カテゴリーアーカイブ:地方行政

ふるさと納税制度の問題点

2024年4月1日   岡本全勝

3月16日の読売新聞が「ふるさと納税 「黒字」自治体にも補填 地方交付税 寄付反映せず」を解説していました。

・・・ふるさと納税制度により住民税が流出した自治体に対し、国が地方交付税で補填する額が年々増え続けている。総務省の公表データを分析すると、2016年度以降の補填総額は約1・5兆円。地方交付税は、財源が乏しい自治体を支えるためのものだが、寄付の受け入れ額が流出額を上回る「黒字」となっている自治体にも補填されており、制度の是非について議論が始まっている・・・

・・・ ふるさと納税制度では、住民が他の自治体に寄付すると、翌年度、居住自治体に納められるはずだった住民税が寄付先に流出する。京都市では流出額が受け入れた寄付額を上回る「赤字」が続き、19年度は約37億円に上っていた。
危機感を抱いた同市は、おせち料理などの返礼品に力を入れ、寄付が急増。22年度は約95億円に上り、流出額(約73億8000万円)を上回り、約21億2000万円の「黒字」となった。
同市はさらに、地方交付税法に基づき、流出額の75%にあたる約55億4000万円が地方交付税で補填される。この結果、ふるさと納税の「実質収支」は、寄付による黒字分と合わせ、計約76億6000万円に上ることになる・・・

Aさんが、すんでいるB市に納めるべき税金を、C市に「ふるさと納税」したします。B市は(交付税の交付団体だと)、減った金額の75%が地方交付税で補填されます。他方で、C市に納められたお金は税金扱いされず、交付税計算の際では減額されません。全額がC市の収入増加になります。これが税金だと、納税額が増えた分の75%が、地方交付税から減額されます。
この点では、「ふるさと納税」という表現は間違いで、「ふるさと寄付」です。しかし、Aさんは自分の財布から納めているのではなく、本来B市に納めるべき税金をC市に納めているので、自前の金とは言えません(2000円だけ引かれますが)。寄付でもないのです。税金なら、返礼品があることはおかしなことです。どうして、こんな間違った表現になったのでしょう。

元の財源がB市の税金ですから、C市に納められた税金も税金扱いして、地方交付税の算定に加味するべきです。そうしないと、「ふるさと納税」が増えるほど、地方財政全体の財源不足額が増えてしまいます。
ふるさとへの納税を進めるなら、交付税計算の際に75%差し引かずに、例えば50%にすることも考えられます。早く、こんなおかしな制度は是正すべきです。

北村亘ほか著『地方自治論』新版

2024年3月26日   岡本全勝

北村亘、青木栄一、平野淳一著『地方自治論 -- 2つの自律性のはざまで 新版』(2024年、有斐閣)を紹介します。2017年に出版された本の、新版です。

この本は、初学者向けに思い切って内容を絞ってあります。確かに、地方自治の歴史や外国の制度などは、専門家には重要ですが、入門書には不要ですね。
他方で、学校教育、子育て行政、高齢者福祉にそれぞれ1章をあててあります。
はしがきによると、法学部や政治経済学部学生だけでなく、福祉や教育学部学生や、公務員や政治家にも読まれているようです。納得。

稲継裕昭先生「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」

2024年3月18日   岡本全勝

稲継裕昭・早稲田大学政治経済学術院教授が、2月26日に日本記者クラブで「地方自治体の担い手不足の現状と打開策」を話されました。ユーチューブで見ることができます。関係者は必見です。

公務員志望者の減少、若手退職者の増加、心の病の職員の増加・・・。自治体現場の変化を、数値と経験とで説明してくださいます。

この20年間の変化が急速なようです。若者が自治体を選ばなくなっています。若者の意識の変化と労働市場の拡大が、変化をもたらしています。国家公務員法と地方公務員法の縛り、給与体系、年功序列の昇進慣行が、時代に合わなくなっています。

私は、労働慣行が日本の「この国のかたち」をつくっている、労働慣行に「この国のかたち」が集約されていると説明しています。日本社会の変化が、ここに押し寄せています。

板垣勝彦著『行政手続きと自治体法務』

2024年2月5日   岡本全勝

板垣勝彦著『行政手続きと自治体法務』(2024年、第一法規)を紹介します。
板垣先生は横浜国立大学教授であり、実務経験をも活かした、公務員に役に立つ著書や論文をたくさん書いておられます。市町村アカデミーでも、人気の講師です。

宣伝文には、「自治体における行政手続について、行政手続法や個別法・条例・判例など、法務の観点から解説。公正・透明な行政手続の実現のために注意すべきポイントや手続の改善方法等が理解できる」とあります。
自治体職員向けに、個別事例(自治体が敗訴した事例)も紹介して、実務で問題になる点を説明しています。
現場で役に立つ本です。

節約か銭失いか

2024年1月22日   岡本全勝

先日、ある人から聞いた話です。わかりやすくするために、改変してあります。

建物が年月がたって、施設の改修が必要になりました。建物の3階と4階が対象です。1階ごとに工事をすると、それぞれ5千万円かかります。一度にすると1億円ではなく8千万円ですみます。足場を組んだりするので、別々に工事をするより一度にやる方が安くなります。
しかし予算査定では「経費削減」の号令の下、2年に分けて執行することになったそうです。

年度ごとに見るか、長期的、全体で見るかの違いです。