カテゴリーアーカイブ:著作

連載「公共を創る」第192回

2024年7月12日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第192回「政府の役割の再定義ー行政組織のパラドックス」が、発行されました。前回から、幹部官僚に職務を果たさせることを議論しています。まず、自らの所管行政についてです。

制度を所管している、それを運用すればよいという「制度所管思考」から、所管範囲で課題を見つけ取り組むという「課題所管思考」に転換しなければなりませ。その思考を、若いときから植え付ける必要があります。それを指導するのは局長であり課長の役割です。もっとも、それをしたことがない、それに消極的な上司も多いのです。この「社風」を変える必要があります。
もう一つは、外部からの入力です。かつてはほぼ局ごとに審議会があり、有識者を入れて新しい課題と解決方向を議論していました。これは、有用な仕組みです。地域で起きる新しい課題について、研究者、報道機関、非営利団体、そして自治体は官僚より情報を持っていることが多いのです。審議会という形式にこだわらず、彼らの知見を取り入れて新しい課題に取り組むことがよいでしょう。

さて、パラドックスとは、次のようなことです。制度を所管している組織の方が、所管していない人より課題を見つけやすいと考えますが、そうならないことがあるのです。制度を所管していると、それの運用に注力し、課題が発生していても気がつかないことが起きるのです。例えば、その制度に関して補助金を持っていると、補助金配分だけで終わってしまうのです。

コメントライナー寄稿第18回

2024年7月9日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第18回「転職自由社会が与える衝撃」が7月4日に配信され、9日のiJAMPにも転載されました。

人事院が行う国家公務員総合職の新採研修で、講師を務めています。今春の採用者数は約800人ですが、2014年度は約600人でした。10年間で約3割も増えました。主な理由は早期退職者が増え、各府省が採用者数を増やしているのです。中途採用も広がりました。民間企業でも同様で、知人の大企業でも離職率は3~4割、3大銀行では中途採用者数が新卒採用者数と同数になっています。
日本の労働慣行であった、新卒一括採用、年功序列、終身雇用が崩れつつあります。崩した「黒船」は、転職が不利にならなくなったことです。人手不足や専門職の必要性から、中途採用枠が増えました。次の仕事が見つかりやすくなると退職しやすくなり、退職者が増えます。すると中途採用を増やさなければならないという「拡大循環」が生じています。

転職する職員は仕事のできる人たちですから、転職者が増えれば雇い主にとって損害は大きいです。職員が求めるのは、よい処遇、働きやすい職場、やりがい、技能の習得です。
新卒一括採用と人事課による配属先決定、経験年数による昇進と給与という仕組みから、本人の望む職場を提供し、できる職員にはふさわしい給与を提供する仕組みへ変わるのでしょう。それができない職場からは、できる職員は逃げていき、他方で評価の低い職員は居続けます。彼らの処遇も問題になります。

連載「公共を創る」第191回

2024年7月4日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第191回「政府の役割の再定義ー幹部官僚の自覚と教育訓練」が、発行されました。前回から、幹部官僚が役割を果たすべきことを議論しています。経済発展に成功し成熟社会になったのに、その転換に遅れているのです。長引く経済の停滞と社会の不安に対処できていません。

転換に遅れた原因の一つが、行政改革を政策の重点にし続けたことです。第3期の行革(1990年代から2000年代)は、仕組みの改革であり、例えば「官の役割変更」は必要な改革でした。しかし、その後も、「小さな政府」という改革は目標や終期がないままに続けられています。もちろん無駄は省かなければなりませんが、30年もこの運動を続けて、まだそんな大きな無駄があるのでしょうか。単なる「役所批判」になっていないでしょうか。新しい課題が生まれているのに、職員と予算を増やさないことは、政策に十分には取り組んでいないことになります。

職員と予算を増やさないことの弊害は、官僚が新しい政策に取り組むことに消極的にさせ、30年も続くと、新しい政策を考え実現した経験のない官僚を生んでいます。そして、過大な業務量は、職員の働き方にも悪い影響を生んでいます。

後半からは、幹部官僚に仕事をさせる方法を考えます。まず、所管行政について、課題を考え、取り組ませることです。彼らに職務を認識させ、またそのように育てる必要があります。

北日本新聞に出ました。

2024年7月1日   岡本全勝

7月1日の北日本新聞に、林・氷見市長との対談が載りました。能登半島地震からの復興についてです。発災から半年が経ちます。

6月中旬に氷見に行って、液状化被害の市街地を見せてもらい、その後に対談に臨みました。
大きな被害を受けた地区もあるのですが、市全体ではありません。液状化対策をすれば、現地での再建ができます。また、半数の世帯が現地に残ると回答していることは、心強いです。
災害復興と聞くと、多くの人は土木工事の困難さを想像しますが、実はその前の意見集約が難しいのです。出ていく人、残りたい人、自力では再建できない人、考えがまとまらない人、様々です。その意見がまとまれば、工事は進みます。
林市長は土木が専門で、液状化も区画整理もよく通じておられます。巡り合わせでしょうね。

連載「公共を創る」第190回

2024年6月27日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第190回「政府の役割の再定義ー復興庁の「社風」と「これまでにない危機」への心構え」が、発行されました。

大規模災害では政府に対策本部がつくられるのですが、東日本大震災の復興に当たっては、政府に復興庁という特別な役所をつくりました。関東大震災での帝都復興院、戦災での戦災復興院の例がありますが、戦後の自然災害では初めてのことです。役所を一つつくる苦労と、職員が仕事をしやすく成果を出せる「社風」をつくることに意を用いたことを説明しました。私一人でできたものではありません。職員たちがそれを理解して、仕事を進めてくれたからできたのです。

第182回から、幹部官僚の役割と育成を議論しています。与えられた所管範囲を超えた広い視野で国民の幸福のための行政を考えることと、そのような幹部官僚を育成する方法についてです。その一つの材料として、私の体験を紹介しました。
私は自治省に入りましたが、その枠にとどまらず国家官僚としてさまざまな経験をさせてもらいました。1978年に自治省に採用され、2016年に復興庁事務次官を退任するまでに38年間、国家公務員と地方公務員として勤務しました。そのうち、自治省と再編後の総務省で約16年、自治体勤務が約11年、内閣、内閣府、復興庁が約11年です。
後半は、省庁改革本部、内閣府大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官、総理秘書官、被災者生活支援本部、復興庁と、内閣の近くで仕事をすることが多く、その後の内閣官房参与・福島復興再生総局事務局長の4年余りを入れると、42年のうち15年とさらに長くなります。
振り返って、官僚生活の前半は「自治官僚」であり、後半は「内閣官僚」だったと自称しています