朝日新聞8月2日オピニオン欄、陳志武・エール大学教授の発言「中国と影の銀行」から。
・・真の問題は借り手にあります。地方政府が資金調達のために設立した会社が、『影』を利用してお金を引き出し、むだな開発を続けていることです。地方に財源が足りないうえ、成長が評価の基準だし自らの懐も潤うので、造成した工業団地に無理をして企業を誘致している・・
最大の問題は、地方政府を監督し規制する政治の仕組みが事実上ないことです。これは金融を超えて、統治システムの問題です・・
採算がとれない事業が相次いで地方政府が銀行に返済できなくなれば、中国の金融システムを大きく揺るがしかねない。こうした借金は2008年の米金融危機後の景気対策をきっかけに増えたものです。担当者は変わっていないし、へたをすると偉くなっているから、手がつけられない。中国で金融危機が起きる可能性は次第に大きくなっています・・
土地の使用権を売って得た収入を財源にしている地方政府は多いのです。歳入の7~8割が土地収入という都市もある・・
2010年秋に、中国政府の地方財政担当者と、議論する機会がありました。そこで出た課題が、地方融資平台です。最初、担当者が「プラットフォーム」とおっしゃるので、理解できませんでした。議論していくうちに、日本での第3セクター、土地開発公社のようなものだと理解できました。
中国では、最近まで自治体が地方債を発行できなかったので、地域開発の際に別法人を作って借金をしたのです。このあたりは、日本の人口急増期の都市施設建設、その後の観光開発の経験と似ています。違うのは、中国では土地が国有なので、それを売る(正確には使用権を売る)ことで、容易に巨額の資金を得ることができるのです。また、地域開発は、うまく行っているものばかりではないようです。別の記事によれば(時事解析)、1万社、債務残高は11兆元、約180兆円に上ります。
日本でのそれら借金の処理の経験を、お話ししてきました。しかし、問題は日本の経験より深刻だと感じました。
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地方行財政-地方行政
財政難による公共サービスの削減
7月25日の朝日新聞国際欄が、欧州各国で、国や地方自治体が担ってきたサービスが、緊縮財政で縮小される例を紹介しています。ギリシャでは、医療やホームレス支援が縮小された例、イギリスでは市立図書館が閉鎖された例が載っています。それぞれ、ボランティアなどが代行していますが、十分にはできません。ギリシャでは、年金が削減された例も紹介されています。
アメリカでは、代表的大都市であり、一時は自動車産業の拠点であったデトロイト市が破産したことが、伝えられています。アメリカでは、自治体も住民が作った「法人」(会社)なので、破産(財政再建)も、いわば会社のように行われます。もちろん、住民がいるので、清算して廃止とはいきません。
日本でも財政難は厳しいのですが(国と地方自治体の借金は欧米各国より大きいです)、借金を重ねてサービスを維持しています。歳出削減と行政サービス縮減もしていますが、これらの国に比べれば、厳しくはありません。財政破綻に近い例として、夕張市があります。
これらのニュースを見ると、改めて認識を新たにします。
・行政サービスは、ただでもなく、当たり前のものでもないこと。お金がなくなれば、提供されません。
・行政サービスがなくなっても、ボランティア活動で補える部分があること。
市町村役場の役割、住民相談
市町村役場では、住民に対し、さまざまな支援(サービス)を提供しています。その一つに、住民相談があります。
どのような肉や野菜を買ったら良いかや、どのような服やスカートが似合うかは、商店に行けば相談に乗ってくれます。しかし、日常の暮らしには、いろんな困りごとや、どうしてよいかわからないことも多いです。子どもの時は、家族や先生に相談し、教えてもらったものです。職場の同僚に教えてもらうことも多いです。最近だと、インターネットで調べたり、聞いたりすることもありますね。
それができない場合、どこで誰に聞けばよいか。親しい人に知られたくないこともあります。でも、直ちに弁護士に相談する人は多くないでしょう。市町村役場が、この機能を担っています。
杉並区の広報4月1日号(p10)に、1ページにわたって、区役所が行っている相談事業が載っていました。
子育てや教育、保健福祉、高齢者、障害者、就労、消費者、家庭内の悩み(離婚、親子の悩み)、住宅、犯罪などなど。ご覧ください。これだけもあるのかと思うとともに、一つひとつなるほどと思うことばかりです。皆さんの住んでいる市町村役場でも、行っています。
相談というのは、見えにくいですが、重要なサービスです。ここで情報を得て安心することもあるでしょうし、それぞれの悩みを解決するために行っている具体サービスや専門窓口(経済支援や入所サービス)に誘導することもあるでしょう。
福島県飯舘村、ふるさと1億円の活用
読売新聞「時代の証言者」今月は、福島県飯舘村の菅野典雄村長です。寒村の条件の下、酪農を志し、他方で厚い志を持っておられたことが、回顧録として記されています。
飯舘村は、全村避難を余儀なくされています。3.11までは、充実した幸せな生活を送っておられました。最初に村長にお会いした時、「しっかりされた村長だな」と印象を持ちました。その後も、何度もご一緒していますが、私の尊敬する村長の一人です。
村長は、「村が一丸となって帰るのだ」という信念を、当初から持ち続けておられます。この連載には、その背景が、書かれています。例えば、「村おこし」のために、仮装大会の他、さまざまな取り組みをされたようです。3月25日の「世界から村を見なおす」に、次のような話が紹介されています。
村では、若妻たちをヨーロッパに派遣する企画を行いました。「若妻の翼事業」です。引き続き、「嫁・姑、キムチの旅」「心の翼、家族物語」と、若嫁から始まって、年配婦人、親子、おじいちゃんと孫が、海外旅行に行きます。それも、農繁期に行くことで、ありがたさがわかるようにという配慮もしてです。その人たちが、その後の村づくりの人材となります。すばらしいですね。
さらに、この企画が実現できたのは、竹下内閣が「ふるさと創生事業」として配った、「ふるさと1億円」があったからだそうです。
・・・あの資金は、金塊を買うなどの自治体もあって「地方の無駄遣いの温床」と批判されましたが、我々の村では、その後の地域づくりに大変役に立ったのです・・
「ふるさと1億円」と聞いても、若い人は知らないでしょうね。昭和63年度(1988年度)の話ですから。四半世紀前の話です。このように役に立って、評価された自治体もあったのです。1億円があったとき、それを生かすも無駄にするのも、首長の識見です。
当時これを、自治省交付税課で担当した補佐が、椎川忍先輩でした。私はその後を引き継いで、平成2年から、地方債と交付税を組み合わせた「地域づくり推進事業」を担当しました。その頃の考え方は、『地方交付税-仕組と機能』に詳しく書きました。
ガソリンスタンド過疎地
12月24日の日経新聞が、ガソリンスタンドの減少を取り上げていました。需要が減っているのと、老朽化したタンクの改修が義務づけられたので、廃業するスタンドが増えているのです。
ところが、地方ではこれが大問題です。車に頼っている地方では、ガソリンスタンドは重要な公共インフラなのです。東日本大震災の際にも、ガソリンスタンドが津波で流され、大きな問題になりました。暖房の灯油も、必要です。
資源エネルギー庁は、市町村内の給油所が3か所以下の自治体を「SS過疎地」と呼んでいるとのことですが、全国に238市町村あるとのことです。さらに、これは市町村合併後の自治体で調べているので、合併前の自治体で調査すると、もっと増えます。