カテゴリーアーカイブ:人生の達人

フリーアドレス制の欠点

2025年10月2日   岡本全勝

9月9日の日経新聞夕刊に「フリーアドレス生かすには」が載っていました。ウェッブでは「「失敗フリーアドレス」防ぐには」です。フリーアドレスとは、社員の座席が決まっていない職場。これも和製英語だそうです。

・・・オフィスの中で固定の席を持たず、どこでも仕事ができるフリーアドレス制度。導入する企業が増える中、メリットを生かせずに見直すケースも出てきた。単に取り入れるだけでなく社員同士の交流を促すためにはどうすればよいのか。企業の失敗や専門家の助言から、コツを探った。

「フリーアドレスの企業で働いてみると、不便な点が多い」。4月に新卒で都内の建設会社に入社した男性(26)は嘆く。入社したてで相談したいことも多いが、上司を探すのにも一苦労するという。
オフィス家具大手のイトーキの調査によると、首都圏を中心に2021〜23年度に竣工したオフィス111社のうち、フリーアドレスの採用率は8割だった(固定席との併用を含む)。近年、民間企業だけでなく全国の自治体でも導入が進んでいる。ただ、「失敗」を認める企業もある。

「導入の機運が高まる中での『なんちゃって導入』だった」。オフィスの設計や家具販売を手がけるイデックスビジネスサービス(福岡市)が固定席を原則廃止しフリーアドレスに変えたのは2015年ごろだった。
社内のコミュニケーションを活発にする狙いがあった。しかし、実際は「決まった人が決まった席を使う、固定席化が目立った。パソコンの充電器を置きっぱなしにして帰る人もいた」(オフィス環境事業部副部長、村上慶一さん)。フリーアドレス席の約6割が固定席化していたという・・・

私が聞いたある職場では、朝出勤した社員たちが課長席から遠い席を選んで座り、遅れて出社した社員は課長席の前に座るという「罰ゲーム」になったそうです(笑い)。

買い物で磨かれる自分らしいセンス

2025年9月28日   岡本全勝

日経新聞折り込み広告誌「THE NIKKEI MAGAZINE」9月21日号、松浦弥太郎さんの連載「日々是見聞録」は「買い物で磨かれる自分らしいセンス」でした。

・・・買い物は、ただ欲しい物を手に入れるための行為ではない。むしろ、自分の心と向き合う、小さな修行のようなものだと思っている。
品物を前にするとき、必ず「どちらにしようか」「どうしようか」と迷う。色や形、値段や使い心地。どれを選ぶか、その一つひとつの判断に、自分の価値観すなわちセンスが問われる。
とすると、買い物とは、実は自分の「好み」や「美意識」を一つひとつ確かめる作業ではなかろうか。
とくに洋服やアクセサリーを選ぶとき、それははっきりと表れる・・・

・・・小さな決断の積み重ねは、着こなしという経験を得て、やがて自分自身の雰囲気や佇まいをつくっていく。
もちろん、悩んで買った服がほとんど出番を得ずにクローゼットの奥で眠ってしまうこともある。しかし、その後悔もまた大切な学びになる・・・成功と失敗を繰り返すうちに、少しずつ目が磨かれ、ものを選ぶ力が養われていく。

だからこそ、もし買い物をまったくしなくなったなら、その瞬間から、美意識の成長は止まってしまうのかもしれない。新しい色や形に触れることも、自分を試す機会もなくなり、感性の扉は少しずつ閉じていくだろう。そう、買い物は浪費ではなく、自分の中のセンスという感覚を耕す行為なのだ。

センスのよい人とは、生まれつき特別な感覚を持っている人ではなく、選んで買うという、ある種の修行を繰り返し、自分の目と心を磨き続けている人だと思う。
今日、何を買うか。その小さな選択の積み重ねが、やがて「自分らしさ」というかけがえのないセンスを育て、人生を少しずつ美しくしていくのだ。
そして買い物とは自分を知るための学びという名の営みである・・・

不測の事態の訓練

2025年9月26日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」、9月は宇宙飛行士の向井千秋さんです。11日の「搭乗決定」に、次のような話が書かれています。
選ばれた有能な宇宙飛行士でも、このように訓練します。「火事場の馬鹿力」という表現もありますが、通常の人は異常事態が起きた場合に、想定したこと、訓練したことしか実行できません。いえ、訓練したこともできないのです。東京電力福島第一原発事故も、そうでした。

・・・訓練は大変でしょうとよく聞かれるが、このミッションではこういう実験をやると決まっていて、訓練の手順も決まっている。何回か訓練するとできることをやっていて、一歩一歩やっていって気がつくと打ちあげ当日になっている。NASAではそうした仕組みがしっかりできていて「すごい」と感心した。

大変なのは計画通りに行かないときだ。予定が狂ったときにどう対応するかが訓練のキモで、考えられる限りの異常事態を想定して対応する訓練を繰り返した。訓練の途中で不測の事態が発生したことを知らせる「グリーンカード」が差し入れられると、時間内に対策をとらねばならない。

例えばショウジョウバエ10匹を使う実験の訓練で「容器を開けると3匹しかはいっていない」といったカードが差し入れられる。真剣にやっているので実際の事故か訓練かの区別がつかなくなるほどで、訓練が終わるとぐったりしてしまった。打ちあげ前の2年間はこうした訓練をぶっ続けでやった・・・

部下が上司を選ぶ制度2

2025年9月21日   岡本全勝

部下が上司を選ぶ制度」の続きです。この記事には、中原淳・立教大学経営学部教授の「部下が上司を選ぶ制度は「劇薬」 専門家が語る効果と副作用」も載っています。

――部下が上司を選ぶ制度を採り入れる企業が出てきています。

管理職の定義は、部下の能力を伸ばし、チームで成果を出すこと。ただ、能力は高くても部下の育成やチーム作りに関心がない管理職はどの組織にもいます。そういう問題のある管理職をあぶりだすシステムとしては有効だと思います。しかし、副作用を伴う「劇薬」でもあります。

――副作用とは?

上司が言いたいことを言えなくなる。例えば、耳の痛い注意や厳しい評価のフィードバックは避け、部下にとって耳に心地よいことしか言わなくなる可能性もあります。
普通の会社では管理職は昇格人事なので、部下に選ばれずに降格となれば、給与も下がるかもしれない。そうなると本人のモチベーションは下がってしまいます。

――誰も管理職になりたがらなくなる?

一般的に会社員が管理職に昇格したいと思うのは、給与アップ、人事など裁量が増える、人を束ねて大きな仕事ができる、この三つが主な理由です。ただ、部下に選ばれ、評価され、査定などもできないとなると、管理職のインセンティブは下がりかねない。
管理職は嫌われ役となり、時には耳の痛いことも言い、部下を指導し、チームをまとめていくことが仕事です。管理職を人気投票のように選ぶことで、部下への指導という重大な役割がこぼれ落ちる危険性もあります。

部下が上司を選ぶ制度

2025年9月20日   岡本全勝

9月8日の朝日新聞に「部下が上司を選ぶ制度、うまくいく? 新しい管理職を総選挙、忖度なし」が載っていました。
・・・上司が部下を評価し、人事を決定するのは会社組織の常識。半面、上司との折り合いの悪さを理由にした離職者も後を絶ちません。そんな中で、部下が上司を選ぶ制度を採り入れる企業も出てきています。組織運営はうまくいくのでしょうか。

社員の投票で管理職を決める「総選挙」を2016年から実施しているのは、ストレッチ専門店やホテル事業などを手がけるnobitel(ノビテル、本社・東京)だ。ノビテルは現在、「ドクターストレッチ」を全国に約270店舗展開し、13人の「エリアマネジャー(AM)」がそれぞれ店舗を統括している。
新しいAMを選ぶ「総選挙」が行われたのは5月21日。事前の業績評価や経営陣へのプレゼンを勝ち抜いた4人の候補者が会場で熱意をアピールした。1千人以上の社員による「スマホ投票」で、横浜ポルタ店店長の高木塁さん(29)が1位に選ばれた。

総選挙の発案者は黒川将大社長(54)だ。
部下の評価に管理職が多くの時間を費やしていたことに疑問を抱いた黒川社長は、従業員の人事評価をランダムに選び、従業員らに聞き取り調査をし、その評価が適切かどうかをチェックした。
「どの評価にも大なり小なり、上司にとっての部下の好き嫌いが影響していた」
社内をよく観察すると、管理職が「派閥」を形成し、人事に影響が出始めていた。従業員らは顧客よりも、自分の評価や人事を握る上司の顔色をうかがうようになっていた。
そこで「総選挙」を採り入れるとともに、社員の給与は上司の評価ではなく、売上高などの指標に基づいて決めるようにした。
人事評価制度がクリアになったことで、上司への忖度がなくなったという。「僕に対しても誰も気を使ってくれませんが、健全だと思っています」と黒川社長は笑う・・・
(この項続く