カテゴリーアーカイブ:社会の見方

子どもの花粉症

2025年3月6日   岡本全勝

2月25日の日経新聞夕刊に「子供もツラい花粉症 10代の5割発症、無呼吸症候群リスク」が載っていました。

・・・今年も花粉症の季節がやってきた。つらいのは大人だけではない。最近の調査によると、10代の半数がスギ花粉症にかかっている。鼻詰まりや目のかゆみで、勉強にも支障が出かねない。子どもの花粉症の予防法や治療法について、耳鼻咽喉科医で日本医科大学大学院教授の大久保公裕さんの助言を紹介する。

子どもの花粉症はスギ花粉によるものが大半だ。全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象としたアンケート結果によると、5〜9歳でスギ花粉症にかかっている割合は1998年に7.2%だったが、2019年には30.1%を占めた。
全世代で1番多かったのは10〜19歳。98年の19.7%から19年には49.5%に増えた。
ロート製薬が24年に実施した調査では、小中学生の48%が花粉症の症状を感じていた。発症年齢は平均で6.5歳だった。

スギ花粉症はかつて成人が発症するものとされていたが、今では年代を問わない病気となっている。子どもの頃から適切な予防と治療が必要だ。
症状は大人と同じように、鼻水や鼻詰まり、くしゃみなどがみられる。花粉自体に害があるわけではなく、体の免疫が花粉に過剰反応することで、こうした症状を引き起こす。
鼻で呼吸しづらくなり、夜熟睡できなくなる子どももいる。鼻呼吸は大人より重要で、詰まっていると睡眠時無呼吸症候群になってしまう恐れもある。睡眠不足になって学校で勉強に集中できず、授業中に寝てしまう子どももいる。

花粉症の子どもが増えている要因の一つは、子どもたちの体が「自然に負けやすくなっている」ことだ。
家の中でテレビゲームやスマートフォンで遊ぶことが増えて、外で土と触れ合ったり、細菌と接触したりする機会が減った。自然の環境に体が慣れておらず、花粉に過剰に反応している可能性がある。
このため、花粉症にかかりにくくする予防策として、普段から外でよく遊ぶようにしてほしい。毎日バランスのよい食事をとり、免疫力を高めておくことも大切だ・・・

フィンランド、危機に備える「幸せの国」

2025年3月2日   岡本全勝

2月12日の日経新聞夕刊、「危機に備える「幸せの国」 ロシアの隣、愛憎相半ば」から。
・・・近く3年となるロシアのウクライナ侵略は隣国の安全保障観にも変化を生んできた。ロシアと隣り合うフィンランドでは危機に備える意識が高まり、国境沿いで不法移民を防ぐフェンスの建設が進む。身近な脅威と向き合う「幸福度世界一」の国民は何を思うのか。現地で探った・・・

・・・とはいえ現実に迫る脅威は国民の自衛意識を高めている。24年12月末にエストニアとの間で起きた海底ケーブル破損のように、非軍事手段を組み合わせたロシアの「ハイブリッド攻撃」と疑われる事案も相次ぐ。
ケーブル破損に関与した疑いで捜査中のタンカーが停泊する南部ポルボー。地元のニック・ウェンストロムさん(34)はロシアによる侵攻の可能性を念頭に「覚悟はできている」と国を守る決意を語る。

忍び寄る危機と裏腹に、国連の世界幸福度ランキングで7年続けて首位に立つフィンランド。ウェンストロムさんに理由を聞くとこんな答えが返ってきた。
「フィンランド人は他人を気にせず人生を好きに生きるからではないか。でも……」。一呼吸置いて続けた。「誰かがいじめを始めたら団結して助け合うメンタリティーを持っている」

こうした精神性は過去に侵略を受けながらも独立を貫いた歴史に根ざす。第1次世界大戦中のロシア革命を契機に独立を果たしたフィンランドは、第2次世界大戦中のソ連との交戦に耐えて併合や衛星国の道を逃れた。
22年2月のウクライナ侵略を機に国防意識はさらに高まった。北大西洋条約機構(NATO)加盟の是非を問う民間の世論調査では同年に賛成が7割を超え、侵略前の2割台から急上昇。軍事的中立を転換し23年4月に加盟した。
内務省で救助業務を担うミッコ・ヒルトゥネン氏は「第2次大戦以来、多くの人は常に戦争の可能性があると考えている」と説く。同省は24年11月に「危機への備えガイド」を公表し、水や食料の備蓄などを国民に周知した。

「将来が不透明な中で危機に備えるのは保険のようなもので安心感がある」。1月中旬、ヘルシンキで4歳の息子と避難シェルター機能をもつ地下スポーツ施設へ来たアンナ・インゲットさん(36)は自国の備えを評価する。
記者はこの一言で台湾有事に巻き込まれるリスクのある日本最西端の沖縄県・与那国島の住民の言葉を思い出した。22年8月に中国軍が演習で近隣海域へミサイルを撃った際、取材した島民は「いざ戦争になったら逃げ場がなく不安に思う」と口にした。
安心と不安――。その差は準備の違いが生む。
フィンランドでは1200平方メートル以上の建物にシェルターの設置を義務付け、全国5万カ所超に人口の9割近い480万人を収容できる。普段は民間業者がジムや駐車場などとして運営し、有事にはベッドやトイレを設置して72時間以内に避難所にする・・・

匿名投稿の危なさ

2025年3月1日   岡本全勝

匿名の発信が、あふれています。すべてとは言いませんが、無責任、読むにたえないものも多いです。私はソーシャルメディア(SNS)を使いません。
アマゾンで本を買うときに「評価」の欄を見ることがあります。低い評価(星が一つとか)は気になるので、見てしまいます。正当な意見ではなく、感情にまかせたような罵詈雑言もあります。「実名ならこんなことは書かないよな」と思います。

私のホームページは、このように実名です。発言には責任を持たなければならないと考えているからです。
それに対し、「みんなが、あなたのように強くはないのです」と言う人もいます。いえ、実名なら言えないような内容は、書かなければよいのです。そのような内容なら、知人と喫茶店か飲み屋で他人に聞かれないようにして、思いっきりしゃべってください。
読んだ相手がどのような気持ちになるか。それを考えない発言は、危ないです。批判をするなとは言いません。するにも、礼儀があるということです。あなたが逆の立場になった場合を考えてください。

2月14日の読売新聞に「SNS投稿 実名?匿名?」が載っていました。
・・・SNSは情報の発信・収集の手段として欠かせないツールとなっています。実名でも匿名でも利用できますが、匿名には「言いたいことが言える」といった利点がある一方、「実名にして発言に責任を持つべきだ」との声も上がります。あなたはどう考えますか?・・・
双方の言い分は、記事を読んでください。

日本独自のメンタルクリニック

2025年2月27日   岡本全勝

東京大学出版会の宣伝誌『UP』2月号に、下山晴彦・東大名誉教授の「”変なタイトル”の本の出版と、その背景―「心理職」国家資格化の顛末」が載っています。心理職が、相応の評価と待遇を受けていないことを紹介しておられます。

・・・皆様は、1990年代以降、都市部を中心に「メンタルクリニック」(精神科や心療内科)が急増していることにお気づきだろうか。「メンタルクリニック」は和製英語であり、精神科診療所としては世界でも類を見ない形態の、日本独特の医療機関である。心身の不調から日常的な悩みまで「メンタル」を巡るさまざまな問題が持ち込まれ、診断や治療がなされ、患者はメンタルクリニックへの接近と離反を繰り返す。
米国では、心の悩みの相談に行く専門機関は、通常、専門の「サイコロジスト」である心理職のオフィスである。それに対して日本では、「生きづらさ」を抱えた人びとが、コンビニのように街角にある「メンタルクリニック」、つまり医療機関に吸い寄せられていく。そのような人びとの中には、薬物療法が必要でない「悩みごと」を持った人たちもいる。そのような人にも診断名がつき、「患者」となり、薬物療法がされることもある。「メンタルクリニック」に勤務する心理職は、”医師の指示の下で”そのような「患者」を担当になることが多い。

全てがそうというわけではないが、多くの「メンタルクリニック」では、「生きづらさ」や「悩みごと」を病気(疾患)として治療する「医療化」が起きている。これは、日々の生活の中で生じる苦悩や困り事といった個人的問題に対して誰が相談に乗るのか、つまりどのような職業が管轄するかといういわば"管轄権”の問題と関わっている。
19世紀半ばまでは聖職者が”管轄権”を有していたが、近代化とともに相談による需要が高まったことで聖職者に代わる職業が求められることなった。米国などの欧米諸国では、心理的苦悩の相談を担当する管轄権を有しているのが心理職である。それに対して日本ではそれが「メンタルクリニック」、つまり医療になっているということである。日本では、他国とことなり、苦悩についての相談までもが「医療職」が管轄権を持つようになっている・・・

マイケル・サンデル教授「働く尊厳、取り戻すために」2

2025年2月26日   岡本全勝

マイケル・サンデル教授「働く尊厳、取り戻すために」」の続きです。

―ただバイデン政権は、学位のない人にも雇用を生むインフラへの投資など、ニューディール以来と言われる野心的プロジェクトを手がけたはずです。
「確かに新自由主義的路線から脱却しようとしたことは正しい。あまりにも長く放置された公共インフラへの投資やグリーン経済化で政府に積極的な役割を与え、独占禁止法を厳格に執行してハイテク企業への権力の集中に対抗しました。しかし、こうした投資は恩恵が行き渡るのに時間がかかり、彼は政治的利益を得られませんでした」

「新たな統治の哲学を示せなかったことも大きい。ニューディール時代、当時のルーズベルト大統領は公共投資や社会保障、労働組合の支援など多くのプログラムを手がけました。それがまったく新しい経済の姿なのだと国民にわかりやすく、感動的な言葉で語りました。だから今でも私たちはニューディールを覚えています」
「しかしバイデンは、自身の政策が象徴する大きな意味、つまり経済における政府の役割の転換について、説得力あるメッセージを打ち出せなかった。それがいかに労働の尊厳を取り戻すことにつながるかも説明できませんでした。彼の強みは議会との交渉にあり、レトリックにはたけていない大統領でした」

―私たちは「消費者」のアイデンティティーにとらわれすぎていた、と指摘しています。
「グローバル化は衣料品などの国外生産のコストを下げ、消費者としての米国人を助けました。しかし、その代償として生産者としての米国人に深刻な打撃を与え、中西部各州の工業都市は空洞化しました。こうした激戦州では今回、トランプが全勝しました。消費者としてのアイデンティティーに気をとられすぎた結果、生産者としての米国人を支える政策の重要性が軽視されたのです」

――人々を「生産者」としてとらえ直すことが大事だと。
「良質な雇用を維持するという意味で経済的に重要なだけでなく、労働の尊厳の観点からも、政治哲学上も大切です。自らを消費者とだけ考えていれば、単に安い商品を追い求めるだけになってしまう」
「しかし、自らを生産者と位置づけるとき、自分の仕事や育んでいる家族、奉仕する地域社会を通じて、私たちは共同体の『共通善』に貢献する役割を担っていると気づきます。それが国づくりにもつながるのならば、私たちは単なる消費者ではなく、政治的な発言権を持つ『市民』なのだと考えられるようになります。それは、政治的な無力感の克服にもつながるはずです」