カテゴリーアーカイブ:社会

社会意識調査「現代日本の社会の心」

2020年5月29日   岡本全勝

吉川徹著『現代日本の「社会の心」 計量社会意識調査』(2014年、有斐閣)を読みました。
「日本思想史2」で書いたように、知識人の意識ではなく、大衆の意識を知りたいので。本棚から引っ張り出しました。役に立ちました。一部で私の関心を超える専門的な話もありましたが。

社会意識調査の花形時代と低迷の時代が、説明されています。1980年代まで、社会意識調査が、日本人の階級・階層を説明することに威力を発揮します。ところがその後、社会意識調査の切れ味が鈍ります。それは、階層(上下)と近代化(新旧)という2つの補助線が使えなくなったからだと主張します。
すなわち、貧富の差が経済成長で変化する、また伝統に縛られていた人がそこから自由になる。その過程では、意識調査が社会意識の変化、社会の変化を反映したのです。ところがそれらが完成すると、この軸での調査は変化や社会を説明しません。そしてそれは、日本人論の流行と低迷と歩調を合わせています。
ここは、私の連載で、経済成長期(近代前期)と成熟社会(近代後期)との違いを説明する際に、強い援軍になります。

P103に、日本人の階層帰属意識の分布の変化が載っています。1955年から1975年にかけて、半分以上を占めた「下」が「中」に移ります。折れ線グラフの変化が、一目瞭然です。それに対し、1975年から2010年では、「中」に集まった山形のグラフは、全く変化しません。
国民意識で「一億総中流」が完成し、もはや社会意識調査は「変化を説明する道具」になりません。他方で、格差社会といわれる社会の変化は、この調査では出てこないのです。
「中流」が国民の目指す目標であり、「自分もそこに属したい」「わが家もそこに属している」という意識が固定し、現実とは乖離しているようです。それは、1975年まであるいはその後の調査において、所得などで中流とは言えない人が「私も中流」と答えていたと思われることとも同様です。実態と意識は、ずれます。
P133に、経済成長期(総中流社会)の階層意識と、成熟社会(総格差社会)の階層意識の「根拠」が図示されています。他者との比較とともに、自分の変化(上昇)を織り込んで、回答するのです。わかりやすいです。

著者は、これまでの補助線が使えなくなった今、どのような説明要因が使えるかも、議論します。不公平感、社会参加、多様性、学歴・・。いくつかは説明できますが、切れ味良い指標は出てきません。それが、現代です。

有斐閣の紹介ページには、書評も載っています。インターネットで読むことができる書評にはリンクが張ってあります。これは、便利です。しかも、匿名の無責任な評価でなく、「一流」の書評です。
佐藤俊樹先生の書評と、直井道子先生の書評を読んでください。私の解説は不要です。

長寿社会へのコロナの影響

2020年5月28日   岡本全勝

5月24日の日経新聞「コロナと世界」、リンダ・グラットン、ロンドン・ビジネススクール教授の「長寿社会への変革力問う」から。

・・・10年ごとに2年のペースで延びてきた平均寿命に感染拡大が影響したとしても、長寿化の大潮流は変わらない。コロナが改めて示したのは働き方や社会システムの対応が個人の寿命の延びに追いついていない現実だ。人生100年仕様への変革が急務だ。
教育、就業、リタイアという従来型の3ステージ人生と実際に現代人が生きる時間の長さにはギャップがある。重要なのは100年時代を前提にしたキャリア形成。コロナによる経済の混乱、金融市場を通じたリターン低下を考えれば、一段と長く働かざるを得ない時代も考えられる・・・

・・・高齢者の死亡率が際立つコロナは、長寿に対する後ろ向きな見方につながるかもしれない。だが年齢を重ねることと、老い衰えることは必ずしも同義ではない。
年齢の持つ意味は個人の行いや環境、国の政策次第で変わりうるということが、長寿社会でカギとなる考え方だ。コロナの重症化リスクも年齢以外に健康状況の影響が大きい。より良く年を重ねることがコロナに対するレジリエンス(回復力)を高める。コロナの存在は高齢社会と長寿に関わる課題の解決を迫るだろう・・・

「教育、就業、リタイアという従来型の3ステージ人生と実際に現代人が生きる時間の長さにはギャップがある」という指摘に同感です。連載「公共を創る」で、人生100年時代を考えているところです。「65歳で引退」とは、いかなくなると思うのですが。では、どこで何をするか。他人ごとではないのです。

毎日の食卓はハレではない

2020年5月26日   岡本全勝

5月24日の読売新聞、料理研究家の土井善晴さん、「家庭料理は「ケ」一汁一菜でいいんです」から。
・・・新型コロナウイルスの影響で、食をめぐる風景が変わった。外食を控え、自宅での食事が当たり前になったが、料理の回数が増えて作り手の負担となっている。多くの人を縛るのは、「家庭料理はかくあるべし」という固定観念だ。食文化を見続け、日本らしい食を提案する料理研究家の土井善晴さんはもっと日本人が生きやすくなるために、「一汁一菜」というシンプルなスタイルで「食の初期化」を説く。家庭料理の世界から見た日本社会の変化と多様性について語ってもらった・・・

・・・新型コロナウイルスの感染拡大は、食生活に大きな影響を及ぼしています。自宅で過ごす時間が圧倒的に増え、特に女性が家族のために食事を作る回数が増えました。SNSでは、「大変だ」「料理なんかしたくない」という内容のつぶやきもたくさん見かけます。女性が悲鳴を上げている。それでもなおかつ「料理を作らなければならない」と思っています。
日本社会が食べることに困らなくなり、ぜいたくが当たり前になって、家庭の中まで入り込んできた。レストランで食べる料理のように、味付けや完成度までが家庭料理の基準になってしまっているのです。
昭和時代は男性が働き、女性が家を支えるという、分業ができていました。その後、女性が外で働くようになり、一層忙しくなったにもかかわらず、家庭料理というもののハードルが非常に高くなっていきました・・・

・・・日本には、民俗学者の柳田国男が言った「ハレ」と「ケ」という生活習慣の概念があります。神様に祈り感謝する祭りなど特別な状態である「ハレ」のような食事を、多くの人が毎日の家庭料理にもイメージしているのです。家庭料理は日常である「ケ」です。毎日の食卓が華やかである必要はないのです。
料理をして食べることは、生きるための基本の行為。何かに強制されたり義務感で料理をしたりするのはつらい。生きることそのものまでつらくなりかねません。
でも、自分自身が核になるものを持っていれば、自信が持てるし、もっと自由になれる。そう考えたのが「一汁一菜」という提案でした。いわば「食の初期化」。持続可能なスタイルです。
ご飯を炊いて、具だくさんのみそ汁を作る。具は何でもいい。あとは漬物。料理の上手下手もないし、作り手に男女も関係ない。ひとりでできる。簡単であるけれど、手抜きではない・・・

・・・ネットの発達で数え切れないほどのレシピやグルメの情報があふれています。情報をだれでも簡単に集められるようになった一方で、大量の情報に踊らされるようにもなりました。幾度となく繰り返される「おいしい」という言葉や、「いいね」の数は情報を均一化、単純化させている。そして私たちの感覚をまひさせている。情報に頼る依存体質になってしまっています。
2018年に私のツイッターの写真が物議を醸しました。
「いただいた赤福のあさごはん。こんでええやん」と記し、伊勢名物のあんこのお菓子「赤福」とみそ汁の写真を載せたところ、「栄養のバランスがとれてない」「健康に悪い」「正しい日本の朝食じゃない」という内容が書き込まれました。
私は「なにいうてんねん。石頭やなー(笑)。こんなんときどき言いたい。どうぞ家の中の多様性を認めてください」と書きました。
栄養のバランスは一回では判断できない。たった一回のことだけで言うなと、ちょっと面白がって反論したのですが、それぞれが「正義」を主張する。
多様性の時代と言われながらも、実際には日本は多様性が認められていないんです・・・

外出自粛、ゴミ急増

2020年5月24日   岡本全勝

コロナウイルス対策のため、外出自粛が続いています(一部地域では解除されましたが)。家庭ゴミが増えているようです。わが家のゴミ収集車も、ふだんに比べかなり遅く回ってくる日があります。
5月22日の読売新聞夕刊に「ごみリサイクル悲鳴 巣ごもり廃プラ急増」という記事が載っていました。

・・・かつての「日常」が戻る兆しも見える中、家庭ごみの行き着くリサイクル処理施設がパンク寸前となっている。背景にあるのは、ここ1か月余りの「巣ごもり生活」で出た大量のごみだ。都市部に近い施設を中心に、食品の包装容器などのプラスチックごみ(廃プラ)が山のよう。大量の古着や古布は倉庫に眠り、家庭からの回収をストップした自治体もある。

「これ以上増えるとパンクしてしまう」。関東地方の廃プラ処理工場の男性経営者は今、焦っている。
4月の緊急事態宣言から、「ステイホーム週間」と銘打たれた5月の大型連休を経て、家庭ごみは一気に増えた。食品の容器、ポリ袋……。同工場では予定の受け入れ量を超えてしまい、保管場所に入りきらない廃プラが高さ3~4メートルほど屋外に積まれている。
工場は廃プラをプラスチック原料にリサイクルしており、土曜もフル稼働で何とか処理している。が、男性は「ごみの保管量はいつもの2倍に達し、置き場所に余裕がない。これで従業員が感染でもしたら、ダメかも」と危機感を募らせる・・・

持ち帰り弁当や総菜は、プラスチック容器に入っています。便利なのですが、ゴミが増えます。ある方(単身赴任中)が、「家飲みだと、ゴミが増えるわ」と言っていました。
外出できない機会に、家の片付けをする人も多いようです。ちょうど、衣替えの季節ですし。すると大量のゴミが出ます。

経済活動再開の順番

2020年5月23日   岡本全勝

5月18日の日経新聞オピニオン欄、西條都夫・上級論説委員の「ウィズ・コロナ時代の備え 「命と経済」両立戦略を」に、ハーバード大学が4月に公表した「パンデミックに強い社会への道」が紹介されています。そこに、社会基盤を担う職場から順に、正常に近づけていく段取りが載っています。

・・・まず第1段階ではエッセンシャル・ワーカーといわれる、医療従事者や食品スーパーの店員、電気・水道などライフラインを担う人、警察消防など全労働者の4割にあたる人に繰り返し各種検査を実施。陽性者は公的な所得補償をした上で隔離し、職場には感染者がほぼおらず、安心して働ける環境を整える。
続くフェーズ2では、日用品の生産や食堂、公共交通など日常生活に必要な機能を提供する約3割の人に検査対象を広げ、その後は美容院など遠隔では難しいサービスに、最後にオフィスワーカーにも検査範囲を拡大する・・・

表がついています。
第1段階のエッセンシャル・ワーカーは、労働力のうち40%を占めます。第2段階の準エッセンシャル・ワーカーは、30%です。
第3段階は対人サービスが10%、第4段階のホワイトカラー労働者が20%です。

年末年始の連休などに、病院、警察、消防、交通など休みを取らずに働いている人たちがおられます。この人たちのおかげで、安心して暮らしていけるのです。この人たちが労働者のうち何割くらいになるのか、気になっているのですが。この表の分類も、一つの見方です。