カテゴリーアーカイブ:地方行政

アメリカ、連邦から州への交付金の使い方

2022年3月15日   岡本全勝

3月1日の日経新聞、エコノミスト誌の転載「米1.9兆ドル対策、州支出は放漫」が興味深かったです。国から地方への交付金が、どのように使われるかについてです。米国救済計画法(ARPA)です。

・・・2021年3月に成立したARPAに基づく経済対策は総額1.9兆ドル(米国の国内総生産=GDP=の9%に相当)規模に上る。前提には、州政府と連邦政府が深刻な財務難に陥っているとの判断もあった。だが実際には、同法の発効前から税収は急速に回復していた。来年度予算案の作成に取りかかっている知事や州議会議員らは、良くも悪くも独創的な方法で支給された資金を使おうとしている。
資金の一部は賢明な投資に振り向けられ、何年も恩恵が見込める。一方で、その多くは長期的にコストが発生する大規模な新インフラ建設計画や社会プログラムに投じられている。潤沢な資金を貪る知事たちは民主党・共和党を問わず、政治的な上昇機運を享受している。だが、資金はいずれ底を突く。高水準の州財政は長続きしない。

州の一般財源(その大部分が税収)はパンデミック当初こそ急減したが、現在はあふれ返っている。過去最大の財政黒字を計上する州も多い。ARPAで配分される連邦政府の資金は州・地方政府への直接支援に3500億ドル、医療インフラ、学校、交通機関への支援が3000億ドル超に及び、州政府に前例のない規模の財源を与えた。
ARPAの資金は、26年までに消化しなければ全額を失う。予算分析のアナリストの間では、その時点で歳入がパンデミック前の趨勢に回復しているとの見方が多い。ARPAは資金使途に一定のルールを定めているが、州政府は自身が適切と判断した用途に巧みに資金を配分している。

賢明な投資から見てみよう。ほとんどの州は万一の場合に備え、資金を予備費に回している。各州の予備費が歳出に占める比率の中央値は、過去30年間で最高に達した。新型コロナ禍で底を突いた失業保険基金は補充された。ただし、州政府は今後、失業保険基金に充当された連邦資金の中から800億ドル以上を支出することになっている。
これらの賢明な支出は、州政府が次の困難を乗り切る力となる。また、長期的なリターンが期待できる単発投資に資金を投じる州も多い。ほとんどの州は修理・修繕、環境汚染対策、旧式コンピューターの更新など積み残されていた投資(総額8730億ドル)を実行するためにARPAの資金を使っている。ARPAの大盤振る舞いは、パンデミックという激変期のさなかに公的医療制度や教育の強化にも役立っている・・・
・・・一方で、多くの州政府が乗り出しているインフラ投資計画は玉石混交だ。ARPAの管理に関する財務省の規定では、各州が投資できるインフラは高速インターネット、下水道、水道の3種類に限られている。各州は勢いこんで高速インターネットに資金を配分し、推定76億ドルがすでに投じられている。
だが、ワシントンに本拠を置くブルッキングス研究所のアディー・トメア氏は、こうした予算の使い道で経験のある州はほとんどないと警鐘を鳴らしている。22年は1.2兆ドル規模の「インフラ投資法」に基づく資金配分が始まるため、インフラ投資はさらに底上げされることになり、大部分が高速インターネット網への投資に向かう。
しかし実際には、州議会議員の多くは、たとえいくら悪い政策でも、「歳入補塡」の資金を使えるようになったことで肝煎りの案件を優先的に支援できるようになった・・・

住みよい町を続ける

2022年3月1日   岡本全勝

2月19日の日経新聞に、「住まいのまちなみコンクール」という全面広告が出ていました。受賞したのは、福島県いわき市の葉山自治会です。「住まいの街並み」と聞くと、きれいな街並みの風景を想像しますが、地区や事業者ではなく、自治会が表彰されています。

住まいのまちなみコンクール」のホームページによると、「このコンクールは、地域の特性を活かし、魅力的な住まいのまちなみを育む維持管理、運営などの活動に実績を上げている住民組織をまちづくりのモデルとして表彰し、支援します」とあります。
かつては、新しい住宅地を創り出す事業者(住宅地の生みの親)を表彰するものだったそうですが、住み継ぐことができるまちなみをいかに維持管理、運営していくかを主眼とした、育ての親である住民組織を対象にするようになったそうです。

モノを作ればよい時代から、運営を続けていく時代になりました。住みやすさを維持するには、継続的な努力が必要です。それも、建設業者に作ってもらってお金で買うことができず、住民が自分たちで続ける必要があるのです。
これも、モノからコト(関係)への変化の一つでしょう。さらにその関係は、継続することが必要です。モノなら作れば完成、買えばすむですが。

母子手帳の効果

2022年2月17日   岡本全勝

日経新聞の医療健康面、毎週火曜日に、板東あけみ・国際母子手帳委員会事務局長が、母子手帳について連載しておられます。2月1日の第1回は「日本生まれの母子手帳」でした。
母子手帳が日本で発明され、海外にも広がっていることは有名です。ここでは、学生たちが自分の母子手帳を読み返す効果が書かれています。

大学の授業の際に、自分自身の母子手帳を持参してもらうのだそうです。自分の母子手帳をじっくり見るのは、多くの学生にとって初めてです。
学生の一番目を引く場所は、余白に書かれている記述だそうです。初めて寝返りができた、離乳食が進まないなど、何気ない喜びや悩みが書かれていて、自分が大事に育てられてきたことを実感します。
それが、自己肯定感につながっているようです。

「国難災害と緊急消防援助隊 」

2022年2月16日   岡本全勝

室田哲男著『国難災害と緊急消防援助隊 (緊急消防援助隊の災害対応力の強化に向けて) 』(2022年、近代消防社)を紹介します。

警察(都道府県)や消防(基本的に市町村)は自治体の業務であり、国が運営している自衛隊とは、国全体で見た場合に運用の形が違います。現場に近い方が、より密着した活動ができるのですが、大規模災害などに出動する場合は、自衛隊は大臣の命令でできますが、消防や警察は他団体への応援になります。阪神・淡路大震災の際にこの問題が認識され、より効率的な活動ができるように改革されてきました。

この本は、「大規模災害時に全国から被災現場に駆け付け救助活動を展開する緊急消防援助隊の仕組や実態、課題について、体系的に解説した唯一の書」です。
国全体で対応しなければならない、しかし実行は自治体が担う場合は、いろいろな場合があります。社会福祉、教育などです。平時では議論する時間があるのですが、緊急時は対応が急がれます。最近では、新型コロナ感染症対策で「緊急事態における国・地方関係の在り方」が議論になっています。緊急消防援助隊の指揮・調整は、その参考になります。

ワクチン接種、自治体の悩み

2022年1月29日   岡本全勝

1月25日の朝日新聞オピニオン欄「新型コロナ 3回目接種うまくいく?」、岩瀬均・東京都墨田区新型コロナワクチン調整担当次長の発言から。

――今回の追加接種で何か問題は起きていますか。
「政府は昨年11月まで『2回目接種8カ月後を絶対守れ』と言っていたのが、12月の首相の所信表明演説で『8カ月を待たずに、できる限り前倒しする』となり、その後も『さらに前倒しを』と五月雨式に変更を打ち出してきました」
「ワクチン入手の見通しを立てるのが難しいのでしょうが、あまりに激しい変更は困ります。国は変更したら新聞に載せて終わりでも、自治体は住民に周知しなければなりません。高齢者は区報で情報を得る人が多い。ころころ変わると掲載が間に合いません。命にかかわる情報は公平に届けなければなりませんし、追加接種の意義を説いたり交差接種への疑問に答えたりする必要もあります」
「4月以降、ワクチンが実際に来るかも心配です。もう少し計画的に進めていただきたいですね」

――さかのぼりますが、1、2回目の接種はどうでしたか。
「墨田区は全庁応援を早期に始め、私も一昨年12月に選挙管理委員会事務局長から福祉保健部に戻りました。以前担当していた医師会との連携を進め、集団接種の接種券送付や会場設営に選管ノウハウを応用してくれということで、選管職員も連れて行きました」

――墨田区で接種が順調だった要因は?
「医師会が一つで連携がうまくいきました。集団接種のシミュレーションを繰り返し、全庁から会場に派遣する人数や1日に接種できる人数を綿密に試算して、それに基づくワクチン数を都に求め、確保できました。全庁応援は大変でしたが、ワクチンはワクチンの部署に任せておけではなく、介護保険課や障害者福祉課といった部署が、それぞれの担当する住民の問題と捉えて積極的に動くようになる効果もありました」