱えていれば民主政が実現するわけではないの。民主政を妄信してはいけない・・・

塩野さんは、12月26日の日経新聞オピニオン欄にも、出ておられました。「失望が生むポピュリズム」。坂本英二・編集委員 の解説から。
・・・塩野七生さんは紀元前からルネサンスまで2500年に及ぶ欧州の歴史を約50年かけて書き上げた。登場する国家の盛衰や政治リーダーの栄光と失敗は、21世紀の国際社会とも共通する多くの教訓を含んでいる。
塩野さんの歴史長編はたいてい静かに始まる。民族や文化が生まれた時代背景を丁寧に紹介。だが外敵などに対抗するため個性的な指導者が現れた瞬間から、歴史が一気に走り出す。「ローマ人の物語」ではスキピオ、スッラ、カエサルら適時に適切な男たちが現れて困難を克服する。どんなに強大な帝国も、優秀な指導者を選べなければ一気に坂を転げ落ちる・・・

玉木林太郎さん、政策を議論する場

2017年12月30日   岡本全勝

12月28日の日経新聞「私見卓見」、玉木林太郎・国際金融情報センター理事長(前OECD事務次長)の「政策を議論する「場」を東京に 」から。

・・・もう一つ東京にほしいものがある。政策を議論するための開かれた「場」である。経済、社会、外交、環境、文化など広く公共政策と呼ばれるものについて考えを提示し、質問や反論を受ける常設のフォーラムだ。ジェンダーやサスティナビリティなど今の日本でもっと取り上げられるべきテーマはいくつもある。
政策の決定には国会をはじめ別の仕組みが用意されているが、その周辺にあって普段に識者の「卓見」を聞き、考える機会を人々に与えるような場がほしいのだ・・・
・・・全国にコンベンションセンターや会議場はたくさんあるが、必要なのは建物ではない。テーマと問題点をうまく設定し、研究者と関心ある聴衆を集めるコンビーニング・パワー(召集力)である。
あえて海外の例を挙げると、米国の外交問題評議会、ロンドンの王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)、ブリュッセルのブリューゲル研究所などだろうか。高等教育機関に付属するものでもいいが、国の関与は必要なく、非営利でなるべく党派性の薄いものがよい。OECD自体も、国際機関という形で似たような機能を果たしているのかもしれない・・・

全文をお読みください。これは、ソフトパワーの代表ですね。