カテゴリーアーカイブ:社会の見方

プロテスタンティズム

2017年4月17日   岡本全勝

深井智朗著『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』(2017年、中公新書)が勉強になりました。
ルターが、1517年にキリスト教の宗教改革を始めて、今年で500年です。宗教改革は歴史で習います。この本は、そのプロテスタントの始まりから、その後の社会での位置づけや果たした機能を解説しています。ルターの改革の呼びかけが、政治に利用されたこと、それを受け入れるだけの社会の変化があったこと。
その後のプロテスタントの中で、大きく2つの流れがあること。一つは政治と一体となった支配者の教会(ドイツやイギリス国教会)であり、もう一つは政治とは距離を置く自発的結社としての教会(ピューリタンなど)です。そして、前者は保守としてのプロテスタントに、後者はリベラルとしてのプロテスタントとなります。

そのほかまだまだ、なるほどと思うことが書かれています。プロテスタントと西欧政治の関係、プロテスタントから見た西欧社会の文化人類学ともいうべき分析です。
マックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は有名ですが、それよりはるかに、政治や社会の分析に成功していると思います。しかも、読みやすいです。お勧めです。

企業の従業員によるボランティア活動

2017年4月17日   岡本全勝

「企業ボランティア・アワード」って、ご存じですか。
東京ボランティア・市民活動センターが行っている事業で、「都内の企業で働いている人たちによる非営利団体でのボランティア活動を表彰し、広く社会に広報することによって、企業人のボランティア活動への参加や企業と非営利団体の協働を促進することを目的とした事業」です。このほど、第2回の受賞企業が発表されました。
どのような企業のボランティア活動が受賞したかは、それぞれの紹介を見てください。

ここでは、MS&AD インシュアランス グループ(三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損害保険)の「世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろう」プロジェクトを紹介します。読んでいただくとわかるように、従業員たちが始めた編み物を送る支援は、企業の枠を越えて、編み手のボランティア、その人たちとの連携、輸送など、たくさんの人と企業を巻き込んだ活動になっています。

個人ボランティアでは、限界があります。その人たちをどのように束ねるか。連携や協同が重要です。企業ボランティアは、組織と継続性があるので、期待できますね。

欧米の大手メディアの日本語版ニュースサイト

2017年4月11日   岡本全勝

4月8日の朝日新聞に「日本語サイト、開設続々」という記事が載っていました。
・・・欧米の大手メディアの日本語版ニュースサイトが次々に誕生している。公共放送、経済紙、通信社。米大統領選など世界中が注目する国際ニュースが近年多いことや、東日本大震災の発生が、日本語読者の海外ニュース需要を高めているとの見方もある・・・

日本のニュースなら日本の報道機関の方が充実しているでしょうし、海外ニュースなら通信社の配信か日本人特派員の記事で良さそうなものです。なぜか。
・・・ロイターの下郡さんと、WSJの西山さんは「日本の読者は日本が世界にどう見られているのかをとても気にする」と口をそろえる。11年の東日本大震災と原発事故が閲覧者増の一因になったとも指摘する。下郡さんは「日本メディアが政府の主張をそのまま伝えているのではないかとの不満もあり、海外から福島に入った記者の記事がよく読まれた」と振り返る・・・
・・・BBCの加藤さんは、日本の報道機関との立ち位置の違いを指摘する。「例えば日本のメディアが米国政治を報じる際には、TPPや安保などで日本にどんな影響があるのかが何よりも大事になる。我々は、日本では報道されない情報に価値を見いだしている」
在英ジャーナリストの小林恭子さんは「海外ニュースが日本語でそのまま読めるのがだいご味。学者やビジネスマンの情報収集にも便利だ。日本メディアも、ニュースに多様性を持たせることが求められているのでは」とみる・・・

日本は島国であることとともに、日本語が一番の「非関税障壁」だと私は考えています。商品はその壁を越えますが、報道、教育、研究などは、日本語の壁に守られ「鎖国」「ガラパゴス」状態でも生きてこれました。高等教育を、英米仏以外の自国語でできる国は少ないのです。多くの国で指導者層は英語でニュースを見ています。日本でも、自然科学研究分野は、日本語の壁を越えて海外へ打って出ています。
新聞社、大学、霞ヶ関が、日本語で守られた代表例です。報道で、日本語の壁をこのような形で乗り越えるとは想像していませんでした。

イスラーム

2017年4月9日   岡本全勝

NHKテキスト「宗教の時間 イスラームという生き方」が、勉強になりました。宗教の時間というより、イスラーム世界を知る文化人類学です。心の問題、悩みに答える宗教であるとともに、日常生活を律する生活の指針でもあるのですね。子供を持つことの勧め、利子を取ってはいけないという教え、ラマダン・・・。
他方で、日本やヨーロッパでは宗教・習俗が生活を律していた時代から、近代に入って世俗化が進みました。仏教は殺生を禁じましたが、私たちは、肉を食べています。そのように、近代化とともに、脱宗教・世俗化が進みます。イスラーム世界は、このまま宗教が生活を律するのか、他の世界と同じように世俗化が進むのか。

残業を減らすために日本型働き方を変える

2017年4月6日   岡本全勝

4月4日の日経新聞オピニオン欄「働き方改革 ここが足りない」から。
オリックスCEOの井上亮さん。
・・・私は就職してから40年以上、定時退社を信条としている。顧客との夜の会合などを除けば過去3回しか残業はしていない。残業をしなくて済んだのは、仕事を自分の裁量でコントロールできたからだ。新しい案件を担当するときは最終期限から逆算して、スケジュールを立てる。いつまでに何をするか。結果が伴っていれば自由裁量が許された。もちろん顧客等の要請で急きょ残業をしなくてはならない業務も一般的にはある。ただすべての業務が急に生じるわけではない・・・
・・・グローバル市場で勝ち残るためには、今までのように「会社に労働時間で報います」といった働き方はいらない。高度成長時代は労働時間の長短が企業の競争力に大きく影響したが、今はどれだけ他社にないアイデアを生み出せるかが求められている。それぞれの企業でも創意工夫によって働き方改革を実現できるはずだ・・・

リクルートワークス研究所の石原直子さん。
・・・日本企業の生産性が低い一番の理由は意思決定が遅いことだ。特に部長や本部長といった中間管理職がリスクを取らない構造に問題がある。例えば新しい事業を始めようとするとき、課長クラスは、ありとあらゆるリスクを潰してから部長に上げる。これにかなりの時間を取られる。部長はノーリスクの計画にはんこを押すだけ、というのはよくある風景だ。
現場が半年かけて準備したことが上層部の会議で「やはり実行しない」と決まることもある。この場合、現場は頑張ったけれども成果はゼロだ。いずれも、やるかやらないのかの判断を上の人がリスクを取って最初に決めてくれれば1分ですむ話だったりする。
こうした意思決定の構造を残していては生産性は上がらない。管理職の責任と権限をきちんと定義する必要がある。管理職はリスクをとるからこそ高い給料をもらっているはずだ。責任を分散する体制も意思決定のスピードを落とす。年収2000万円の部長が5人いるより、年収1億円の部長1人がリスクをとって決めた方がいい。イノベーションも生まれやすくなる・・・

残業を減らすためには、旧来の日本型働き方を変える必要があります。原文をお読みください。