カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ジャーナリズムの現状を憂える、2

2014年9月2日   岡本全勝

大鹿靖明編著『ジャーナリズムの現場から』の続きです。「あとがき」から(p335~)
・・新聞や放送のかなり多くのニュースは当局発表に依存している。朝日、毎日、読売の3大紙の朝刊に占める発表モノの記事の面積比率は49~55%を占め、発表モノに少し独自の味付けをした記事を入れると60%にもなる。解説記事などを含めて発表モノに端を発してつくられた記事まで含めると、紙面の面積における発表依存度はなんと80%に達する。
しかも新聞記者が特ダネと称する記事の少なからずは、実は当局者(官公庁、捜査機関、大企業)のリークか、少なくとも当局者の意図に沿う報道にすぎない。発表の直前に掲載されることの多いリーク型の特ダネ記事は、読者や視聴者の視点に立てば、発表モノと何ら変わらない。こうした記者クラブ型とも呼べる報道は、常に当局者に依存し、発表主体である当局の動きに受動的になりがちだ。クォリティーペーパーといわれることがある日経新聞だが、海外メディアからは「大きな『企業広報掲示板』」「大量のプレスリリースの要点をまとめてさばいているだけ」と辛辣に批評されてもいる。
それを脱するには、発表主体に距離を置き、報道の主導権を自分が担えばいい。状況に身を任せず、自分が「企画力」を身につければいいだけのことだ。自身の問題意識や発見したストーリー、あるいは切り口を起点にする・・

同感です。さらに、この業界では、「抜いた」「抜かれた」という競争があります。ほとんどは、当局者の発表を、どの社が先に書くかです。翌日や数日後に公表されるので、それを待てばよい話です。例えば幹部人事とか。1日早く知っても、1日遅れても、社会には何の影響もありません。
しかも、ある社が先に書いた案件は、後追いをする他社の記事(追っかけ)では、小さな扱いになります。その際に、記者が当局者に求めるのは、「何か、付け加えることはありませんか」です。すると、その部分が大きく書かれます。
非公開情報を「抜く」ことは、これとは異なります。それについては「情報をすっぱ抜く」(2012年5月26日)に書いたことがあります。当局者がいずれ発表する内容を早く書くのか、当局者が知られたくない内容を記事にするのかでは、大違いです。そして前者にあっては、当局者のコントロールの下に(リークしてもらって)公表より早く書く場合と、別のところから資料を入手して公表より早く書く場合があります。

ジャーナリズムの現状を憂える

2014年9月1日   岡本全勝

大鹿靖明編著『ジャーナリズムの現場から』(2014年、講談社現代新書)を紹介します。ジャーナリスト10人へのインタビューをまとめたものです。現在の日本のジャーナリスト、ジャーナリズムに対する、厳しい批判の書になっています。内容は本を読んでいただくとして、一部を紹介します。
「はじめに」p3~
・・本書の編著を思い立った直接のきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く東京電力の福島第一原発爆発事故の取材を通じて感じた今の報道のありようだった。
あのとき記者会見場は、まるでソロバン教室のようだった。つめかけた記者たちは一斉に手持ちのパソコン画面に目を落とし、猛スピードでキーボードをたたいていく。未曾有の大地震が起き、原発が相次いで爆発したというのに、レクチャー担当者のほうに目をむけたがらない。バチバチバチバチ。会見場は一斉にキーをたたく音が反響する。
戦後最悪の災害と人類史上に残る惨事がひき起こされたというのに、記者会見ではこんな光景が日常的に繰り広げられた。東電本店で、原子力安全・保安院で、経済産業省で、そして官邸で。そのあまりに異様な光景に驚いた。メモ打ちのためのキーボードに神経を集中すれば、肝心の質問がおろそかになるのではないか、と思ったからだった。
みなICレコーダーを机の上におき一部始終を録音していた。ならば何もタイピストの真似事なぞ、する必要はないはずだった。どの新聞社も放送局も一社あたり数人の記者が出席しているので、なおのこと、そろいもそろってパソコン打ちをする必要はない・・。
これは、私も気にしていることです。かつて「記者会見、記者の役割」として、質問される側からの不満を書いたことがあります(2012年3月31日)。読んでいただくと、私の主張とそっくりなのがわかるでしょう。たぶん、多くの関係者が、同じ考えにいると思います。

世界一しか売らない会社、批判だけでは許されない

2014年9月1日   岡本全勝

朝日新聞9月1日の夕刊連載「へえな会社」は、「世界一しか売りません」という医療器具製造のマニー(従業員数370人)でした。
年に2度、「世界一か否か会議」を開き、競合他社の製品に抜かれ、今後も抜き返せないと判断されたら、販売中止になるのだそうです。眼科ナイフの世界シェアは30%、微細な血管を縫合する0.14ミリ以下の手術針はこの会社しか作ることができないのだそうです。
高井寿秀社長のつぶやきが載っています。
・・製造技術は日進月歩。技術革新を続けないと、すぐに遅れを取ります。だからこそ「世界一か否か会議」を開いているのに、競合他社より劣る点だけを指摘して改善点に触れない若手がいて驚きます。本末転倒です。そのときはすかさず、執行役や部長から叱責の声が飛びます・・

差別的行為への私人による制裁

2014年8月30日   岡本全勝

サッカー、Jリーグの試合で、横浜F・マリノスのサポーターが相手の外国人選手にバナナを振りかざす差別的な挑発行為を行った問題で、Jリーグは、F・マリノスを制裁金500万円などの処分とすると発表しました(NHKニュース)。F・マリノスは、行為者に対して無期限入場禁止処分を課しました。
Jリーグの発表には、次のように書かれています。
・・横浜FMサポーターが試合中に相手チームの選手に対しバナナを掲げ、振った挑発行為は、国際社会では人種差別を象徴する許されがたい行為であり、実行者はそのことを認識していた。本行為は人種差別的行為といえる。
横浜FMは当該試合が神奈川ダービーであることから事前にサポータートラブルの発生を想定し、ソーシャルメディアを中心とする監視体制を強化しており、本件を素早く把握するとともに、発生後は速やかに実行者を特定し、事実関係を確認した上で無期限入場禁止処分を科し発表した。また川崎Fに対しても速やかに謝罪を行った。これらにより、横浜FMの当該試合に対する監視体制や本件発生後の対応は適切であったといえる。しかしながら、クラブは人種差別的行為の発生を予防する高度な責務を負うところ、クラブのファン・サポーターへの啓発活動が十分であったとは言えず、たとえ本件が当該サポーターの単独行為であり、クラブとして予見することが困難であったとしても、啓発をつくして本件の発生を予防すべき義務をつくさなかった責任はクラブにある・・
これを読んで、人権意識の高まりを思うとともに、大学時代に芦部信喜先生の憲法の授業で習った「憲法の第三者効力」「私人間効力」を思い出しました。国家(裁判や行政)でなく、私的な団体による制裁(クラブによるサポーターに対する制裁と、リーグによるクラブに対する制裁)です。

廃棄物リサイクル、ものを捨てるには金がかかる

2014年8月28日   岡本全勝

8月26日の読売新聞解説欄「論点」は、細田衛士・慶應大学教授の「廃棄物リサイクル。資源回収、品目横断的に」でした。
先生の解説によると、日本には容器包装・家電製品・自動車など6つの品目別リサイクル法があります。これらの法律のおかげで、廃棄物の発生や排出抑制が進み、埋め立て処分量は10年前に比べて3分の1に減ったのだそうです。大きな成果ですね。
しかしまだ、課題はあります。資源となるものを、海外に流出させているのだそうです。詳しくは、本文をお読みください。詳しい数字は、「環境省白書(ホームページ)」をご覧ください。
商品やサービスの製造、販売、消費については、売り手の宣伝も大きく、経済学の教科書も取り上げます。しかし、10トンのものが売れれば、10トンの廃棄物が出ます。でなければ、個人の身体も、家も、町も、膨張するばかりです(笑い)。それらの、リサイクル、廃棄は、生産と販売と同じくらい重要なのです。「ものを買うのには金を払うけど、捨てるのはただにしたい」は、通用しません。
細田先生の『グッズとバッズの経済学』(第2版、2012年、東洋経済新報社)が、良い教科書です。我が家の体験談は、2012年12月23日。最近は、テレビを有料で引き取ってもらいました。