カテゴリーアーカイブ:社会の見方

お客さんの要求にどこまで答えるか

2017年5月18日   岡本全勝

5月17日の朝日新聞オピニオン欄、「世の中、便利すぎ?」、古屋一樹さん・セブン―イレブン・ジャパン社長の発言から。
・・・1974年に1号店を東京・豊洲に出して以来、コンビニエンスストア(便利なお店)という名前の通り、店では新しい商品やサービスを次々に加えてきました。
新しいものを始めるときに気をつけることは、二つあります。一つは、お客さまの要望を2歩も3歩も先取りしないことです・・・
・・・もう一つは、店員の負担を大きく増やさずに、全国どのお店でも24時間365日、同一のサービスを提供できるのか、見極めることです。公共料金は、どんな種類もバーコードを2回スキャンするだけで支払えるようにシステムを開発しました。公共料金がコンビニの店頭で払えるのは、おそらく日本だけでしょう。いれたてのコーヒーは、導入までに5年かけました。お客さまが自分でいれてもストレスを感じない方式をつくるのに、試行錯誤しました。
一方で、飛行機のチケットや電車の指定席券の販売は、要望は多いのですが、お断りしています。事故や運行の乱れがあったときに店で対応しきれず、ご迷惑をおかけする恐れがあるためです・・・

製品の新陳代謝

2017年5月16日   岡本全勝

6月16日の日経新聞オピニオン欄、アメリカの3M会長のインゲ・チューリンさんのインタビューから。3Mはアメリカの素材メーカー、ポスト・イットなどが有名です。
・・・3Mの商品は工業用の研磨材から医療材料、「ポスト・イット」のような文房具まで幅広いが、総じて言えば、既存の商品は陳腐化によって毎年4%程度売り上げが逓減していく。その結果、5年経つと2割減る。その穴を埋め、さらに会社全体の売上高を押し上げるには、切れ目なくイノベーションを起こし、製品群の新陳代謝を活発にしないといけない・・・
・・・当社のイノベーションには2種類ある。一つはカスタマー・インスパイアード(顧客触発型)イノベーションと呼んでいる、お客さんと一体になって新しいモノを創る仕組みだ。日本での最近の成果としては、電車の外装を丸ごとラッピングする特殊フィルム素材がある。東京メトロやJR東日本向けに開発した・・・
・・・(もう一つのイノベーションの類型は)社内用語でインサイト・ツー・イノベーション(洞察による革新)と名付けたもので、これは特定顧客向けというより、もっと幅広く新たな市場の創出を狙ったものだ。例えば従来製品に比べて耐久性を4倍に高めた内装用の研磨材や「アイガード」という患者の血液などから医療従事者の目を守る防護具は、日本の建設現場や病院でも広く使われている・・・

西條都夫・編集委員の言葉
・・・近年、経営学で「トランザクティブ・メモリー」という概念が注目されている。企業は膨大なメモリー(記憶=知)を蓄積しているが、それが活発にやりとり(トランザクト)されることで、イノベーションの生産性が上がる、という考え方だ。逆に言えば、せっかくの「知」もたこつぼ的な組織に埋もれたままでは有効に活用されず、宝の持ち腐れに終わる。
優れた文化は一朝一夕には生まれない。3Mは1951年から社内の技術見本市を毎年開き「誰が何に取り組んでいるか」の情報を共有してきた。異分野の技術者が集まるイベントや研究発表会も多く、組織内の「知の巡り」が向上する・・・
全文をお読みください。

企業の社会責任、青柳さんのインタビュー

2017年5月10日   岡本全勝

4月30日の河北新報「トモノミクス」に、青柳光昌さんのインタビューが載っています。
・・・東日本大震災で芽生えた企業の復興CSR(企業の社会的責任)は、熊本地震でどう生かされたのか。日本財団の職員として、二つの大災害で企業と被災地の橋渡し役を務めた社会的投資推進財団(東京)の青柳光昌代表理事に聞いた・・・
・・・初動は東日本大震災に比べ、格段に早かった。災害に対する企業の準備や構えのレベルは上がっている。水や食料、生活必需品を被災者に届けることに議論の余地はない。災害支援はCSRの柱になっている。
問題はその次の復旧、復興期の段階。企業が本業を通し、支援を続けられるかどうかが問われている・・・

戦後日本のイノベーション

2017年5月8日   岡本全勝

発明協会が、「戦後日本のイノベーション100選」を選んでいます。これは、戦後日本で成長を遂げ、我が国産業経済の発展に大きく寄与したイノベーションを選定したものです。
ここでいうイノベーションは、「経済的な活動であって、その新たな創造によって、歴史的社会的に大きな変革をもたらし、その展開が国際的、或いはその可能性を有する事業。その対象は発明に限らず、ビジネスモデルやプロジェクトを含み、またその発明が外来のものであっても、日本で大きく発展したものも含む」です。
上位10をご覧ください。「なるほどねえ」と思う発明が、並んでいます。

私は、戦後日本が世界に貢献した生活での3大発明は、インスタントラーメン、カラオケ、ウオッシュレットだと考えています。3つ選ぶとしたら、皆さんなら、何を選びますか。世界の人の生活を便利に、豊かにしたという視点からです。
日本の伝統文化も重要ですが、それだけでは発展はありません。新しい生活文化に、何を付け加えていくか。科学技術の発明発見と、それを暮らしに応用していくことが求められます。

京都迎賓館2

2017年5月7日   岡本全勝

先日、京都迎賓館の素晴らしさを書きました(5月1日)。西欧の物まねでなく、日本の素晴らしさを外国の人に分かってもらえる点です。これは、建物単体を建設しただけは無理です。

その良さを分かってもらえるだけの、「日本文化への理解」が必要です。判断者は、世界の人たち、特にこれまで「世界標準」をつくってきた西欧の人たちにです。
19世紀には、日本趣味(ジャポニズム)が広がりました。浮世絵や伝統工芸、そして植物です。しかし、「一部の趣味」でしかなかったようです。
日清・日露戦戦争以降、日本が国力をつけ、さらには戦後の経済成長で世界でも日本の位置が認識されました。もっとも、それも「非白人国が、追いついてきた」ということだったでしょう。

他方で、日本料理をはじめとする日本の伝統文化が、理解されるようになりました。フジヤマ・ゲイシャでない、日本の生活文化です。
和食は、フランス料理・ヌーベル・キュイジーヌに大きな影響を与えました。刺身、寿司、天ぷらだけではありません。ナイフとフォークでなく、箸を使って食べる外国人も普通になりました。そして、お酒です。日本酒のおいしさが、分かってもらえるようになりました。
さらに、和風旅館のおもてなしも、理解されるようになりました。ここは、しつらえや料理、そしておもてなしで、日本の生活文化が総合された場です。

建物や道具などいかに立派なものをつくっても、それが単体では、日本文化の理解にはなりません。日本の経済的存在感が、世界の人に「西欧ではない優れた文化」があることを認識してもらえる背景にあります。
そして、和服を洋服に替えましたが、すべてを西洋風に変えるのではなく、日本の伝統文化を守ったことが、世界に紹介することができる、そして誇ることができる生活文化を残したのです。それがなければ、いかに経済力を持っても「エコノミックアニマル」としか思われないでしょう。

2020年東京オリンピック・パラリンピックの公式エンブレムも、和風の良い意匠だと思います。
尊大になってはいけませんが、西欧文化だけが世界標準でないこと、日本文化も良いことを、世界に紹介し続けるべきです。もちろん、他の国にも良い伝統文化があります。