カテゴリーアーカイブ:地方行政

地方版ハローワーク

2025年9月10日   岡本全勝

8月23日の日経新聞に「地方版ハローワーク、女性や高齢者の働き手発掘 就職率は国を上回る」が載っていました。これまで地方自治体の関与が少なかった(できなかった)分野の一つが労働政策です。

・・・自治体が運営する無料の職業紹介所「地方版ハローワーク」が眠れる働き手を発掘している。5月時点で全国に992カ所あり、島根県は県と全19市町村が設置する。地域課題を解決する自治体の政策と連動した職業紹介で、働く意欲のある高齢者や女性、障害者らの背中を押す。就職率は2019年度以降、国のハローワークを上回る。

地方版ハローワークは、地場産業の振興や介護・福祉の人手不足解消、移住促進といった地域課題を解決する政策の効果を高めるため、自治体が独自に職業紹介する。
地域のニーズをきめ細かく吸い上げて雇用に結びつけ、23年度の就職率は全国で31.3%。民間の職業紹介が存在感を増し、就職件数の減少が続く国のハローワーク(26.8%)より4.5ポイント高い。
都道府県別に自治体の設置割合をみると、島根県が100%で最も高く、鹿児島県の65.9%、大阪府の61.4%が続く。

島根県益田市は介護現場の課題解消をめざし地方版ハローワークを活用する。高齢者福祉課が実施する入門研修やUIターン人材への働きかけと並行し、課内に設置した「無料職業紹介所」が介護の周辺業務の求人と求職者をマッチングする。
施設の部屋の清掃や食事の片付け、利用者の話し相手など、資格が不要な周辺業務を担う人材を多数確保することで、資格のある職員が食事や入浴の介助、専門的な知識の必要な業務に集中できる環境を整えるのが狙いだ。
経験や年齢、勤務時間、資格の制限を設けず「介護お助け隊」として募集したところ、4年間で延べ97人が登録し、43人が職を得た。24年度の就職率は50%だった。
益田市は広報紙やチラシのほか、介護保険や家族の介護の相談で市役所を訪れた高齢者らに地方版ハローワークを紹介して周知してきた。「普段から足を運ぶ市役所の窓口に開設したことで、働きたくても一歩を踏み出せなかった高齢者のニーズを掘り起こせた」(高齢者福祉課)・・・

・・・中央大学の阿部正浩教授は地方版ハローワークについて「地域の課題やニーズをくみ取る自治体の施策に合わせた活用は効果が期待される」と評価する。
そのうえで「高齢者や女性の就職支援は国のハローワークも力を入れ、人材を奪い合う構図もある。地方版の一部は開店休業状態だ。地域の事情を詳しく知る強みをマッチングに生かすことが、地方版にはさらに求められる」と話している・・・

自治体による国際化

2025年7月26日   岡本全勝

JET プログラムは、ご存じの方が多いでしょう。「語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)の略で、外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と地域の国際交流の推進を図る事業です。」
学校で外国語を教える外国語指導助手(ALT)が代表的ですが、このほかに、国際交流員(CIR)、スポーツ国際交流員(SEA)もあります。

機関誌『自治体国際化フォーラム』430号が、「国際交流員(CIR)の多彩な活躍」を特集しています。通訳だけでなく、多文化共生や経済活動などをしています。

2024 年7月時点で、JET プログラム全体で5,861 人(これもすごい数字です)、そのうちCIR は479 人、参加国は35カ国です。アメリカ、中国、韓国、イギリスのほか、ベトナム、オーストラリア、カナダ、ドイツ、フランス、アイルランド、ブラジル、ニュージーランドと、さまざまな国から来ています。
どのようなことをしているか、記事をお読みください。地域の国際化、多文化共生に貢献するだけでなく、たぶん多くの参加者は日本を知って、理解者になってくれると思います。重要なソフトパワーです。

渕上俊則著『地方自治発展史』

2025年7月6日   岡本全勝

渕上俊則著『地方自治発展史【改訂版】』(2025年、盈進社)を紹介します。
元総務省自治行政局長による、日本の地方自治制度と運用の歴史です。

江戸時代の原型から、明治政府による地方制度の形成、憲法制定と地方制度の確立、その運用と発展、戦時下の地方制度、戦後改革、高度成長期の地方行財政、安定成長期の地方行財政、政治主導型政治と地方自治制度、というような章が並んでいます。それぞれに、丹念に説明されています。最後の章は、今後の動向と課題が述べられています。
450ページに上る、詳しい解説です。日本の地方自治の発展を勉強するには、よい本です。

地域共同体の維持

2025年6月16日   岡本全勝

5月27日の読売新聞に「[戦後80年 昭和百年]町内会 維持へ試行錯誤」が載っていました。「地域運営組織」の続きにもなります。

・・・人口減や価値観の変化で地域コミュニティーの中心であった町内会も変革を迫られている。
タワーマンションが立ち並ぶ川崎市・武蔵小杉駅近くの「小杉町3丁目町会」は3月末、役員の高齢化などを理由に解散した。会長を務めた五十嵐俊男さん(82)は「自分たちが元気なうちに整理しよう」と決めたという。
周辺はかつて工場や個人が営む商店が集まり、40~50年前は町会に850世帯ほどが加入していた。祭りや餅つきを企画し、野球部の活動などを通じて住民が親睦を深めた。
バブル経済の崩壊後、工場が移転した跡地に超高層マンションの建設が相次いだ。一帯の再開発で住民の多くは転出するかマンションへ入居し、町会は加入世帯が半減、コロナ禍以降は地域の清掃や防犯パトロールをやめた・・・」

・・・総務省によると、町内会や自治会などは23年4月時点で全国に約29万5000ある。同省の調査では、600市区町村の20年度の加入率は71・7%と、10年度に比べて6ポイント余り低下していた。東京都内では40%を切る区もある。
国や自治体は町内会の維持を後押ししている。公共サービスを補う役割を期待するからだ。
一般財団法人「地方自治研究機構」によると、加入や維持などを主眼にした条例のある自治体は3月現在、30以上ある。4月に条例を施行した宇都宮市は活性化や防災力向上のための事業向けに補助金を交付し、地域社会への関心を高めてもらうイベントも開催する。
不動産業界と連携して売買・賃貸契約時に加入を呼びかけたり、加入率向上や負担軽減に関する業務にあたる「地域おこし協力隊」を募集したりする自治体もある。愛知県刈谷市などは、デジタル化を推進する自治会に対して補助金を交付する。
総務省も、市町村による加入促進の支援経費などについて地方交付税措置を講じている。

国などは、町内会を補完しつつ、住民自治を充実させる「地域運営組織」という仕組みに注目している。小学校区程度の範囲で、町内会やPTA、消防団などが参画し地域課題に対応する。893市区町村に8193団体(昨年度)ある・・・

地域運営組織

2025年6月10日   岡本全勝

地域運営組織って、ご存じですか。総務省のホームページには、次のように書かれています。
「地域運営組織とは、地域の暮らしを守るため、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に基づき、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織です」
自治会や町内会などが代表的ですが、それに限りません。

3月に「地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」が公表されています。それによると。
令和6年度は地域運営組織が全国で8,193団体が確認され、令和5年度(7,710団体)から483団体増加し、平成28年度に比べて約2.7倍に増加。また、地域運営組織が形成されている市区町村は893市区町村であり、令和5年度(874市区町村)から19市区町村増加。
組織形態は、法人格を持たない任意団体が90.9%、NPO法人が3.4%、認可地縁団体が2.0%。
活動内容 は、祭り・運動会・音楽会などの運営(70.6%)が最も多く、交流事業(69.6%)、健康づくり・介護予防(62.5%)、防災活動(61.9%)などです。

地方行政は、総務省(自治省)が所管しています。かつては制度論を議論していましたが、運営論に主題が移っているようです。それも、役所の組織運営もありますが、地域の経営です。暮らしやすい地域をつくること、そして孤立を防ぐためには、制度論では効果がありません。