カテゴリーアーカイブ:人生の達人

「仕方ない」が生む日本の低迷

2024年7月26日   岡本全勝

7月17日の日経新聞「私見卓見」、的場正晃・PHP研究所経営共創事業本部本部長の「経営幹部は意識を変えよ」から。

・・・日本企業の競争力が低下したのは、現場でさまざまな問題が発生し、それが常態化しているからではないか。そして、そのことに対して多くの社員が「仕方ない」と諦めたり、「どうせ無理」と無力感を感じたりして、問題の解決が先送りにされているようだ。

変革が求められながら、なぜうまくいかない企業が多いのか。経営幹部の意識と行動が変革を阻害するケースがほとんどだ。変革の必要性を説きながら、いざ実行の段階になると自身の不利益になることを潰すことが多い。
さらにやっかいなのは、会社をダメにしている当人が、それを自覚していないことだ。彼らは口を開けば「会社のためにやっている」と言う。ところが、客観的に見ると、彼らの言動の大半が自身の立場を守るための保身行動になっていることがよくわかる。

では、どうすれば経営幹部の意識を変えることができるだろうか。経営幹部は、過去の成功体験に基づく自分なりの価値観や強い信念を持っている人たちだ。そのため、意識を変えることは容易ではない。その前提に立ち、強固に構築された考え方に風穴を開け、気づきを提供する必要がある・・・

連載「公共を創る」にも書きましたが、この30年間の停滞で、企業も役所も「新しいことに挑戦して成功した」体験を持っていない人たちが幹部になっています。個人の経験と意識、職場の風習(社風)、社会の意識が与える影響が大きいです。

相談に乗ってあげる

2024年7月25日   岡本全勝

7月17日の朝日新聞夕刊、教育評論家・尾木直樹さんの「なかなか宿題に手をつけられません」の続きです。

――年齢を重ねると、宿題を出す立場になることもあります。
宿題がうまく進んでいない人に「大丈夫?」と尋ねるのは禁句ですね。条件反射で「大丈夫」と返ってきて、本質的な解決にはならない。はかどらない背景には必ず何かある。事情や言い分を聞いてあげることが大事です。
母は、ぼくが困っているときなどには、「どうしたの?」と聞いてくれました。ぼくも教員になってから、校内でたばこを吸っている生徒にも、「コラ!」ではなく「どうしたの?」と尋ねるようになり、「どうしたの先生」と呼ばれるようになりました。
でも、相手の顔が見えない電話やメールで「どうしたの?」と投げかけると、それはそれで威圧的に受けとられたりして難しいところですが。

――余裕をもって周囲と接したいのですが、なかなかそうできないことも多いです。
先日、東京都が採用3年目までの教員を対象に実施したアンケートの結果が報じられていました。先輩や上司の言動に「つらい思いをした経験がある」人は50・1%で、具体的には、管理職が高圧的な態度だったとか、「いつでも相談して」と言っていたのに「今忙しい」とはねつけられた、とか。
若い教員の離職率が過去10年で最も高くなり、行われたアンケートですが、その背景として、先輩たちも追い詰められている実態がわかります。本来は「大変だったね」と言ってもらうだけでも、7割ぐらい心が軽くなったりするものですが、「いつでも相談して」を実践するには、話を聞く側の余裕も必要。長時間労働の問題など、教師の働き方改革は喫緊の課題ですね。

文章の作成と確認、画面か紙か

2024年7月24日   岡本全勝

パソコン、ワープロ、電子メールの発達で、文章の作成と送付、保存が格段に便利になりました。職場でも書斎でも、紙をなくして電子媒体で仕事をすることが進んでいます。
市町村アカデミーでも、所内のやりとりで、紙を使うことが少なくなりました。会議も、資料は紙で配らず、各自がパソコンを持ってきて画面で見ます。そのための設備投資もしました。まだいくつか紙による決裁なども残っているのですが、いずれその多くも電子媒体になるのでしょう。

私も、原稿執筆はワープロになり、紙に書くことはなくなりました。ただし、骨子を考えたり、メモをつくったりするのは、紙に万年筆です。それと、文章が完成した際に、紙に打ち出して確認します。画面では見落とすことが多いのです。編集者とのやりとりは、原稿もゲラも、電子メールでです。これは便利になりました。

先日、新聞と本の編集者と話したら、活字を使う(といっても鉛活字は使っていませんが)現場では、次のようになっているようです。
・新聞記事、特に短い記事は、ほぼ電子媒体になった。作成、送付、校閲も。機械が、ある程度の校閲(社内の決まりに従う。例えば使わない単語の確認とか)をしてくれるので、便利になった。
・本の場合は、原稿は電子媒体となり、ゲラにするのも電子媒体で。校閲を画面ですることも多いが、最後の確認は紙に打ち出す。レイアウトなどの確認も必要なので。

自分が決めた予定なら、頑張れる

2024年7月24日   岡本全勝

7月17日の朝日新聞夕刊、教育評論家・尾木直樹さんの「なかなか宿題に手をつけられません」から。

「週明けまでにリポートをまとめて」「この書類、締め切りは○月○日で」――。子どもだけでなく、大人の日常にもつきものの「宿題」。さっさと済ませた方がいいとわかっていても、なかなか手につかない。一方で宿題を出す側にも、きっと心労があるに違いない。宿題を巡る悩みの根っこに何があるのか、教育評論家の尾木直樹さん(77)に相談してみた。

――宿題をつい後回しにし、締めきり間際に苦労することも少なくありません。
「夏休み最終日の子ども」状態ですね。それはそれは、しんどいですね。計画性をもって進めている人に比べると、大変な苦労をされているわけですが、ある意味では、それも能力のひとつですよ。ぎりぎりになっても何とか間に合わせる。つまり、取りかかりさえすればやれる能力があるとも言え、そこまで気にしなくていいと思います。
それに、取りかかるまでに、ほかに魅力を感じたやりたいことをやっているわけですよね。たとえ、ぼーっと寝ていたとしても、その時間もまた大事です。

――尾木さん自身は宿題とどう付き合ってきましたか。
学校の宿題って、そう簡単にやる気は湧きませんよね。自分で決めた課題ではなく、他人(先生や親)にやらされていると思うから。
その点、うちの母は巧妙でした。「宿題をしなさい」と言われたことは一度もない。学校から帰ってくると、母は「今日はどんな予定?」と聞くんです。「とりあえず宿題をやってから、遊びに行こうと思う」と答えると、「えらいね、自分で予定を決められて」と褒めてくれる。すると自己肯定感が湧いてくる。
「やる気スイッチ」というより、「やる気エンジン」かな。ポジティブな気持ちで得意なところから始めて、エンジンがかかれば、勢いで苦手な教科にも取りかかれる。すると、母がまた「えらいね」と褒めてくれる。うまく操られていたような気がします。

役職定年の課題

2024年7月22日   岡本全勝

7月15日の朝日新聞「50代の壁「役職定年」廃止じわり 中高年のモチベーション低下・人材不足が問題に」から。
・・・50代以降、一定の年齢で管理職から自動的に外す「役職定年制」。肩書は外れ、給与が激減するため、中高年にとって働くモチベーションが下がる要因の一つとされました。ところが近年、役職定年を廃止する動きが相次いでいます。どんな背景があるのでしょうか・・・

・・・約1万6千人の従業員を抱える大和ハウスが役職定年を廃止したのは2022年4月。人事部長の河崎紀成(としなり)さん(49)によると、60歳以上の社員50人前後を元の管理職に戻したり、継続させたりした。給与カットもなくし、同じ役職なら60歳までと同じ水準で支払うようにした。
その結果、人件費は十数億円規模で膨張したという。それでも踏み切った理由は、技術者などの人手不足と、役職定年によるシニア社員の「モチベーションの低下」、それによって職場の雰囲気が悪くなり、戦力になる人材が流出したことなどだ。
「人材の流出が減り、現場のモチベーションは上がった」と河崎部長。ただ、技術職を中心に人がまだまだ足りないといい、65歳以上の技術職を中心に再雇用も積極的にすすめるという。
役職定年を廃止すれば、人事が硬直化し、ポストが若手に回らなくなると不満はないのか。
同社の部長級の平均年齢は55歳前後。役職定年の廃止は無条件にポストを約束するものではなく、人事は適宜おこなう方針だとする。「評価はシビアで、成果が出せなければ、役職定年前でも部長は交代となる」と話す社員もいる。

空調大手ダイキン工業(本社・大阪)も今年4月から役職定年を廃止した。
定年を60歳から65歳に引き上げ、これまで56歳としていた管理職の役職定年を廃止。59歳以下に適用していた資格等級、評価、賃金制度を、定年の65歳まで継続して運用する制度に変えた。
「これまで56歳以降になると、給与が減り、部長などの役職名も『参与』などに変わっていた」とダイキンの人事本部ダイバーシティー推進グループ長の今西亜裕美さん(49)は説明する。
同社社員は56歳以上の割合は20%強(23年度末時点)。「ベテランの力で仕事を支えていたので、年齢で区切るのはやめようとなった」という。60歳以降も能力や成果に応じて昇格や昇級も可能になった。

年齢による労務管理自体を見直す動きも。電機大手NEC(本社・東京)は21年4月、56歳に設定していた役職定年を廃止。約千人を管理職に復帰させた。さらにこの4月には、これまで管理職以上が対象だった「ジョブ型人材マネジメント」の対象を全社員に広げた。
ジョブ型人材マネジメントとは、年齢や経験年数ではなく、職務に対して専門知識をもつ人材などを管理職に配置し、担当職務によって報酬を決めるというシステムだ。

日本企業が役職定年制を採用するようになったのは1980年代後半ごろだ。年功序列型の人事で世代交代が滞り、役職に伴う人件費の増大などが問題視されていた。強制的に世代交代を進め、新陳代謝を図るための解決策として導入された。
パーソル総合研究所は22年、役職定年制の導入の有無などについて大手企業(32社)にヒアリング調査を行った。それによると、「制度あり」は31%、「(1~2年前に)新設」が13%、「制度を廃止」が16%、「廃止予定」が13%、「制度なし」が28%だった・・・

・・・大手企業32社の人事責任者らに、役職定年などのヒアリング調査をしたパーソル総合研究所の上席主任研究員、藤井薫さん(64)に現状を聞きました。
――企業が「廃止」「廃止予定」とした主な理由は?
役職定年となり、仕事に対するモチベーションが下がり、「働かない妖精さん」などと揶揄される50代を減らすことも理由の一つです。最近は管理職になりたがらない若手も多く、現場を仕切る「課長不足」に悩む企業が少なくありません。「バブル採用組」がもうすぐ大量定年となるので、管理職を中心に人材不足が深刻になるでしょう。

――役職定年が廃止されると人事が硬直化するリスクが生じるのでは?
組織の新陳代謝の障害になる恐れはあります。しかし、これからはゼネラリスト型の管理職より、スペシャリスト型の方が需要が高くなるのではないでしょうか。人事の硬直や専門性の陳腐化を防ぐため、役職定年のように年齢で区切るのでなく、若手も含めて2~3年の役職任期制度を設けるという手もあります・・・