カテゴリーアーカイブ:行政

アメリカ政府への信頼度の低下

2022年11月30日   岡本全勝

11月18日の日経新聞経済教室は、渡辺靖・慶応義塾大学教授の「トランプ氏前面に反発強く 中間選挙後の米国」でした。
今回のアメリカの中間選挙については、共和党の大勝利という事前予測が外れました。その点についてはたくさんの評論がなされています。この記事で注目したのは、それとは別の、政府への信頼度の低下です。記事に1958年から2022年までのアメリカ政府への信頼度が図になって載っています。
当初70%を超えていた信頼度は、60年代と70年代に急速に低下し、20%台になります。80年代は40%台に復活しましたが、90年代初頭には19%に低下します。2000年初めに54%に急上昇しますが、その後低下して現在は20%程度です。
この要因には、政治や行政の要因だけでなく、アメリカ経済や国力の好不調があると思われますが、大きな問題です。日本も同様なことが指摘できるでしょう。

・・・もっとも、米国の歴史は分断と対立の歴史であり、合衆国憲法の前文に記された「より完全な連邦」は一度も実現したことがない。独立や憲法制定を巡っても激しい政争があった。さらに言えば、建国の指導者らは三権を分立し、さらに議会を二院に分割し、州の権利を拡大することで、いわば分断や対立を意図的にビルトインしたともいえる。「決められない政治」によって権力者や世論の暴走を防ごうとしたわけだ。
ただ、だからといって、今日の状況を「よくある話」と片付けてよいとは思えない。例えば公民権運動やベトナム反戦が盛んだった1960年代は騒乱の時代でもあったが、政府への信頼度は高く、64年には77%を記録している。その後、01年の米同時テロなどの有事の時期を除き、総じて右肩下がりを続け、近年は20%前後の歴史的低水準にとどまっている。

長年、米政治をけん引してきた民主・共和両党の主流派(中道派)は信用を失い、「反ワシントン」を掲げるアウトサイダー候補が「変革」の担い手として待望されるようになった。この点はオバマ氏もトランプ氏も同じで、いわば政治不信の時代の産物といえる。「国民の和合」を求めたオバマ氏の試みは挫折し、国民を「我々」と「やつら」に分けたトランプ氏の試みは分断を加速させた。
コロナ禍のような国民の生命(いのち)と財産(くらし)を脅かす国家的危機を前にしてもワシントンが求心力を取り戻すことはなかった。民主党では左バネ、共和党では右バネが強まるなど、主流派と争うポピュリズム(反エリート主義)が遠心力を増し、両党のアイデンティティーを揺さぶっている。米国が分断と対立を繰り返してきたことは確かだが、近年の状況は質的により深刻に思える。
バイデン氏は半世紀にわたり国政に携わり、ワシントン政治を熟知している大統領だ。同氏がどこまで政治に対する信用や主流派の求心力を回復できるか・・・

官邸一強の弊害

2022年11月28日   岡本全勝

日経新聞は10月31日から5回連続で「ニッポンの統治 官邸1強の後」を連載していました。私の関心分野なので、「ここに書かなければ」と思いつつ、時間が経ってしまいました。記事だけ紹介しておきます。

10月31日「すご腕」雇えぬ政府 人材確保、企業と争奪戦
課長級公務員の給与 米国は日本の2倍、英国は1.2倍
11月1日 霞が関、2カ月無人の「幽霊部屋」 官僚縛る縦割りと兼務
肥大化する内閣官房、10年で定員1.5倍に
11月2日「秘書官政治」が官僚を二分 国を動かす実感どこに
首相秘書官8人体制 「官邸主導」定着で増員傾向
11月3日 草刈り場の霞が関 転職しても役所の仕事
若手キャリア官僚、年100人超の大量退職続く
11月5日 政策決定に空白と困惑 省庁が縄張り返上、押しつけ合い
首相出席の官邸会議、月平均10回超 小泉政権で急増

青柳光昌さん、インパクト投資

2022年11月27日   岡本全勝

11月25日の朝日新聞夕刊「いま聞く」は、青柳光昌・社会変革推進財団専務理事の「インパクト、新興企業どう支援」でした。
詳しくは原文を読んでいただくとして。青柳さんも、東日本大震災復興の際に、復興庁が知恵を借り助けを借りた恩人です。現在は、このような新しい仕事に挑戦しておられます。

・・・「インパクト投資」や「インパクトスタートアップ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。前者は収益と共に社会課題の解決をめざす企業への投資で、後者はそういう経営を行う新興企業をさす。規模は小さいが、確実に芽吹いている。
社会変革推進財団(Japan Social Innovation and Investment Foundation、以下SIIF)ではインパクト投資、なかでもインパクトスタートアップへの投資に力を入れている。

「インパクトはそもそも『影響を与える』という意味の英語ですが、ここでは特に『社会に良い影響を及ぼす』という意味で使っています。もともとは社会的インパクトと言っていましたが、最近では『インパクト』だけで表現することも多くなりました。インパクトスタートアップとは社会課題解決をめざす新興企業。私たちSIIFは、そのようなインパクトスタートアップに年間1億円規模で投資や助成、あるいは他の出資者とファンドをつくって、投資をしています。このようなインパクト投資も注目されていて、岸田文雄首相も施政方針演説で言及しました」
SIIF専務理事の青柳光昌さん(55)はこう話す。金銭的利益と共に社会課題の解決をめざす会社のことを「社会的企業」ともいう。どう違うのだろうか。
「ほぼ同じ意味ですが、インパクトスタートアップのほうが、より成長に焦点をあてていると言っていいでしょう」

インパクト投資は、投資全体からみれば微々たる額だ。しかし急増している。
「SIIFの調べでは2021年は1兆3204億円。20年は3287億円で、1年で4倍に伸びています。21年11月には、金融機関が合同で『インパクト志向金融宣言』を出しました。現在、メガバンク、地銀、生損保、投信会社、ベンチャーキャピタルまで42機関が分野横断的に参加しており、それだけインパクト投資が注目されているということでしょう」

環境に配慮した経営をしている企業に投資をする「エコファンド」など、同種の「社会に良いとされることをしている企業」への投資はいくつも存在した。インパクト投資はどこが違うのか。
「先ほどの『宣言』には各金融機関のトップが自ら名を連ねており、インパクト投資に向き合う本気度がより高いといえるのでは。経済的な成功だけが人生の成功ではない、社会をより良く変えることも生きがいだという若い人が増えています。私たちの投資先の一つに、保育の質の向上や保育士の負担軽減をめざし、保育施設向けICT(情報通信技術)サービスを提供する『ユニファ』があります。13年の設立で、CEO(最高経営責任者)は住友商事、CFO(最高財務責任者)は外資系金融の出身です。30代で創業あるいは転身しています。彼らは、自分たちが社会課題を解決していることに誇りを持ち、明確な成長志向があって日本発で世界進出もしたいと、夢と戦略を描いています」・・・

沖縄の女性の困窮に立ち向かう

2022年11月26日   岡本全勝

日経新聞夕刊連載「人間発見」、おきなわ子ども未来ネットワーク代表理事・山内優子さんの「母になる女性に寄り添う」は、沖縄の女性の貧困と子どもへの虐待、そしてその連鎖へ挑んでおられる報告です。11月16日の記事から。

11年8月、衆議院の沖縄・北方問題特別委に参考人として出席。米軍統治を「空白の27年」と指摘、子どもの貧困解消に向けた予算確保の必要性を訴えた。

招致されたのは、当時の沖縄県知事の仲井真弘多氏を含めた4人。特別委のメンバーには現首相の岸田文雄氏や現知事の玉城デニー氏がいました。仲井真氏は県が自由に使途を決められる3000億円規模の一括交付金の創設を求めましたが、私はその1%、30億円を恵まれない子どものために使ってほしいとお願いしました。
太平洋戦争で地上戦があった沖縄では4人に1人が犠牲になったといわれています。戦後は27年間にわたる米国統治です。米軍は基地拡大に突き進みましたが、学校や保育所、母子生活支援施設の整備には消極的。本土で保育所などが続々と整備されたのとは対照的で、まさに失われた27年でした。
復帰して50年間に投入された沖縄振興予算は総額で13兆円を超えますが、福祉に目を向けると施設整備を含め遅れたままです。観光がリーディング産業の沖縄では夜に働くニーズが多いのは誰もがわかっていたはずですが、行政は夜間保育所などの受け皿を満足に整えませんでした。
離婚した親の場合、子どもを自宅に残して働きに出ざるを得ません。その子は寂しさと好奇心から夜の街をうろつくようになります。そこで出会った相手と交際し、一部は経済力がないまま若くして妊娠、出産に至ります。沖縄ではこのような循環が断ち切れず、結果として何世代にもわたって貧困の連鎖が生じているのです。

15年、当時の沖縄・北方相による沖縄の子どもの貧困に関する懇談会に出席したときのことです。県外の有識者がキャリア教育の重要性を訴えたのには、驚きを通り越して危機感を抱きました。中卒後の進路未決定率が全国の3倍という実情とズレが大きすぎます。沖縄について何もわかっていない。
大臣に直談判し、沖縄のNPOの代表者らと改めて懇談してもらいました。切実な声が届いたか、内閣府から10億円の予算が付いたと聞いたときは天にも昇る心地でした。

『領域を超えない民主主義』

2022年11月22日   岡本全勝

砂原庸介著『領域を超えない民主主義 地方政治における競争と民意』(2022年11月、東京大学出版会)を紹介します。

「領域を超えない」という表題はやや難しいですが、著者による説明は「なぜ日本では大規模に合併をやったりしてるのに、自治体間の連携はなかなか進まないんだろう」という問いについての考察で、その理由を政治制度に求めています。
確かに指摘されるとおりで、合併のほかは一部事務組合が機能していますが、市町村間・都道府県間の協働・連携はさほど行われていません。災害時の応援くらいでしょうか。観光や企業誘致などはその性格上、競争の動きが目立つことは仕方ないとしても。

第1章で問題適されているように、人や企業が集積している都市圏と、市町村の区域とは合致していません。住民は市境・県境を超えて毎日通勤し、買い物に出かけていて、自治体の範囲を意識していないでしょう。奈良府民や千葉都民という言葉が、このズレを象徴しています。

これまでの地方自治論では、国と自治体との関係が主に議論されてきました。第一次分権改革を成し遂げたので、こんどは、自治体の能力発揮と、自治体間の関係が問題になります。
国と自治体との関係は「権限の配分」なので、法律の規定になじむのですが、自治体間の連携は法律の規定には、なじまないのでしょう。どのような課題に、どのような形で答えていくかが、これからの課題になるでしょう。

第2章で議論されているように、大都市(東京や政令指定都市)における、市と都府県との関係も問題です。二重行政をどのように少なくするか。大都市が独り立ちすると、例えば大阪府庁が大阪市を管轄しなくなり、象徴的には府庁舎が大阪市(と堺市)の外に移転することになります。

分権と市町村合併の次の課題として、小規模自治体の能力向上、大都市の自治の問題、県と市町村との関係などが挙げられますが、この本の問題提起も重要です。