カテゴリーアーカイブ:社会の見方

日本語の表記2

2025年5月23日   岡本全勝

日本語の表記1」の続きです。今回は、縦書きと横書きについてです。
朝日新聞夕刊の「朝日新聞」という題字が、横書きになりました。もっとも、日曜日の紙面Globeは、かなり前から横書きでしたし、紙面の中には、横書きの記事もあります(Globeも、カタカナの「グローブ」でなくアルファベット表記です)。
ウエッブの画面では、どの報道機関も横書きです。公文書(行政文書)も、法令や表彰状などを除き横書きです。書物は、理科系や語学は横書き、そのほかは縦書きが多いです。

いずれ、新聞紙面も書物も、ほとんどが横書きになるのでしょう。理由は次の通り。
朝日新聞については、題字を横書きにするのですから、近いうちに本文も横書きになるのでしょう。というより、なぜ題字だけ横書きにしたのでしょうか。
多くの人は、ウェッブ画面になじむと、横書きが普通だと思うようになるでしょう。
そして一番の理由は、文章の中にアルファベットが多用されると、横書きがなじむのです。縦書きの文章に長い英単語を入れるのは、読みにくいです。アラビア数字もそうです。

私は、安易なカタカナ語(カタカナ英語)や、英単語をアルファベット表記のまま日本語に取り込むことは反対なのですが。時代の趨勢は、英単語をそのまま受け入れる方向に進んでいるようです。それを象徴するのが、会社の名前です。日本語だった会社名を英語やアルファベットに変え、新しくつくる会社名を英語または英語のような名前にすることが多いようです。
もっとも、1500年ほど前に漢字を知り、それを取り入れました。そして文字とともに、音読みも取り入れました。訓読み(従来の日本語)に加えて、外来語である漢字と音読みを取り込んで、その後の日本語ができあがりました。「日本」という国号も漢字でできていて、古来の大和言葉ではありません。今なら、「JAPAN」を国号にするようなものです。

いま、再び外来語を取り込むことになったと、見ることができます。漢文から英語に乗り換えるのです。すると、文字も書き方(縦書き、横書き)も変わるでしょう。
この項続く

異性との出会いはマッチングアプリで

2025年5月23日   岡本全勝

5月10日の日経新聞「くらしの数字考」は、「アプリ婚、今や4人に1人 社内結婚は減少傾向」でした。
・・・こども家庭庁が2024年、15〜39歳の男女2万人を対象に調査したところ、既婚者の4人に1人が「アプリで出会った」と答えた。アプリが婚活の「主役」に躍り出たのはなぜだろうか・・・

記事によると、2022年のある調査では、30代以上は男女ともに80%が「合コンに行ったことがある」と回答したのに対して、20代前半の合コン経験者は男性は38%、女性は50%です。夫婦の出会いのきっかけについて「職場や仕事」は1992年の35%から2021年の20%台と低下しています。
対面で直接切り出すことを避けて、まずはマッチングアプリで探すのでしょうか。

他方で、マッチングアプリでは、公開している個人情報を誰が見ているかわかりません。詐欺被害にある可能性も指摘されています。警察庁によると、詐欺被害にあった男性の約3割が、マッチングアプリでの出会いがきっかけだそうです。

かつて街にも列車にもゴミがあふれていた

2025年5月21日   岡本全勝

5月2日の朝日新聞「写真館 since1904」は「あふれるごみ ポイ捨て、今は昔」でした。
・・・日本はかつて「ごみの国」だった。
そう書きたくなるような写真の数々だ。海水浴場や動物園、観光地に向かう列車内はごみであふれ、東京の川はごみ捨て場と化した。
今ではポイ捨てを禁止する条例が各地にでき、道端のごみにも目を光らせる。時代は変わり、清潔が正義になった。5月3日は「ごみの日」・・・

そして、1969(昭和44年)の神奈川県鎌倉市の材木座海岸、1952(昭和27年)文化の日の東京・上野動物園、1968(昭和43年)の国鉄房総東線急行列車車内、1965(昭和40年)の東京・目黒川、1950(昭和25年)の東京・銀座の風景写真が載っています。
いずれも、ゴミであふれています。
日本人が公共の場でゴミを捨てなくなったのは、まだ最近のことなのです。

発展途上国政府幹部に日本の成功(行政の役割)を話す際に、日本人の清潔さ、決まりを守ること、社会的つながり(社会関係資本)が、その基礎にあったことを説明します。すると、多くの参加者から、「我が国は無理だ」との反応があります。
その際に、「いえいえ、社会の規律はつくるものです。明治初年に来た外国人は、日本人が時刻を守らずだらしない、と嘆いています。なのに、今では電車が1分遅れただけで、車掌はお詫びします。またかつては、電車の中もゴミだらけだったんですよ」と話すと、皆さん驚きます。

数十年後には、「かつて日本人は歩くときに、スマホを見ずに、背筋を伸ばして歩いていた」と写真が載るのでしょうか。

自由と平等が進むと社会が分裂した

2025年5月20日   岡本全勝

4月27日の読売新聞「あすへの考」は、佐伯啓思先生の「「米主導」没落 文明並立へ」でした。いつもながら鋭い分析です。ここでは一部しか紹介できないので、原文をお読みください。

・・・トランプ氏が高関税など独善的政策を強行しています。特異な米大統領の突拍子もない好き放題が耳目を引きますが、私は「トランプ現象」の由来に着目します。
第一は民主党のリベラル的政策の破綻。多様性確保や性的少数者擁護を「ポリティカル・コレクトネス(政治的公正)」を盾にして一つの正義にし、反感を買った。
第二は米国東部・中西部の「ラストベルト(さびついた工業地帯)」が物語る、製造業の衰退と白人労働者らの困窮。
第三は司法・行政などの専門家に対する大衆の信頼の喪失。専門家は利己的で、公正な判断を怠っていると多くの国民が受けとめた。

私は次のように考えます。
個人の自由や権利の平等を尊ぶ自由主義は米国の中心的価値です。ただ多様性や少数者をめぐり自由と平等の徹底を図ったことで、かえって社会が分裂した。中心的価値が齟齬をきたしたのです。
ラストベルトは世界規模の経済競争の結果です。米国は鉄鋼など国際競争力を失った製造業を見捨て、情報技術(IT)と金融を最重視する政策転換を敢行した。米国型ITと金融は国際市場を制したが、一握りの人間が利益の大半を手にする事態となり、貧富格差が甚だしく拡大した。ITは虚偽情報の洪水を起こし、社会の秩序と道徳の混乱を招いた。
トランプ現象はグローバル化が破綻していることの反映です。トランプ氏が高関税で自由貿易を破壊していると見るのではなく、グローバル化で自由貿易がうまく機能しなくなる一方で、市場競争に代わる制度を見いだせない状況下で、トランプ氏は強引に事を運んでいると理解すべきでしょう。

グローバル化は東西冷戦でソ連に勝利した米国の自由主義・市場競争・IT・金融が一気に世界に拡大した現象です。米国には独特の歴史観があります。「アメリカニズム(米国型)」は普遍的であり、世界が米国型を採用し、同じ一つの方向に進めば国際秩序は安定し、人類は幸福になるという信念です。
実際には米国型は米国の風土の産物です。その担い手は「ワスプ(アングロサクソン系プロテスタント白人層)」でした。古代ギリシャ・ローマを範とするエリート主義です。この支配層が道徳観と責任感を共有し、国を動かした時代は自由・民主主義はうまく作用した。綻びが生じたのは1960年代。人種的少数派の黒人が公民権運動を通じて政治に参画するようになったことです。ワスプは米国型の人権の普遍性という建前に縛られて、自らの支配を手放す行為に至ったともいえます。以後、多文化主義が台頭し、国論の分裂・対立が常態化してゆきます。
一方、自由主義経済学の根本理念、「私益は公益なり」はグローバル化の経済には通用しなかった。企業が利益を求めて生産拠点を国外に移転すれば、国内の製造業は空洞化する。私益の追求は公益に直結しないのです・・・

・・・私見では「冷戦後のグローバル化」「100年に及ぶ米国型の普遍化」「250年に及ぶ欧州近代社会」という三つの試みが今、全て機能不全に陥っているのです・・・

紙の教科書、電子の教科書

2025年5月18日   岡本全勝

4月25日の読売新聞「デジタル教科書の拡大」から。
・・・中央教育審議会の作業部会が、紙と同様にデジタル教科書を「正式な教科書」に位置づけることを提起している。作業部会では、国民や教育関係団体からの意見を踏まえ、今秋までに結論をまとめる見通しだ。デジタル教科書の特性について、識者3氏に聞いた・・・

酒井邦嘉・東京大教授の発言
・・・人間の脳の特性を踏まえると、学習に最も適しているのは紙媒体だと言える。
人間の脳は、いつ、どこで、誰が、何をしたかをエピソードとともに覚える。紙の教科書であれば、どのページのどこに書かれていたかの位置関係や、手触りといった様々な手がかりがあり、内容を深く記憶することが可能になる。
NTTデータ経営研究所や日本能率協会マネジメントセンターと行った共同研究では、紙の手帳に予定を書き留めると、スマートフォンなどの電子機器を使う時よりも短時間で記憶できた。手帳に書き込んだ内容を思い出す時の脳の状態は、電子機器より、言語、視覚、記憶に関わる領域の血流が増え、活発に働いている様子が確認された。

海外の研究でも、紙の方が脳の働きを促し、理解度を深めることが判明している。
スウェーデンのカールスタード大学などが行った実験では、大学生を二つのグループに分け、パソコンの画面と紙とで、同じ内容を読んだ際の理解度を比較した。一つのグループは電子ファイルにした文章をパソコンの画面で読み、もう一方は印刷した紙で読んだ。読解テストを実施したところ、紙で読んだグループの方が成績が高かった。紙の方が、与えられた情報を脳の中で関連した記憶と結びつけ、よりよく理解することができていた。
ノルウェーでも高校生を対象とした同様の実験が行われ、こちらでも紙で読んだグループが良い成績を上げた・・・

・・・国は学習用端末を配備し、教育のデジタル化を急ピッチで進めようとしている。だが、デジタルの利点は教育において、むしろ裏目に出ることが多い。
最近の教科書にはデジタル教材につながるリンクが多く載っているが、情報過多となり、逆効果だ。リンクがある度にそのまま読み進めるかどうかの判断を迫られる結果、思考を巡らせながら読むことができなくなり、理解の妨げとなる。
検索機能や動画の視聴など、様々な機能があるほど便利にはなるが、その一方で思考力や創造力が奪われ、人間は脳を使わなくなってしまう。
偉大な科学者たちは紙の本とノートで学び、革新的なアイデアを生み出してきた。子どもたちの脳の成長を促すためには、紙を使用した質の高い教育が欠かせない・・・

アンデルス・アドレルクロイツ、フィンランド教育相の発言
・・・フィンランドの一部の都市では、デジタル教科書から紙の教科書へと回帰する動きが出てきている。紙の本の重要性が再認識されているためだ。
デジタル化社会を見据え、児童生徒一人一人にノートパソコンを配布するなど、教育現場ではICT(情報通信技術)を早いうちから導入してきた。子どもの学習意欲やICTスキルを高めることが期待されていた。
だが残念ながら、世界の15歳の学力を測る「PISA(国際学習到達度調査)」の成績は、低迷傾向にある。初回の2000年にフィンランドの読解力は世界トップとなったが、直近の22年は14位と、この20年間で徐々に順位を下げてきた。数学と科学の分野も、それぞれ同様に下降線をたどっている。

読解力が低下した背景には、紙の本を以前に比べて読まなくなったことがある。社会や教育の場でデジタル化が進み、子どもたちの読書量が減った。それにより、集中力を維持できず、長文の内容がつかめないなどの悪影響を及ぼすようになったとみられる。
読解力は他の教科の成績と強い相関関係があり、全ての学びにつながる最も重要な力だ。政府は子どもたちの基礎学力を向上させるため、7歳~12歳を対象に「読む」「書く」の授業時間を増やすことを決めた。
子どもには、紙の本を読んでゆっくりと考えさせる教育的アプローチの方が有効だと考える。完全に教材をデジタルに移行した学校もあるが、今後は全ての子どもたちが紙の教材を使えるようにしたい・・・