カテゴリーアーカイブ:社会の見方

「なにを考えられるか」問う大学入試

2024年7月23日   岡本全勝

7月16日の日経新聞夕刊、後藤健夫さんの「海外有名大のタフな入試 「なにを考えられるか」問う」から。
・・・『東大生のジレンマ エリートと最高学府の変容』(中村正史著)が出版されて1年がたつ。この本では、東京大の学生の卒業後の進路を取り上げており、起業家が増えていることに注目している。そもそも東京大法学部などは官吏養成のための大学であったが、いまや官僚志望者は激減。外資や起業が増えている。いまの官僚の仕事や報酬は、優秀な人材に魅力的なものではないのかもしれない。
この10年以上にわたる大学入試改革は、こうした学生たちの将来を見据えた教育ニーズに合っているだろうか。

そういえば、10年前に子どもが中学受験の準備を始めた団塊ジュニアの保護者を取材したことがある。「小学校の高学年から良い私立中学に入るために受験勉強を始めて以来、就職するまでずっと競争のために躍起になって勉強してきたけれど、いま大企業で仕事に就くと、一連の受験勉強はほとんど役に立っていない感じがする」と嘆いていた。受験最適化の勉強を続けてきて、学ぶ楽しさや価値を見いだせなかったのだろう・・・

・・・この大学入試改革の過程で、学力試験以外の入試方式を導入したいと当時の京都大の総長から個人的に相談を受けていた。そんな折、いま一歩、入試を変える気になれない担当副学長があるところに呼ばれて、次のようなことを問われた。
「東大や京大の選抜試験は世界一難しいかもしれない。でも、米ハーバード大や米マサチューセッツ工科大(MIT)と比べて、卒業生の活躍が乏しいのではないか。なにかがおかしくないか」・・・

・・・海外の有名大学等の入試問題を見れば、知識や技能だけを問わない。「なにを知っているか」ではなく「なにを考えられるか」を問うている。そして、これまでに多くの経験から得た知識や自信を元に、無理難題を課されても粘り強く「問い」に向き合う耐性を求められている。さらに明解に論理的に、しかも創造性豊かに解答することが求められている。とてもタフな出題だ。
東大や京大など、難関大学と呼ばれる大学の選抜試験はタフな学生を育てられるだろうか。まだまだ変える余地があるのではないだろうか・・・

デモのない日本

2024年7月21日   岡本全勝

7月14日の日経新聞、峯岸博・編集委員の「ろうそくデモのない日本 政権批判めぐる韓国との差」から。

・・・「韓国なら間違いなく『ろうそくデモ』があちこちで起こっていますよ」。自民党派閥の政治資金問題で染まった先の通常国会のあいだ、韓国の政府やメディアの知人からしょっちゅう聞かされた言葉だ。
2016年の冬、いてつくソウルで、ろうそくを手に朴槿恵(パク・クネ)大統領の即時退陣を迫る大規模集会をもみくちゃにされながら幾度も取材した。
友人による国政介入事件を機に、国会での弾劾訴追から罷免、逮捕まで国家元首の転落はあっという間だった。当時、拘置所で朴氏が収容者番号「503」で呼ばれていると聞き、韓国政治の苛烈さを思い知った。

韓国の外交官らは非常事態のたびに日本人の振る舞いに驚かされてきた。
1万5000人超の犠牲者を出した東日本大震災で被災した人々の姿や、中東で過激派組織に拘束・殺害された被害者の家族が「国民や政府にご迷惑をおかけし、心からおわびする」と語った場面などだ。
「韓国では新型コロナウイルス禍でも何でもまずは政府に怒りがぶつけられる。日本政府がうらやましい」。そんな声を聞いた。

反政権デモが勢いづくのは成功体験に基づく。1960年の李承晩(イ・スンマン)大統領の退陣、87年の民主化宣言と憲法改正なども学生を含む市民の怒りがきっかけだった。
政治家や法律が間違っていれば変えたり、直したりするのが当たり前だと考える。「それが民主化運動の中で育まれた文化だ」と保守派の重鎮は語る・・・

フランスをはじめ先進国でも、街頭デモはしばしば起きます。日本で起きないのは、その成功体験がないこと、中心になる人たちや組織がないからでしょう。

天野馨南子著『まちがいだらけの少子化対策』

2024年7月17日   岡本全勝

天野馨南子著『まちがいだらけの少子化対策: 激減する婚姻数になぜ向き合わないのか』(2024年、金融財政事情研究会)を紹介します。

社会を維持できなくなるような少子化が進んでいます。政府は、子ども子育て支援に力を入れています。子どもを育てやすい社会をつくるためです。これはこれで必要なのですが、それでは少子化は止まらないというのが、著者の主張です。それを、数字で説明します。
「夫婦が子どもを持たなくなっている」と言われますが、夫婦当たりの出生数は微減です。主たる原因は、婚姻数が激減していることです。では、若者は結婚したくないのか。いえ、若い男女の結婚願望は昔とそれほど変わらないのです。子どもの数を増やすには、未婚対策が必要です。

題名にあるように「まちがいだらけの」政策を、事実を基に説明しています。お勧めです。天野先生には、市町村アカデミーの研修動画にも、登場してもらっています。

『男はなぜ孤独死するのか』

2024年7月17日   岡本全勝

6月29日の日経新聞の書評欄に、多賀太・関西大学教授が「『男はなぜ孤独死するのか』トーマス・ジョイナー著 失う関係性 再構築のために」を書いておられました。

・・・米国では年間の男性の自殺者数は女性の4倍近い。日本でも1998年以降、男性の自殺者数は毎年女性の約2倍かそれ以上だ。いったいなぜなのか。本書によれば、その謎を解く鍵は男性の「孤独」にあるという。そういえば、日本では「孤独死」も圧倒的に男性に多い。単身で暮らす高齢者男性は女性の約半数だが、孤独死する高齢者男性の数は女性の約5倍とのデータもある・・・

・・・青年期までは友人に恵まれていても晩年になると孤独に陥る男性は少なくない。そこには複数の要因が関わっている。
まず「甘やかされる」こと。子供の頃も大人になってからも、男性は女性に比べて対人関係を築く努力をしなくても他人(特に女性)から気遣ってもらいやすい。この特権の上に胡座(あぐら)をかいている間に、男性は人間関係を築き維持するスキルを学ぶ機会を逃し、そのツケは晩年に回ってくる・・・

大震災の仮設住宅でも、孤立するのは、圧倒的に中高年の男性です。それを防ぐためにいろんな催し物をしても、出てきてくれません。町内会を立ち上げるような会合でも、出席者は女性ばかりで、男性は少ないのです。
これも、男性は働きに行くという昭和の通念(家庭や地域より職場を優先する意識。しかもそれが上位だという意識)、家庭での男尊女卑の慣習の悪い結果かも知れません。「幸福はよき人間関係から

本を読まずに書評を引用するという「手抜き」ですみません。何かと忙しく、こんなズルをしています。最近読んだ本で取り上げたいものもたくさんあるのですが、整理が追いつきません。そのうちに、読んだ内容を忘れてしまいます。

研究者の収入、アメリカの3分の1

2024年7月16日   岡本全勝

7月2日の日経新聞に「「安い」日本、トップ研究者どう集める 収入差3倍超も」が載っていました。公務員の給料が低くても主に国内での競争ですが、研究者は世界との競争です。文科省や財務省は、どのように考えているのでしょうか。

・・・「この金額は用意できない」。名古屋大学の杉山直学長は唇をかんだ。2024年春、公衆衛生を専門とする米大学の准教授を名大に招こうと交渉を続けたが、現在の給与年20万ドルから下がるのが大きなマイナスになりかなわなかった。

国の成長が足踏みし、国立大学が法人化してからの20年、国立大学の教授らの給料は上がらなかった。東京大学のデータによると、教授の平均給与は22年度に約1191万円(平均55.9歳)と、04年度の約1178万円(同52.6歳)からほぼ変わっていない。
世界との差は開いた。米国大学教授協会の調査によると、米国の大学教授の平均給与は15年の約12万6000ドル(1ドル=160円なら約2000万円)から23年には約15万5000ドル(約2500万円)に増えた。有力大学は4000万円超にもなる。

若手研究者の待遇も開きがある。名古屋大で博士号を取得後、すぐに米国の大学の博士研究員に採用された人の給与は年8万ドルだという。現在の為替相場ならば国内の大学教授の平均を超す。「日本の大学教授は社会的な地位はあるが給与は厳しい職業になった」と杉山学長は苦笑する・・・