カテゴリーアーカイブ:著作

市町村アカデミー機関誌2026年春号

2026年4月12日   岡本全勝

市町村アカデミー機関誌「アカデミア」2026年春号が発行されました。拙稿、連載「これからの時代に求められる自治体職員像」第4回「あなたの悩みは何か─若手職員の心構え」が載っています。今回は、若手職員向けです。

職場では、いろいろな悩みや迷いが出ます。それをどのように乗り越えていくか。そこに、仕事が楽しくなるか、嫌になるかの違いが出てきます。そして、仕事ができる職員と、そうでない職員の違いが出てきます。
職場での悩みは、「仕事について」「人間関係」「将来の見通し」に分類できます。その対処方針を説明しました。
どの悩みについても一番の薬は、助言をくれそうな人に相談することです。上司には聞きにくいこともあるでしょう。そのようなときに相談できる先輩を持っておくことが重要です。

第3回「職場を支えているという自覚-中堅職員の役割
第2回「管理職の役割-はまるな四つの落とし穴
第1回「これからの自治体職員像ーあなたに求められていること

連載「公共を創る」第255回

2026年4月9日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第255回「これまでの議論ー成熟社会に対応した見方への転換」が発行されました。前回から、これまでの議論を整理しています。

連載第2章では、公私二元論は多くの弱者が見えなくなっていることを指摘しました。
私が社会の陰に隠れていた弱者たちに気付かされ、その人たちに対する政府の役割を考え始めたのは、第1次安倍晋三内閣で再チャレンジ政策を担当した時です。再チャレンジ政策では、次のような境遇にある人たちを支援の対象としました。
一つは、長期不況による就職難に遭遇し、経済的に困窮している人たちです。フリーターやニート、非正規労働者です。彼らは自由な社会で自らの判断で選んだ人だといわれていたのですが、そうではなかったのです。もう一つは、以前から機会の均等に恵まれなかった人たちです。子育て女性、障害者、母子家庭の子どもなどです。失業者や母子家庭について、政府はすでに支援の制度をつくっています。しかし必要になったのは、それらの制度の拡充でなく、「再チャレンジ政策」という新しい施策です
私のもう一つの体験は、「年越し派遣村事件」です。当時、多くの人が「行政は、経済発展と国民の幸福を推進するという役割を成し遂げたようだ」と考えていました。ところが、長期停滞が格差や不安を生み、他方で経済成長期にもいろんな問題が坂の下の陰に隠れていたことが見えてきたのです。

私は大学で近代立憲主義と所有権や自由権の考えを学び、労働法制や社会保障制度がその部分的修正であることも学びました。そして日本国憲法が健康で文化的な生存権を保障していることも理解していました。近代思想のそこまでの流れは頭にあったのですが、社会保障制度を完備したので、社会で起きているさまざまな問題は裁判所で争われることであって、自分の所管する事務に直接関わってくるものであるかについては、認識できていませんでした。
しかし、再チャレンジ政策に携わり、「弱者」はもっと多様に存在することを知りました。大震災からの復興では、政府による民間企業や私生活への適切な介入が必要であることを実感しました。それらの政策は、これまでの行政の政策の延長で収まらないことであり、さらに広く見れば近代立憲主義の公私の区別の考え方などにも限界があると思えるようになりました。

第2章で提案したもう一つの社会の見方の転換は、施設やサービスだけでなく人や社会が持っている文化や気風の重要性を認識することです。これまでの行政は、公共施設(施設資本)とサービス提供(制度資本)の充実と、自然資本の保護に力を入れてきました。しかし、私たちの暮らしが安全で豊かなものになっているのは、それだけではなく、関係資本と文化資本が充実しているからなのです。
関係資本と文化資本の重要性を指摘したのは、それらが良い結果だけではなく、幾つかの社会の問題も生んでいるのではないかと気が付いたからです。

『地方公務員月報』3月号に寄稿しました

2026年4月3日   岡本全勝

地方公務員月報』3月号に、拙稿「働き方が変える「この国のかたち」」が載りました。この雑誌は、総務省公務員部公務員課が編集していています。省庁が関与している出版物としては珍しいでしょう。

時事通信社の専門誌『地方行政』に、「公共を創るー新たな行政の役割」を連載しています。私の問題意識は、私が採用された頃「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた日本経済がこの30年の間に地位を落としたこと、また世界一とも評された官僚組織の評価が低下したことです。
なぜ、そうなったか。それは、日本の経済や暮らしが大きく変化したのに、社会の仕組みと国民の意識が追いついていないこと、そして何より官僚と行政がそれに先回りして対処できていないということです。経済発展期にできあがった社会の仕組みが、成熟社会になった現在の日本には適合しなくなり、「この国のかたち」を、成熟期のものに転換している途中なのです。
その象徴的な場面が、働き方です。そこで、私が国家公務員になってから約半世紀、働き方がどのように変わったかを、体験に基づいて整理してみました。職員研修で述べていることなども、盛り込みました。若い人が読むと、理解できなかったり、笑うかもしれません。

見出し(目次)を並べておきます。
長時間労働を自慢した。偏った生活。「男女共同参画」がやってきた。少子化の原因。不満な従業員。職場管理をしてこなかった。人事政策がなかった。管理職を育ててこなかった。管理職は別に育てる。日本的雇用慣行の終わり。やる気と努力が責任と処遇に反映される仕組みへ。

この間の変化とともに、人事政策関係者に苦言を呈しました。拙著『明るい公務員講座』3部作が、結構売れています。それはうれしいのですが、そもそも人事の専門家でない私が書いた本が売れること、そして人事課にそのような本を書く人がいないことが問題なのでしょう。また、管理職研修の講師に呼ばれることが増えたのですが、主催者が一様に言う悩みは、「管理職研修の定番がない。講師もいない」です。

地方公務員の環境の変化と在り方に関しては、過去に次のような文章も書きました。今回はそれらの総集編でもあります。
「不思議な公務員の世界ーガラパゴスゾウガメは生き残れるか」『地方自治』2008年5月号(ぎょうせい)
「安心国家での地方公務員の役割」『地方公務員月報』2011年4月号(総務省自治行政局公務員課)

連載「公共を創る」第254回

2026年4月2日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第254回「これまでの議論ー大震災の復興から見えた論点と方向性」が発行されました。今回から、「第5章 社会は創るもの」に入ります。

2019年4月から250回あまり続けてきたこの連載ですが、一通りのことを述べたので、いよいよまとめに入ります。連載の表題は「公共を創るー新たな行政の役割」です。その趣旨を第1回で書きました。
・・・なぜ今、公共を考えるのか。
それは、これからの行政を考えるには、これまでの行政の範囲を超えて、より広い視野で捉えなければならないからです。
日本の行政は、豊かさという目標を達成しました。他方で、私たちの暮らしとそれを支えている社会が、大きく変化しています。住みよい社会をつくるには、広く公共を考え、その中での行政が果たすべき役割を考える必要があるのです。
そこで、公共とは何か、どのように変化しているか、そしてこれからどのように変えていくべきか。それを考えたいのです・・・
この7年間、社会ではいろいろなことが起こり、私も書いているうちにいろいろなことに気付きましたが、この問題意識は改める必要はなさそうです。

連載は、「第1章 大震災の復興で考えたこと」から始めました。それは、東日本大震災の復興で私が体験し考えたことが、公共の変化を考える出発点だったからです。
それまでの災害では、政府や地方自治体の役割は、避難者の生活支援や仮設住宅の提供などをする(応急対策)ほかには、公共インフラや公共施設を復旧すること(災害復旧)でした。住宅の再建や事業の再開は、個人の責任でした。ところが、東日本大震災では、公共インフラなどを復旧しても、まちのにぎわいは戻りませんでした。
一つには、人々の暮らしには、商業などのサービス提供と、働く場が必要だということです。それらは民間の役割と考えられてきたのですが、過疎と高齢化の進んだ地域では、政府が支援しなければ再開されませんでした。もう一つは、人と人とのつながりの重要性です。家族をなくした人、ご近所付き合いが絶たれた暮らしは、孤独と孤立を生みました。それを防ぎ緩和するために、政府は乗り出しました。
これらは、従来の公私二元論、すなわち、政府(公)は(国力増進のための産業振興や社会の安全と安定のための規制を除き)民間企業の活動(私)には介入しない、政府は(紛争が起きた際の解決のための民事裁判を除き)個人の生活(私)に関与しないという原則では、整理しきれない活動でした。しかし、現実に問題が起こっており、誰かが対処しなければなりません。住民や非営利団体(NPO)の声にも押されて、少しずつ原則を破って仕事を広げていきました。

「第2章 暮らしを支える社会の要素」では、第1章での議論を踏まえて、従来の社会の見方を変えることを提案しました。その見方を変える一つは、公私二元論から官共業三元論への転換です。私は、大震災からの復興での経験で、NPOやコミュニティーなど非営利活動の存在と重要性に気がつきました。また公私二元論は、個人は自立し、互いに対等な関係に立つという前提で、いくつもの「弱者」を隠していました。

連載「公共を創る」目次11

2026年3月27日   岡本全勝

目次10」から続く。「全体の構成」「執筆の趣旨」『地方行政』「日誌のページへ

第5章 社会は創るもの
1 これまでの議論
4月2日 254これまでの議論ー大震災の復興から見えた論点と方向性
4月9日 255これまでの議論ー成熟社会に対応した見方への転換
4月16日 256これまでの議論ー社会・経済システムの大転換を成し遂げるには
5月7日 257これまでの議論ー日本社会の戦後の変化
5月14日 258これまでの議論ー戦後経済の成長と停滞
5月21日 259これまでの議論ー成熟期における日本の変化
6月11日 260これまでの議論ー平成の変化─ICT、家族形態、男女共同参画
6月18日 261これまでの議論ー男女共同参画の進展に伴う変化
6月25日 262これまでの議論ー平成における地域の変化
7月2日 263これまでの議論ー平成の「小さな政府」志向
7月9日 264これまでの議論ー成熟社会での行政の難しさ
7月16日 265これまでの議論ー成熟社会での不安
8月6日 266これまでの議論ー近年におけるリスクの変化
8月20日 267これまでの議論ー新しいリスクへの対応を
8月27日 268これまでの議論ー人間らしい生き方とは
9月3日 269これまでの議論ー再チャレンジ政策とこれからの行政
9月17日 270これまでの議論ー制度ではなく課題の所管を
9月24日 271これまでの議論ー「政府・市場・社会」の三元論
10月1日 272これまでの議論ーサービス提供での三元論
10月8日 273これまでの議論ー
10月15日 274これまでの議論ー
11月5日 275これまでの議論ー