カテゴリーアーカイブ:人生の達人

日本人の死生観

2024年7月14日   岡本全勝

6月30日の読売新聞読書欄に、岡美穂子(歴史学者・東京大准教授)による佐藤弘夫著『激変する日本人の死生観 人は死んだらどこへ行けばいいのか 第2巻』の書評が載っていました。
・・・著者に 拠よ ると、中世人の理想的な「死後」が極楽浄土への往生であったのに対し、近世人は自分が生きていた世界、子どもや孫たちが暮らす場所により近いところで「仏さま」として過ごすことを理想と考えるようになったという。その理由として中世の「生」は飢餓や貧困、病気などに満ちた厳しい場所であったのに対し、比較的平穏であった江戸時代の現世が「生まれ変わっても良い」と思える場所になっていたことが挙げられる。現在日本人の家庭の多くにあるように、江戸時代に仏壇が普及したのは、その時代の死生観に基づくと考えれば合点がいく・・・

それで納得できました。葬式や法事の際に、お坊さんは、亡くなった仏さんは西方浄土に生まれ変わるとおっしゃいます。とても遠いところだそうです。ところが、お盆などでは、仏さんは自宅に帰ってきます。近くにいて、私たちを見守ってくれているとも言われます。
なんでだろう、と思っていたのです。

幸福はよき人間関係から

2024年7月13日   岡本全勝

6月29日の朝日新聞夕刊に、ロバート・ウォールディンガー、米ハーバード大教授の「人生を追跡調査、幸福のカギは」が載っていました。
・・・85年以上、約2600人の「人生の追跡調査」で幸福度を探る研究を続けている米ハーバード大学。研究の結果、ウェルビーイング(心身の健康や幸福)は、良き人間関係によって育まれることが分かってきたという。研究を担うロバート・ウォールディンガー教授(精神医学)に、幸せになるためのヒントを聞いた。

ハーバード大学が1938年から行っている「成人発達研究」は、卒業生を含め、貧困層から富裕層、子どもから大人まで幅広く調査しているという。
対象者には約2年ごとに生活状況などを聞く質問票を送り、5年ごとに健康診断のデータを集める。約10年ごとに対面で幸福度などをヒアリングし、さらにその配偶者、子どもなど3世代へと調査が広がっていく。
「現在、約2600人が調査対象になっており、こうした追跡調査は前例がなく、史上最長です」とウォールディンガー教授。

調査では、良い人間関係が、心臓病や糖尿病、関節炎の発症を抑制するなど、健康にも良い影響を及ぼしていたことがわかった。
一方で「慢性的な孤独感」は、肥満の2倍健康に悪く、1年あたりの死亡率を26%高めるという。
ウォールディンガー教授は研究成果をまとめた著書「グッド・ライフ」(辰巳出版)の中で「将来のウェルビーイングは予見できる」と記している。
研究チームは被験者たちの人生を80代まで追跡した時点で、中年期の状況から将来、健康で幸せな生活を送る人とそうでない人を予見できるか、検討してきた。
被験者の50歳時の全データを集めて分析すると、老年期の状況を予見できたのは、「コレステロール値ではなく、人間関係の満足度でした。50歳の時の人間関係の満足度が高い人ほど、精神的、肉体的にも健康な80歳を迎えていました」と説明する・・・

・・・定年が迫ってくると、人生に対する後悔や焦り、むなしさが生じがちだ。こうしたミッドライフクライシス(中年の危機)をどうやって乗り越えればいいのか。
「親友を探すことです」とウォールディンガー教授はアドバイスする。ある調査会社が「職場に親友はいますか」と世界中でアンケートしたところ、3割がいると回答したという。
「管理職によっては、従業員同士が仲良くなるのを警戒し、生産性を下げると言う人もいますが、実際は逆。親友がいると回答した人の職場での幸福度、生産性は他よりも高く、転職願望が低い結果となりました」
注目すべきは、親友がいると答えた女性たちは、意欲的に仕事に取り組む人の割合が2倍になっていたという事実だ。
「つまり、雰囲気のいい職場はストレスが少ないため、健康的に働くことができ、生産性も上がり、幸福度が高まると言えます」・・・

楽観的な人は先延ばし癖が少ない

2024年7月9日   岡本全勝

6月26日の朝日新聞に「楽観的な人、先延ばし癖少ない? 東大院生ら、20~29歳の男女を調査」が載っていました。

・・・将来はストレスが少なくなると考える楽観的な人たちは、物事を深刻に先延ばしする癖が少ない。そんな研究結果を東京大学の研究グループが科学誌に発表した。「深刻な先延ばし癖を減らすには、未来に希望を持つことや、その支援を受けることが大切ではないか」と指摘している。
「深刻な先延ばし」とは、課題を先送りすることでよくない結果を招くことがわかっても先延ばししてしまうこと。幸福度が下がってストレスが増え、健康を損なったり学業成績が低下したりすることが知られている・・・

・・・オンライン調査で、20~29歳の男女296人(平均25・6歳)に、「過去10年」から「この先10年」の9段階の時間軸で、どれくらいストレスや幸せを感じるかを選んでもらった。同時に、12の質問をもとに、先延ばし癖が強い人たち、弱い人たち、中間層にわけ、ストレスや幸せの感じ方との関連を調べた。

ストレスの感じ方は4パターン。未来に行くほど、ストレスが減る「下降型」が18%、ストレスが増える「上昇型」が30%、今が一番ストレスが低く、過去や将来ほどストレスが増える「V字型」が38%、過去の一時点がストレスが最も高く、以降は減る「への字型」が13%いた。

下降型は、先延ばし癖が強い人たちが11%と、ほかの3グループの半分以下で統計上も明確に少なく、中間層の人たちが65%と多かった。下降型は未来に対して楽観的に考える人たちで、そういう見方が深刻な先延ばし癖を減らす可能性が示唆されたという・・・

人工知能、「記憶力の良い研修生」

2024年7月6日   岡本全勝

7月4日のiJAMP(時事通信社)に、塩光献・アブポイント日本法人代表取締役社長が「生成AI、現状では「記憶力の良い研修生」」を書いておられました。いくつも納得できる指摘がありますが、次の文章を紹介します。

・・・生成AI(人工知能)の登場は大きなことではあったが、職場では現状は「非常に記憶力の良い研修生」に例えられている。覚えは良いのだが、社内業務においてやって良いことといけないことがまだしっかり判断できない状態だ・・・

後段の「やって良いことといけないことが判断できない」は、重要な指摘だと思います。教えないと、善悪の判断を機械はできません。

退職した元職員の再雇用

2024年7月2日   岡本全勝

6月24日の日経新聞夕刊に「退職者カムバック、自治体も 都庁「アルムナイ」募集開始 公務員離れに危機感」が載っていました。ところで、「アルムナイ」という言葉は日本語に置き換えられませんかね。やはり、英語に憧れているのでしょうか。「元職員」ですよね。例えば「元職員再採用」ではだめでしょうか。

・・・中途退職した元職員を再雇用する「アルムナイ採用」が自治体で増えている。長野県や静岡県が2023年度に導入し、東京都も24年度から始めた。売り手市場で公務員人気に陰りがみえるなか、中途退職者を即戦力として見直す動きが自治体にも広がってきた。
都は「都庁版アルムナイ採用制度」と銘打ち、4月から中途退職者の再採用を始めた。1年以上の勤務経験があれば応募できる。選考は筆記試験を免除し、書類選考と面接のみとした・・・

・・・アルムナイは卒業生や同窓生を意味する英語で、人事分野では中途退職者を指す。転職は裏切りとする風潮がかつては強かったが、最近は組織風土や業務に熟知した即戦力として評価する企業が増えている。
アルムナイ採用の導入は企業が先行しており、リクルートの再採用代行サービスの利用企業は1月時点で100社超と1年前の4.5倍になった。
生え抜きを重視する傾向が強かった自治体でも都のように導入例が出てきた。19年度以降、茨城県や神戸市、大阪府寝屋川市などが開始している。

いずれも育児や介護を理由にした退職者に限定せず、転職者を対象に含めている。選考は新卒採用や中途採用で課す筆記試験を免除し、小論文や面接のみとする例が多い。復職後の給与は退職前の職級に準じて決める。
これまでも中途退職者を再雇用する制度を設ける自治体はあったが、出産や育児、介護などで職場を離れた女性の復職支援という意味合いが強かった。育児休暇制度が充実したこともあり、制度の利用もごく少数にとどまっていたとみられる。
転職者に門戸を広げたことで、応募が増えた自治体もある。北海道は21年度に育児や介護などやむを得ない理由での退職者限定で再採用を始め、23年度から転職者を対象に含めた。技術職と専門職に限っていた募集職種を行政職に広げたこともあり、21~22年度に4人だった応募者は23年度に17人まで増えた。
自治体でアルムナイ採用の導入が相次ぐ背景には、地方公務員のなり手不足への危機感がある。安定した就職先として人気の高い公務員も、求職者優位の「売り手市場」で採用に苦戦している・・・