カテゴリーアーカイブ:人生の達人

自分をほめてやりたい

2023年9月6日   岡本全勝

有森裕子さん「自分をほめたい」」の続きです。有森さんは、「自分をほめる」であって、「私は「自分で自分をほめてあげたい」とは言っていません」とおっしゃっています。

私は、有森さんの言葉を借用して「自分で自分をほめてやりたい」と使っています。なぜかと、考えました。理由は次の通り。
私は仕事で迷ったときに、しばしば「全勝A」の斜め後ろに「全勝B」を置いて、Aに向かって「本当にこれで良いのか?」と会話させます。冷静に自分を見るためです。これは、判断に悩んだときなどですが、ある仕事をやり遂げたときには、全勝AがBに向かって「自分で自分をほめてやりたい」と同意を求めるのです。
すると全勝BがAに「そうだな」と同意してくれます。自分に対するご褒美です。全勝Aは、「では、早くビールを飲みにいこう」と雑務を片付けます。
人間は弱い動物です。このようなご褒美も必要でしょう。

80億人を狙う日本の米菓

2023年9月3日   岡本全勝

8月15日の読売新聞「LEADERS」は、亀田製菓会長兼CEOであるジュネジャ・レカ・ラジュ氏の「日本の米菓 80億人に狙い」でした。

<微生物学が専門で、1984年に大阪大学の研究生として来日した>
当時、(米経済誌)フォーブスの経営者リストを見てもみんな日本人。メイド・イン・ジャパン。日本はアメリカを抜いて世界一になるのではないかという勢いがありました。インド人の留学先はアメリカやヨーロッパが多かったのですが、ある先輩から「これからは日本ですよ」と言われました。阪大には発酵工学の分野で世界トップクラスの有名な先生がいたこともあって、日本に行く決心をしました。

日本で一番驚いたのは食でした。
インドってスパイスの味、濃い味付けですよね。先生と食事に行ったらタコの刺し身が出てきた。何も調理しないでこんなものを食べるのかと本当に驚きました。そうしたら先生から「形を考えないで、とにかく口に入れておいしさを感じなさい」と言われたんですね。
「食感」という言葉は後から知ったのですが、日本語には食感を表す言葉が本当に多い。調べてみると「かりかり」とか「ぱりっ」とか445語もある。英語は77語しかない。食に対して日本人は繊細ですよね。ずっと食にかかわってきた私のキャリアで、一番記憶に残っている言葉です。

<海外事業、国内の食品事業担当の副社長を経て、22年に会長兼CEOに就任した>
亀田の柿の種という国民的なお菓子を作っている会社のCEOになったことは本当に誇りに思っています。
もっと言うと、日本国民1億人だけではもったいない。世界の80億人を狙っていこうと思っています。

今、外国人が日本に来て何に喜んでいるでしょうか。食ですよね。和食は目で見て美しく、おいしい。私たちはコメからいろいろな食品、食感を作ってきました。小麦アレルギーの子供も食べられる特定原材料等28品目アレルゲンフリーの米粉パン、お米由来の植物性乳酸菌、災害食用の携帯おにぎりなどです。

柿の種は知られていても、こういう亀田は知られていない。全部ドット(点)、ドットなんです。
どうやってドットをつなげるか。まずは社員のマインドセット(考え方)を変える必要があります。7月にグループの研究開発機能に横串を刺す「グローバル・ライスイノベーションセンター」を作りました。ドットをつなげていったら、すごいパワーになりますよ。

平櫛田中と30年分の材木

2023年8月31日   岡本全勝

買っても読まない本が、増え続けています。生きている間にすべてを読むことは、できそうにありません。「なら、新しい本を買うなよ」との声が聞こえてきそうです。

全く関係ないのですが、彫刻家の平櫛田中さんを思い出しました。かつて、旧居を転用した美術館を見に行ったときに、たくさんの材木が残っていました。
「田中は百歳を超えても、30年かかっても使いきれないほどの材木を所有していた。これはいつでも制作に取り掛かれるようにと、金銭に余裕がある時に買いためていた材木がいつの間にかそれだけの分量になっていたためである」(ウィキペディア)とのことです。

そのひそみにならえば、「100歳まで生きて、まだ読むことができない本が残っていた」「まだまだ勉強する意欲を持っていた」とは、なりませんでしょうか。残された家族が、処分に苦労するだけでしょうか。

有森裕子さん「自分をほめたい」

2023年8月28日   岡本全勝

8月23日の朝日新聞「“I”をください」「有森裕子さんに聞く 重圧かけた末の「自分をほめたい」」から。この言葉は、私も使わせてもらっています。でも、「自分で自分をほめてあげたい」ではなかったのですね。しかも、しょっちゅう使っています。

「自分で自分をほめたい」。1996年のアトランタ五輪女子マラソンで銅メダルを獲得した有森裕子さんの言葉。「自分」を大切にすることを推奨する最近の世の中にあふれる言説の先駆けともいえそうだ。言葉に込めた意味、自己肯定感に時に振り回される風潮について、現在は日本陸上連盟副会長などを務める有森さんに聞いた。

「自分で自分をほめたい」は、インタビュー中に自分に言って自分で納得するための言葉でした。誰かに何かを伝えようとしたものではないですが、皆さんの視点を少しでも変える言葉であったならよかったです。
バルセロナ五輪(92年)で銀メダルを取ったものの、その後の環境がなかなか自分の思い描いたようにならず、身体的にも精神的にも傷を負いました。このモヤモヤを抱えては生きていけない、でもSNSもない当時はアスリートが何かを主張するにはメダリストに返り咲くしかない。そうやって自分で自分に重圧をかけた末で、同じメダルでもバルセロナとアトランタでは意味合いが全然違ったんです。

ただ勘違いされている方が多いですが、私は「自分で自分をほめてあげたい」とは言っていません。自分に対して何かを「してあげる」なんて言い方、しないです。誤解が広まったのも、たぶん「自分をほめたい」は日本人の感覚の言葉じゃないんでしょうね。仏教圏の慈悲文化と、キリスト教圏の奉仕文化の違いがありそうです。
あの言葉の元になったのは私が高校生の時に聞いたフォークシンガーの高石ともやさんの「自分のことを分かっているのは自分自身だから、他人にほめてもらうんじゃなくて、まず自分で自分をほめることが大事だよ」という言葉です。高石さんが米国でボランティア活動中に、現地の年配女性から聞いた言葉だそうです。日本だと「ほめたい」はずうずうしく、他人に施す「あげたい」が自然なのでしょう。
でも多くの人が本心では自分を認めたいと思っているから、私の言葉は新鮮に受け止めてもらえたのだと思います。自分へのご褒美的な意味に転じて「ほめてあげたい」で広まったのかもしれません。

アトランタ以降に「自分で自分をほめたい」と思ったことはありません。あんな出来事は一生に1回。こんな言葉をしょっちゅう使っていたら、単なるなまけものになっちゃいます。日常にゴールはなく、強烈な刺激もありませんから。
そこまで思うことはなくても、今の仕事の中で一生懸命に頑張る人を応援している時に充実感があります。自己肯定感と言われますが、私は根本は自分の存在意義だと思います。人間が一番必要とするものです。

良い失敗を褒めよ

2023年8月27日   岡本全勝

8月16日の日経新聞「教育岩盤、突破口を開く」、畑村洋太郎・東大名誉教授の「「良い失敗」した人をほめよ」から。

日本の教育は物事に必ず一つの正解があると考え、それを効率的に得ることを重視する「正解主義」に染まってきた。失敗を創造につなげる「失敗学」の提唱者として知られる畑村洋太郎・東京大名誉教授は、社会全体が「失敗」と「正解」に関する考え方を変えるべきだと主張する。

――失敗には「良い失敗」と「悪い失敗」があるそうですね。違いは。
「悪い失敗は手抜きや不注意に基づく失敗で、これは経験する必要がない。良い失敗は人の成長に必要な失敗だ」
「新しい価値の創造には仮説を立て、検証することの繰り返しが必要で、それは良い失敗と表裏一体だ」

――日本はこの30年間、成長率が低迷しイノベーションが停滞しています。根底には良い失敗の欠如がありそうです。教育とも深く関係しますね。
「そうだ。習うとはまねをすることだ。日本は古代から一千年以上、中国や西欧の立派なものを学び取り、自分のものにするのが最善という考えでやってきた。正解を吸収することが学びで、それを効率的にできる人が賢いと考える『優等生文化』が成立した」

――入試がそうです。
「高度経済成長期はそれで一見うまくいった。コピーの量産が教育の基本理念になってしまった。本当は自分なりに考えて『我を出していくこと』が一番大事なのに。自分の考えを外に主張し、やりとりをする中で考えをより豊かにするディベートのような経験をしてこなかった」
「日本の教育は子どもに創造性を育む視点が欠けたままだ。創造性を刺激された経験のない人が教壇に立っている」
「西欧の先達は大変な努力をして犠牲を払い、失敗を積み重ねてそれだけのものをつくってきた。効率主義だとそれをまねすればよいとなる。考えてみると傲慢な姿勢ではないか。学べば自分のものにできるという明治維新以来の勘違いに気づかずにきたツケが、いま回って来ている」

8月20日の日経新聞、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長の「失敗で磨け、無二の価値 世界に挑み続ける柳井氏の信念」も参考になります。