カテゴリーアーカイブ:政治の役割

経団連による政治献金斡旋廃止と復活

2015年10月13日   岡本全勝
13日の朝日新聞・変転経済は、経団連による政治献金斡旋廃止でした。かつて毎年、100億円を超える政治資金を各業界団体に割り振り、自民党と民社党に献金していました。1980年代後半から、リクルート事件、佐川急便事件、金丸副総裁ヤミ献金事件など、政治とカネが大きな問題になりました。そのため、政治資金を含めた政治改革が課題になり、自民党の下野、細川内閣での政治改革につながりました。
経団連は、1993年に政治献金の斡旋を廃止しました。しかし、2004年に再開されました。

砂原先生、政治学の入門書

2015年10月11日   岡本全勝

砂原庸介・大阪大学准教授が共著で、『政治学の第一歩』(2015年、有斐閣)を出版されました。若手研究者3人による、政治学の教科書です。裏表紙に、「自由な意思をもつ個人が寄り集まってできている社会。そうした個人が協力し合い、互いに望ましい状態をつくりだすためにはどうすればよいのか。安定した秩序を築くためのルール作りとそれを守っていくしくみを、平易な言葉で説明します」とあります。目次は、リンク先を見ていただくとして、
第1章から第3章までが、政治を理解するための枠組み。
第4章から第6章までが、自由民主主義体制。
第7章から第9章までが、権力の集中と分割。
第10章から第12章までが、国際政治です。
新進気鋭の学者による、政治学の入門書です。項目もバランス良く、文章も平易です。しかし、これまでの世界の先達の業績を踏まえつつ、新しい切り口や分析にも挑戦しています。アカウンタビリティーとか。結構、高度な内容も含まれていて、抽象度も高いです。3人が3年間討論を重ねた成果だそうです。日々の政治報道とはひと味違った、政治を考える「道具」にもなります。社会人の方も、一度手にとってご覧ください。

ビスマルク

2015年10月9日   岡本全勝

これも、2か月以上前に読んだ本です。飯田洋介著『ビスマルク―ドイツ帝国を築いた政治外交術』(2015年、中公新書)。
世界史の授業では、必ず聞く名前です。鉄血宰相、普仏戦争に勝ち、ドイツを統一した大政治家として有名です。また世界で初めて社会保険制度を導入したことを、ご存じの方も多いでしょう。プロイセンとドイツの首相を、27年間も務めました。とはいえ、そのイメージだけで、どのような人生を送ったかは、案外知られていません。評伝なども訳されているのですが、分厚くて・・・。私も、読んでいません。新書版は読みやすくて、ありがたいですね。
これを読むと、決して順調な政治家人生ではなかったのです。しかし、彼が何を目指し、どのような手法で、何を実現したのか。大政治家と呼ばれる所以がわかります。社会と国家と世界を、どうとらえるか。その範囲と見方の広さ。そして、何を実現するのか。そのために、政治は何ができるか。その構想力の大きさです。
ところで、ビスマルクの言葉で「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」が有名ですが、原文は少し違うようです。この言葉は、本書では紹介されていません。

参考文献

2015年10月5日   岡本全勝
季刊「レヴァイアサン」2004年春号(木鐸社)が、「政官関係」を特集しています。飯尾先生の論文は、日本の議院内閣制は、本来とは違う運用がなされていること、それは「官僚内閣制」とでもいうものであって、別途「与党」が議院内閣制を代替している、というものです。真渕先生の論文は「萎縮する官僚」です。第10章「政治と行政の在り方」の議論の参考になります。(2004年5月5日)
長谷部恭男著「憲法と平和を問いなおす」(2004年4月、ちくま新書)は、表題からのイメージとは異なり、立憲主義(憲法)の意義・機能・限界や、平和主義の可能性を述べたものです。これまでの憲法学の教科書のような解釈学でなく、また「政治的主張」でもありません。
憲法や平和、その基底にある正義などを相対化した、政治学的分析と言えるでしょう。民主政治とは何かを考える上で、大変参考になります。拙著「新地方自治入門」第8章では、先生の前著「比較不可能な価値の迷路」を引用しました。
櫻田淳著「国家の役割とは何か」(2004年3月、ちくま新書)は、国家の役割を「力の体系」「利益の体系」「価値の体系」の3つから、わかりやすく説明しています。もっとも、この説明は、恫喝・誘導・説得の3つの手段から見た説明です。私は、「新地方自治入門」では、このような見方は、「行政の手法」p236~と「国家が調達するものと提供するもの」p269~で説明しました。
しかし、そのような手段や仕組みの考察だけでは満足できないので、より広く政治に期待される「役割や機能」を、「公の機能とは」p222~で議論しました。政治の仕組みを価値中立的に分析する(抽象化する)だけでなく、政治は何を目指すべきか、アウト・カムを視野に入れた議論をしたいからです。(2004年5月16日)
中島誠厚生労働省生活習慣病対策室長が、「立法学」(法律文化社)を出版されました。九州大学助教授に3年間出向した際の、講義をまとめたものです。内容は日本の立法過程論で、省内過程、政府内過程、与党内過程、国会内過程の段階ごとに説明しています。そして特徴として、官僚主導、不透明な与党審査、不透明な国対政治、形骸化した国会審議を挙げています。
問題関心は、「政と官のありかた」です。アカデミズムがこれまで実務と距離を置き、現実の問題に正面から取り組んでこなかったことを批判し、それへの「解答」として執筆されたものです。現職官僚がアカデミズムも意識して書いた、内容の濃い本です。類書がないので、関心ある方には大いに役立つと思います。
中島さんは、私の富山県庁時代の同僚です。私のアイデアを「デルクイ」に作り上げてくれました

勢力均衡や覇権でない国際秩序・その2

2015年10月4日   岡本全勝

引き続き、ジョン・アイケンベリー教授の主張です。
リベラルで民主主義的な世界秩序は、戦勝国アメリカが主導したものです。それは、いくつかの原則によって成り立っています。
1つは、経済の開放性です。1930年代のイギリス、ドイツ、日本によるブロック経済と世界経済の崩壊を、再び起こさないためです。平和で安定的な世界秩序のために、経済の開放性は必須だとアメリカは考えました。
2つめは、西側政治経済秩序を共同で管理するという原則です。これも、1930年代の経験から学びました。一国による押しつけや、相互の敵対的競争ではなく、制度やルールを作り、参加各国によって共同管理するのです。
教授はまだいくつかの原則を挙げていますが、ここでは主要な2つを紹介しておきます。

そして教授は、戦後アメリカの国際的なパワーは、一方的な力の行使ではなかったと主張します。
すなわち、リベラルで民主主義的な世界秩序は、西側各国の参加による共同の管理によって成り立っています。制度やルールづくりがアメリカによって主導されたのは事実ですが、多国間の条約による安全保障と貿易、多くの国が参加するいくつもの国際機関によって成り立つこの秩序は、大国にとっては「面倒くさい」ことです。小さな国も、超大国アメリカと一応は対等の立場に立って、交渉します。
しかし、超大国がその力を背景に一方的に押しつける秩序は、相手国に不安と不満を生みます。それよりは、双方の合意による秩序は、強固です。戦後、圧倒的はパワーを持ったアメリカは、使おうとすればできたパワーを抑制し、西側各国を安心させ、味方につけたのです。
勢力均衡や覇権主義でない、共同管理の秩序であり、ルールによる支配です。そのルールを、参加各国が作ります。小さな国にも、発言権があります。もちろん、すべて平等ではなく、大国が拒否権を持ったりします。この手続きには、手間暇がかかります。
武力や経済力による「力の押しつけ」ではなく、「制度や場」による権力です。スーザン・ストレンジが提唱した「関係的権力」と「構造的権力」と、同様の見方です。
権力が一元化した「世界政府」がない、主権国家の集まりである現在の世界政治では、これが最良の策なのでしょう。

とこで、この本では、日本とドイツは「半主権的な限定的大国」と位置づけられています。NATOや日米安保条約によって、この2国は、国際条約の下で行動や軍備に制限を受けます。それによって、戦前のような軍国主義・冒険主義に走ることを防いでいます。
その見返りとして、アメリカは両国の防衛を一部肩代わりし、安全を保障します。それは日本とドイツにとってのメリットだけでなく、アメリカとともに、日独の周辺国にも安全をもたらします。そのような見方もあるということですね。