カテゴリーアーカイブ:行政

自立準備ホーム

2022年5月24日   岡本全勝

5月10日の朝日新聞オピニオン欄、日本自立準備ホーム協議会代表理事・高坂朝人さんのインタビュー「加害者、減らすために」でした。
・・・ 少年院や刑務所を出ても行き場のない人を一時的に引き受ける自立準備ホームの全国組織、一般社団法人「日本自立準備ホーム協議会」が設立された。立ち上げに尽力して代表理事に就いたのは、逮捕歴15回の元非行少年、高坂朝人さん。目指している「加害も被害も減らすための再犯防止」には、何が必要なのか・・・

――寝泊まりする場所を提供する自立準備ホームは、いつから?
「15年12月に始めました。NPOの活動の中で、少年院などを出ても帰る場所がない少年たちを引き取る必要に迫られてアパートの部屋を借り、自立準備ホームとして登録しました。入所者は半年までいられ、家賃や食費、光熱費などの本人負担はありません。僕たちは彼らに食事を届け、1日1回は会って話をし、自立の支援をします。今は9室あり、これまでに約80人が入居しました」
「食費や宿泊費など、1人あたり月14万円強の委託費が国から出ますが、運営はとても厳しいです。入所者がいなくても家賃は発生します。夏に逮捕された人がサンダルに軽装のまま寒い時期に出てくるなど、着の身着のまま入ってくる人も珍しくありませんが、被服費は出ません。布団や家具、家電、シャンプーなどの日用品も全部僕たちが用意します。部屋の初期費用で25万円、日用品などは新しい入所者が来るたびに2万~3万円はかかります」
――障害者支援もしています。
「発達障害などがある少年は少なくありません。自立準備ホームは半年しかいられませんが、半年以内に一般就労するのも、その間にアパートを借りる金をためるのも非常に難しいのが実情です。そこで18年に障害者のグループホームも始めました。自立準備ホームからグループホームに移って2~3年ほど生活して、お金をためてから自立しています。20年からは就労継続支援B型事業所も始めました。自立準備ホームの夜ごはん作り、ストラップやブレスレット作りなどをしています。いずれも必要に迫られて始めたことです」

――全国組織の目指すところは何ですか。
「自立準備ホームは、これまでの更生保護施設だけでは足りないと法務省が始めた制度です。更生保護施設は集団生活が基本で、過去に施設で問題を起こした人などは受け入れを拒否されることもあります。酒や携帯電話は禁止のことが多く、門限があれば深夜のアルバイトはできません。国から費用が出るのだから、それぐらい厳しいのは当然だという意見もあると思いますが、本人にしてみれば『制約が多くて入りたくない』となる。住むところがなければ、再犯の可能性は高まります」
「一方、自立準備ホームは自由度が高い。たとえばうちのホームはアパートで一人暮らしで、20歳以上なら酒もたばこもOKです。宿泊はダメですが、友人が遊びに来るのも構わない。住まいの選択肢は多い方がいいはずです。もちろん更生保護施設の方がいいところもあり、それが合う人もいます。更生保護施設と自立準備ホームの連携が、絶対に必要です」

<自立準備ホーム> 行き場のない、刑務所や少年院からの出所者・出院者を受け入れる宿泊場所。全国に103カ所ある更生保護施設以外にも多様な受け皿を確保するとして、法務省が2011年に導入した。保護観察所に登録した事業者が運営し、保護の委託を受ける。入所者は最長6カ月まで生活でき、食事の提供のほか就労や自立の支援を受ける。20年度は1719人が入所した。

政策失敗の検証

2022年5月23日   岡本全勝

5月10日の日経新聞に「デジタル「230万人」の虚実 田園都市構想で「大胆な仮説」いつか来た道か」が載っていました。詳しくは本文を読んでいただくとして。

・・・経済協力開発機構(OECD)の教育統計で、加盟38カ国のうち日本とコスタリカだけデータが空欄になっている項目がある。大学でICT(情報通信技術)を学んで卒業した人材の人数だ。2019年のデータをみると、米国は前の年に比べて10%増の9万3810人、英国は同5%増の1万8706人。日本も増えていると想像されるが、国際比較できる定量的データがない。
これは文部科学省の「学校基本調査」が十分に機能していないためだ。工学分野は「機械」「電気」「鉱山」といった旧態依然の分類になっている。
デジタル人材にかかわる「データサイエンス」「コンピューターサイエンス」を履修する学部は分類がバラバラだ。「数学」「電気」「その他」などに数えられ、デジタル分野として切り取れない。同じ国公立のデータサイエンス学部でも、横浜市立大学は「数学」、滋賀大学は「その他」に入れられている・・・

・・・経済産業省はどうか。過去には「ソフトウエア人材が足りない」と危機を叫んで動かした政策が空回りしてきた。1985年からの官民共同プロジェクト「シグマ計画」ではシステム開発の標準化を目指した。5年間で約250億円を投じたが、ソフトウエア開発ツールもシグマ仕様の専用コンピューターも迷走したあげく実用レベルに至らなかった。
89年には地方のソフトウエア人材を育てる目的で地域ソフト法が施行された。各地に第三セクター方式で設立された「地域ソフトウエアセンター」はバブル崩壊もたたって研修生が集まらず、相次ぎ廃止されている。
これらの失敗は十分に検証されていない。同省は19年、「IT人材不足は30年に最大79万人」との試算を出した。それがデジタル田園都市では「230万人」と数字ばかり塗り替えられてきた。

PwCジャパングループの21年調査によると、日本はテクノロジーの進展に対して「絶えず新しいスキルを学んでいる」と回答した人の割合が7%と最下位だ。年功序列の終身雇用の下で長らくスキルが賃金に反映されにくく、新しいスキルを身につける意欲がわかない実態がある。
デジタル人材をめぐる省庁縦割りの政策を寄せ集めても、国民の意識変革は望みにくい。地に足のついた人材育成ビジョンがなければ、デジタル田園都市国家構想そのものが「大胆な仮説」のまま消えてしまいかねない・・・

こども食堂2

2022年5月22日   岡本全勝

こども食堂」の続きです。
子ども食堂は、コロナ禍でその存在が目立つようになり、行政も財政支援や広報を行うようになりました。非営利団体と行政が協働している例です。

2011年に起きた東日本大震災の際に、被災者支援と暮らしの再建に、非営利団体には大きな活躍をしてもらいました。それまでは非営利団体は市民団体と呼ばれ、私は行政とは別世界、場合によっては対立するものだと考えていました。実際に、被災者支援において、霞が関でも現場でも最初はうまくいかなかったのです。
彼らとつきあって、私は考えを改めました。そして、積極的に協働するようにしました。というか、助けてもらいました。その後、行政と非営利団体との協働は普通のことになりました。行政と社会の「意識を変える」重要な転換ができた、それに参画できたと満足しています。

困っている人の支援は本来行政の役割ですが、いくつかの面で、行政だけでなく非営利団体との協働が必要です。
一つは、行政より非営利団体の人たちの方が、感度がよく、問題を拾ってくるのです。
もう一つは、行政が施策として行う場合には、税金を使うので、平等でなければなりません。どこかで線引きをする必要があるのです。しかし、いろんな人が集う子ども食堂などは、線引きはよくないことです。そして、行政はお金と情報を出すことは得意ですが、住民を主体にして活動することは不得手です。
この本を読むとそれらがよく分かり、これからの行政のあり方、地域社会のあり方を示唆しています。
この項続く。

福島被災地視察

2022年5月20日   岡本全勝

昨日5月20日は、福島県の南相馬市と浪江町、双葉町、大熊町に行ってきました。アイリスオーヤマが、南相馬市に工場を建ててくださって、その竣工式に招かれました。

 

 

 

 

 

 

何度も発言していますが、公共施設を復旧しただけでは、まちの暮らしは戻ってきません。働く場がないと、暮らしは成り立たないのです。そしてこの地域は、原発に依存していました。廃炉が決まったので、関連産業が再開しませんし、それを支えていた飲食店などのサービス業も再開できません。
新しい産業が必要なのです。とはいえ、日本全体を見ても製造業はアジアに出て行き、企業誘致は簡単ではありません。この地域では、経済産業省が持てる力を発揮して、産業再生に取り組んでいます。
アイリスオーヤマの大山健太郎会長は、自社の持っている能力を産業復興につぎ込んでくださっています。農業再生、工場建設などです。感謝します。

久しぶりの被災地だったので、浪江町、双葉町、大熊町の復旧ぶりを見てきました。コロナ禍もあり、原発被災地に行くのは1年半ぶりです。それぞれに見違えるように復興が進んでいました。町長や職員皆さんが笑顔なのが、うれしいです。まだ復興の拠点となる狭い地域ですが、まずはここを整備して、さらに広げていきましょう。

こども食堂

2022年5月17日   岡本全勝

「こども食堂」と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。貧困家庭の子どもが食事を提供してもらう場所と想像する人が多いでしょう。ところがそれだけではなく、もっとさまざまな機能を提供しています。そして、これからの行政のあり方を示しています。
湯浅誠著『つながり続けるこども食堂』(2021年、中央公論新社)を、お読みください。

確かに、貧困家庭の子どもの食事対策になっているのですが、子育てに疲れているお母さんの息抜きの場、相談する相手や話し相手がいないお母さんのつながりの場にもなっています。子どもたちも、栄養を補給するだけではなく、異年齢の子どもやお兄さんたち、おじいさんやおばあさんと遊んでいます。ほかにそのような場がないのです。おじいさんやおばあさんも、居場所を見つけています。

貧困家庭(赤信号)だけでなく、そこまではなっていないけれど困っている家庭(黄信号)を救っています。さらに問題ない家庭(青信号)にも、子どもや親の居場所を作っています。行政が業者を使って提供する食事でなく、おじいさんやおばあさんも役割を持つことで、その人たちが生きがいを見いだします。
食事というものを配っているだけでなく、つながりという目に見えない安心を配っている、その場を提供しているのです。

コロナ禍での「集まってはいけない」は、こども食堂に大きな制約を課します。食事を配るだけでは、居場所としての機能を果たすことができないのです。孤独・孤立問題に対して、何が重要かがよく分かります。詳しくは本を読んでください。
この項続く。「こども食堂の活動