カテゴリーアーカイブ:社会の見方

長寿化によるリスクの変化

2017年7月13日   岡本全勝

7月10日の日経新聞に「長寿化 変わる保険」という記事が載っていました。
・・・今や人生80年とも90年ともいわれる長寿社会となった。それを受け、生命保険各社は来春にも保険料を改める。一定期間内に死亡した際に保険金を支払う定期型の保険料は下がる半面、病気にかかるリスクの高まりを反映して医療保障など生きるための保険料には上昇圧力がかかる。一方、契約者側も生存中のリスクに備える商品に軸足を移し始めている。生保も契約者も保険の損得勘定が問われる・・・
・・・「保険=死亡への備え」とは限らない。長寿化に伴い、契約者側の意識や需要も変化してきている。
生命保険文化センターが男性が加入している死亡保障の平均額を調べたところ、16年は1793万円だった。2382万円だった07年から25%減り、1996年に比べると33%も減った。共働き世帯が増え、少子化もあり、自らの死後に家族に残す保険の必要額は減ってきている。
代わって需要が高まってきているのは、自らの病気やケガへの対処や、それで働けなくなった場合といった「生きている間の備え」だ。

副題には、「死亡リスクより「生きるリスク」」とあります。長寿化は、こんなところにも影響を及ぼすのですね。

企業と行政との協働

2017年7月11日   岡本全勝

復興の過程で、企業の社会貢献が重要であると、指摘しました。拙著『東日本大震災 復興が日本を変える-行政・企業・NPOの未来のかたち』(2016年、ぎょうせい)。慶應大学法学部での公共政策論でも、一つの柱としています。

福島県庁が、意欲的に企業との協働に取り組んでいます。「企業等との包括連携協定」です。リンク先の具体事例をご覧いただくと分かりますが、地産地消、観光、地域の見守り、がん検診推進、森林づくりなど、多岐にわたり、またなるほどと思う事例が並んでいます。ご覧ください。
庁内各課にまたがるもの(企画調整課所管)
それぞれの課の所管分

忖度、ドイツにもあった文化

2017年7月11日   岡本全勝

7月7日朝日新聞オピニオン欄、「暴走する忖度」。政治学者のヴィルヘルム・フォッセさんの発言から。
・・・ドイツには「フォラウスアイレンダー・ゲホルザム」という言葉があります。忖度と同じように、訳すのは難しいですが、直訳すれば先回りした服従という意味です。なぜ、ホロコーストのような大量虐殺が起きたのかを説明する際によく使われます。
法律や社会のルールを守り、税金を納める。家庭では、よい息子、よい娘で、ほめられたい。周囲に波風を立てないよい隣人で、異議を唱えようとしない態度が、結果として非人道的な悲劇を生む土壌になったのです。
日本の政治と社会の研究を30年以上してきました。日本とドイツは似ています。まじめで時間を守り、先回りして自主的に服従します。ドイツの戦後と日本の戦後もある時期までは非常に似た道をたどったと思います・・・

・・・自信を取り戻しつつあったドイツ人に大きく影響したのが、68年から世界を覆った若者の反乱でした。きっかけは米国でのベトナム反戦運動です。日本でも、日米安保体制に対する反対や大学制度を見直す運動があり、環境運動などその後の市民運動にも様々な影響を与えました。ドイツでは若者たちが、教授や親の世代が戦争中に何をしていたのかを問いただす運動に発展したのが大きな特徴でした・・・
・・・民主的だったワイマール体制がヒトラーの台頭を許してしまったのは、制度の欠陥ではなく、民主的な思考と行動をする市民が足りなかったとの理解が広まったのです。それまで、先回りして服従するのがよい市民だとされてきた考えから、疑問を公的に発する成熟した市民になることが重要だという考えが共有され、意識が変わったのです・・・

原文をお読みください。

アジア通貨危機から20年

2017年7月8日   岡本全勝

1997年にアジア通貨危機が発生してから、20年になります。7月3日の日経新聞が、特集を組んでいました。発端、連鎖と、危機が発生し広がった経緯を紹介するとともに、その際に関係者はどのように対応したか、何が失敗で何を学んだかを、証言の形で紹介しています。

もう20年にもなるのですね。しかし、専門家でないと、これらの全体像や概要を知っている人は少ないでしょう。近過去のことを、このように解説してくれる新聞記事は、ありがたいです。

道路建設・管理と鉄道建設・運営との違い

2017年7月6日   岡本全勝

7月1日の朝日新聞オピニオン欄、宇都宮浄人・関西大学教授の「地方鉄道への投資 道路偏重やめ、地域再生へ」から。
・・・私が今春から在外研究で滞在するオーストリアでは、地方鉄道の積極活用が始まった。オーストリアは北海道と類似点が多い。面積はほぼ同じで大都市も少なく、自家用車の普及で鉄道利用者が減り、地方で廃線が進んだ。ただ、今は州政府が中心となり鉄道に新規投資している。
ではなぜ、欧州先進国は赤字鉄道に新規投資をするのだろう。
日本で鉄道への投資というと、財源が問題になる。鉄道は独立採算が原則で、交通分野の公的補助は道路が主体だからだ。国費だけでも道路は鉄道の10倍以上の予算がある。一方、オーストリアは予算配分の見直しを進め、連邦予算で2000年に道路とほぼ同額だった鉄道予算が、11年には道路の2・5倍になった・・・

・・・ 欧州では、鉄道は収益事業とみなされていない。公的な支えが必要な「社会インフラ」と位置づけられている。さらに重要なことは、過度にクルマに依存した社会が環境悪化など様々な問題を引き起こし、生活の質を低下させ、地域を衰退させるという認識を共有している。EUは01年の交通白書で過度な道路依存から脱し、あらゆる移動手段の「バランス」を取ることを目標に掲げた・・・
・・・新たな財源を求める必要はない。道路に偏った公的資金の配分を若干変えるだけでいい・・・

原文をお読みください。
実は、道路ができただけでは、交通手段にはなりません。車を持っていて運転できないと、意味がありません。子供や高齢者、そして飲んだ後の帰りも、バスがないと移動できないのです。施設設備を造っただけでは、便利でありません。
提供者の視点で見るのと生活者の視点で見るのとでは、違ったものが見えてきます。かつては、不足する鉄道や道路をどのようにして整備するかが、一番の課題でした。しかし、ある程度整備され、他方で利用者の減や維持管理を考える必要がでてきました。すると「道路建設行政」「鉄道建設行政」から、それらを含めた「利用者にとっての便利な移動行政」に転換する必要があります。なお、「鉄道建設行政」は、新幹線を残して、「鉄道管理行政」になっています。