カテゴリーアーカイブ:行政

行政化する日本政治、その2

2019年10月14日   岡本全勝

前田健太郎・東大法学部准教授の「行政化する日本政治」の続きです。
先生は、1990年代に佐々木毅先生が、野口さんと同様に、政治思想の研究者が行政学の研究動向を批判したことを取り上げます。政党優位論への反論です。

・・・佐々木の批判の要点は、こうした政党優位論が、政治家の役割に関する不適切な理解に立っているということであった。民主政治における政治家の役割とは、ただ単に個別の政策分野で官僚に対して影響力を行使することではない。むしろ、政治家の役割とは、政党を組織することを通じて、様々な政策分野を横断する政策パッケージを提示し、その中身を他の政党との論争を通じて鍛え上げることである。族議員のように、選挙区単位、業界単位の特殊利益を代弁し、その利益を当該分野の所管官庁の予算獲得を支援することを通じて実現しようとする政治家は、本来果たすべき役割を果たしていない。政党優位論が見出したのは、「政治家の官僚化」なのである・・・

・・・1990年代以降に展開した政治主導のための諸改革の行き過ぎが忖度の問題を生み出したのではない。むしろ問題は、政治主導が、政治家同士の論争を通じた政策決定ではなく、首相の権限強化を通じたリーダーシップの行使と理解されたことにある。その帰結として、与野党間はもちろん、与党や官僚制内部においても政策を巡る論争が低調になったのである・・・

鋭い指摘です。原文をお読みください。
私も、官僚の評価の低下の原因の一つは、政策を議論しないことにあると主張しています。政策を決定するのは、内閣です。そして、決められたことを実行するのは、官僚の役割です。しかし、政治家に対し、必要な政策、選択肢としての政策を提示することも、官僚の重要な役割です。
毎日新聞「論点 国家公務員の不祥事」」「毎日新聞「論点 国家公務員の不祥事」その2

行政化する日本政治

2019年10月13日   岡本全勝

東大出版会PR誌「UP」9月号に、前田健太郎・東大法学部准教授が、野口雅弘著『忖度と官僚制の政治学』の書評「行政化する日本政治」を書いておられます。

近年の日本の官僚制における「忖度」について、一般的には、首相の権力基盤が強化され「政治主導」あるいは「官邸主導」が実現したから、官僚たちはその意向を忖度して行動するようになったと言われていると指摘した後で。
・・・しかし、今回紹介する野口雅弘著『忖度と官僚制の政治学』(青土社、2018年)は、こうした説明とは全く異なる議論を展開している。本書によれば、現在の官僚制における「忖度」の問題は、政治主導に起因する現象ではない。むしろ、この現象は政治が「行政化」していることに由来する。つまり、忖度の広がりとは、政治家が官僚を従わせていることではなく、政治家が官僚のようになってしまっていることの現れだというのである・・・

・・・官僚の「忖度」が指摘されるようになった背景として、本書は1990年代以降の日本政治における「アカウンタビリティ」の広がりに注目する。この言葉は「説明責任」と訳され、政治家や官僚といった政治エリートが自らの行動を社会に対して説明する責任を意味する表現として用いられてきた・・・
・・・この過程(情報公開制度や新公共管理論の発展)において、本来は二種類に区別されていたアカウンタビリティの概念が混同されるようになったと本書は指摘する。第一は、官僚のアカウンタビリティである。これは、行政の執行手続きが公正・中立に行われ、そこに恣意性が含まれないことを意味する。第二は、政治家のアカウンタビリティである。これは、自らの立場の持つ党派性を明確にしたうえで、その立場に基づいて対抗勢力との論争を行うことを意味する。ウェーバーが『仕事としての政治』において展開した官僚と政治家の役割の区別に従えば、官僚は「怒りも興奮もなく」政治家の決定を実行し、政治家は対立する価値を巡る「闘争」を通じて意思決定を行うのである・・・

・・・この二つのアカウンタビリティのうち、1990年代以降の日本で主流となったのは、官僚のアカウンタビリティであった。すなわち、本来は野党との論争を主たる役割とするはずの政権与党の政治家たちが、政策決定を行う際、自らの党派性を前面に出すのではなく、むしろ自ら政策が他に選択肢のない、客観的で中立的なものだという、あたかも官僚のような論理を用いるようになった・・・
・・・このように論争の可能性を排除しようとする説明の仕方は、政治家の作法ではない。むしろ、それは政治が「行政化」していくことを意味する(243頁)。そして、政治から論争が排除されることが、「忖度」の広がりの背景となる。というのも、政策的な論戦が行われにくい環境の下では、政策を立案し、論争する能力に長けた官僚よりも、官邸の中枢の意向を先回りして読み、関係者の利害を調整する能力を持つ官僚の方が出世しやすいからである・・・
この項続く

企業のノウハウを取り入れた住民健康づくり

2019年10月11日   岡本全勝

10月3日の福島民報新聞に、「民間と連携健康推進事業 2019年度は23市町村」が載っていました。企業のノウハウを取り入れ、住民の健康づくりを行う市町村を、県が支援しています。23市町村の具体事業が、表になって載っていました。
県の発表資料は、「民間企業とコラボした健康づくりの実施について」「事業一覧」です。

食品会社や健康づくり会社に、運動や食事指導を委託します。事業内容も、企業が提案しています。企業はその道の専門家ですから、これは効率的ですね。このような官民協働事業もあります。
施設の建設も、自治体が案を作り企業に発注するほか、企業に案を考えてもらいその中からよい案を採用して建設してもらうのですから。ほかの事業にも応用できますよね。

外国人の子供、2万人が不就学

2019年10月2日   岡本全勝

日本に住む外国人の子ども、約2万人が就学していない可能性があること、各紙が報道していました。9月28日付け朝日新聞

・・・ 調査は、今年4月に外国人労働者の受け入れを増やす改正出入国管理法が施行されたことなどを受けて実施。全国の教委を通じて、今年5月時点で住民基本台帳に記載がある外国人の子らを対象に調べた。
その結果、保護者に面会するなどして不就学と確認された子は1千人、戸別訪問時に親が不在などで就学状況を確認できなかった子は8768人、台帳に記載はあるが教委が状況を確認していない子が9886人に上った。不就学の可能性がある子は、東京や神奈川、千葉、愛知、大阪など都市部に多かった。
外国人の子がいる家庭に就学案内を送っていない自治体も4割近くあった・・・

・・・一方、文科省の別の調査では、日本語指導が必要な小中高校の児童生徒らが昨年度、2年前から6812人増えて過去最高の5万759人(外国籍4万485人、日本国籍1万274人)に上った。このうち2割以上が補習など特別な指導を受けていなかった。一般の高校生と比べて中途退学率が7・4倍と高く、非正規就職率も9・3倍、進学や就職していない人の割合は2・7倍だった・・・

この問題は、かなり前から指摘されていたことです。教育委員会は、学校に来る児童生徒を相手にすることが、主たる任務でしょう。すると、この子供たちは、取り残されてしまいます。
かつては、「学校に行きたいのに、貧しいなど家庭の事情で行けない」ということが、問題でした。しかし今は、登校恐怖症やこのような日本社会から取り残された子供たちが、重要な課題になってきました。

企業の地域貢献、具体例

2019年9月21日   岡本全勝

連載「公共を創る」第18回「哲学が変わったー成長から成熟へ 公共を支える民間」の補足です。記事の中で、自治体と企業との連携協定を紹介しました。その例として上げたものを、補足説明を含めてここに載せておきます。

1 福島県の例。企画調整課「企業等との包括連携協定

2 神戸市。神戸市 認知症の人にやさしいまち「神戸モデル
(1)認知症の人にやさしいまち『神戸モデル』トップ認知症事故救済制度とは?

(2)神戸市認知症の人にやさしいまちづくり推進委員会 事故救済制度に関する専門部会 「事故救済制度素案」及び「事故救済制度運用支援業務委託」提案募集の選定結果について

http://www.city.kobe.lg.jp/information/committee/health/nintisho/img/30.07.20_05.pdf

3 三井住友海上火災保険
(1) 上の2(2)で、市に対し制度案を提案し選ばれた側である、三井住友海上火災保険のホームページ(すみません、原稿に載せるのを怠りました)
地方創生への貢献」のページ中、「1.地域課題解決に向けた支援 (2)商品・サービス・ネットワークを活用した支援(認知症神戸モデル、大阪府里親制度)」(欄右の+記号をクリックしてください)

このページには、地方自治体への協力として、次の3つに分けて活動が載っています。
① リスクソリューションサービスを活用した支援(働き方改革、BCP策定、企業の経営課題解決)=会社が持つ技能を提供しているもの。
② 商品・サービス・ネットワークを活用した支援(認知症神戸モデル、大阪府里親制度)=会社の商品を活用したもの。
③ 社会貢献支援(物産展の開催等)=一般的な社会貢献

神戸市の認知症事故救済制度は、このページで紹介したことがあります。
官民協働施策、神戸市の認知症事故対策」「その2