カテゴリー別アーカイブ: 復興10年

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して2

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して」の続きです。復興庁幹部を務めた林俊行さんの反省も載っています。

・・・震災から2年後の13年、復興庁で住宅再建を担当していたときに、苦い経験を味わった。
津波を避けられる高台などに整備する宅地がどれだけ必要か、連日調べていた。岩手県と宮城県で被災した自治体が「必要」とした宅地を積み上げると、計約2万6千戸分に達した。
「多すぎる。手遅れかもしれない」。故郷に戻らないと決めた世帯が反映されているか疑問が湧いた。被災自治体に、本当に必要な戸数を報告してほしいと頼んだ。

すでに自治体は土木系のコンサルタント会社などと一緒に、「立派な」復興計画を作り上げていた。岩手県陸前高田市のように、震災前より人口が増える計画をつくった自治体もあった。
大幅に修正する自治体もあれば、まったく変更しない自治体もあった。1年後、必要な宅地は2県で11%減った。最終的には初期の計画から36%減った。

「それだけ縮小しても、誰も利用しないままの宅地が残っていた」。林さんは19年に再び復興庁に戻った。津波を受けた被災地に、広大な「空き地」ができているのを目にした。
「建設業界にとって復興は『稼ぎ時』のため、コンサルはきれいな復興の絵を描く。自治体がそれを真に受けて計画が一度走り出してしまうと、止めるのは難しい」。自戒を込めて語る。「巨大な公共工事をみると、誰のための復興だったのかと思う」・・・

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して

2月26日の朝日新聞夕刊に、大月規義編集委員の「誰のための復興なのか、東北の「失敗例」継承して」が載っていました。

・・・大きな被害を受けた能登半島の人たちも、震災前の町をつくりかえる「復興」へ向かう時期が早晩くるだろう。そのとき、東北の復興は参考になるのか――。
11年余り、人口ゼロの状態が続いた福島県双葉町。原発事故という特殊な背景があるが、一から町づくりを強いられているという点で、究極の復興事例と言える・・・

そこに移住した、浜田昌良・元復興庁副大臣、参院議員(公明党)の話が載っています。本論と違った箇所を紹介します。
・・・いま、複雑な気持ちで見ている事業がある。長年帰れなくなった家々の「解体」だ。
約13年前の震災でさほど損傷を受けていなくても、原発事故で長い間住めなくなった住宅は「機能的損壊」として、自然災害の場合の「半壊」の扱いにできる。
「そうするように指示したのは自分だった」と明かす。半壊にするかしないかで、何が違うのか。
半壊認定を受けた世帯が解体を余儀なくされた場合、全壊の家屋と同じように「被災者生活再建支援金」の制度の対象となる。1世帯最大300万円。
もともとは、住宅という私財の再建に公的資金を入れることができなかった阪神大震災をきっかけにできた制度だった。
「福島の避難者によかれと思って復興庁に指示したが、時間がたつにつれ制度本来の目的が見失われ、帰らなくても支援金ほしさに解体を急ぐ人たちが出てきた。原発事故の賠償金をもらって家は再建できているはずだが……」・・・

原発事故で住めなくなった家屋、土地、家財については、東京電力から賠償金が出ています。また、別の場所に家を建てる際にそれだけでは不足する場合にはその差額も補填されます。この方々に被災者生活再建支援金を支給するのは、本来の住宅再建支援とは異なった趣旨になっています。

他自治体からの被災地への職員応援

能登半島地震の被災自治体に、他の自治体から職員が支援に入っています。報道でも取り上げられています。

「能登半島地震の被災地では、少なくとも1千人超の自治体職員が全国から集まり、被災自治体の業務を支援している。派遣先は主に、「対口(たいこう)支援」の方法で割り振られた。災害が続く近年、経験の共有とともに、自治体同士がスムーズに支援し合える取り組みが進む・・・」1月26日の朝日新聞夕刊「つながり深まる自治体支援 能登へ職員派遣 全国から1千人超、国が橋渡し

「能登半島地震からの復旧に向け、被災自治体ごとに支援役の自治体を割り振る「対口(たいこう)支援」が採用されている。ペアになることで役割を明確にし、やりとりを円滑にする狙いがある。サポート体制を強化するには災害に強い人材の育成も必要になる・・・」1月29日の日経新聞「被災地と支援自治体をペアに 役割明確化

被災自治体では突然に膨大な、そして経験したことのない仕事が生まれます。被災者支援、避難所運営、がれき片付け、仮設住宅斡旋、町の復旧などなど。国も支援に入りますが、自治体事務は自治体職員が慣れています。
東日本大震災から、他の自治体が応援職員を派遣することを本格的に始めました。姉妹盟約を結んでいる自治体同士もありますが、総務省が斡旋する仕組みを作っています。「被災地方公共団体に対する人的支援の取組」。制度の解説とともに、実際の活躍風景を載せてくれると、わかりやすいのですが。

令和6年能登半島地震 こども食堂応援基金

令和6年能登半島地震 こども食堂応援基金」を紹介します。

甚大な被害が出た能登半島地震。いろんな支援がなされています。今回紹介するのは、子ども食堂応援のための募金です。
趣旨をお読みの上、賛同いただける方は参加ください。

追記
6日の夕方にこの基金を見たときは、400万円台でしたが、8日夕方には600万円に達しました。(このホームページがどの程度貢献したかはわかりませんが)ありがとうございます。便利になりました。インターネットでの募金の威力を改めて認識しました。

岡本正著『災害復興法学Ⅲ』

岡本正著『災害復興法学Ⅲ』(2023年、慶應義塾大学出版会)を紹介します。著者は、東日本大震災以来、被災者支援と被災地復興に携わった経験から、災害復興法学の分野を切り開いた第一人者です。その著作、第3弾です。
新著には、新型コロナウイルス感染症、異常気象という最新の大災害が取り上げられています。内容も分厚く、その執筆ぶりに脱帽します。

かつては災害に関する法律は、政府の側に立った災害対策基本法や災害救助法、国庫負担法などしかありませんでした。「天災だから、あきらめるしかない」という思想がありました。阪神淡路大震災や東日本大震災の経験から、被災者の生活を支援すべきだという考え方が広がりました。そして、被災者の生活を保障することが、当然のこととなったのです。
紹介文には、「災害復興法学は、医療、看護、福祉、公衆衛生、公共政策、事業継続、リスクマネジメント、メディア等の様々な分野と連携しながら、学校教育、社会教育、生涯学習、金融教育、主権者教育、消費者教育、防災教育として、あなたの傍にある」と書かれています。

被災者と向き合う市町村役場職員には、有用な本です。
著者は「法学法律学としては全く事前知識は無用であり、社会人の皆様なら全く難なく読めてしまうと思います」と言っておられます。