カテゴリーアーカイブ:社会の見方

起業は、組織力より個人の力

2022年6月27日   岡本全勝

6月9日の日経新聞オピニオン欄、村山恵一さんの「起業立国、土台は個の力」から。

・・・日本のベンチャーキャピタル(VC)は独特の歴史を歩んできた。決定打は1987年の日本合同ファイナンス(現ジャフコグループ)の株式店頭登録だと同社出身で日本のキャピタリストの草分けである村口和孝氏は訴える。
起業立国で世界のモデルとなった米国では、投資の主体はキャピタリスト個人だ。ところが日本では、証券会社や銀行が70年代以降に設けた「VC会社」が主役になった。大手のジャフコが公開企業となり、組織的な管理をするVCが業界標準として定着した。
スタートアップは本来、先行きが見通しにくいものなのに、ジャフコでは事業が成功するエビデンス(証拠)探し、審査作業に膨大な労力を割いたという。起業家という個人の柔らかい創造性を企業統治の硬い論理で扱おうとした。
「こちらも個人でないと思い切った判断ができない」。村口氏は会社を辞めて98年に自らファンドをつくる。翌年、投資したのが創業間もないDeNAだった。

4年前、ジャフコは会社組織型からキャピタリスト個人が主軸の体制に転換すると表明したが、日本は世界的に異質なサラリーマンキャピタリストがなお圧倒的だ。事業会社がつくるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)もノンプロを増やしている。村口氏の見立てでは、深い経験のあるキャピタリストは日本にせいぜい100人。「この10倍はほしい」
不足を補うように政府の実行計画は、海外のVCに対する公的資本の投入を盛り込んだ。経団連も世界有数のVC誘致を提言する。幾人か内外のキャピタリストに聞いたが、そう簡単ではない。
最前線で活躍するキャピタリストは自身の才覚を頼りに活動し、投資の成功で巨額の報酬を手にする専門職だ。明快なキャピタルゲイン税制などの仕組みが整わず、思い切った仕事ができるのか不透明な日本は魅力的ではない・・・

企業に対する意識を調査した結果が図で載っています。「事業を始めるのに必要な知識やスキル、経験がある」と回答した割合は、インドが80%超、アメリカが60%超、イギリス、スウェーデン、フランスが約50%、ドイツが約40。日本は約10%です。大企業で勤めることを目標としてきた国民意識、そしてそれで成功してきた経済界が、裏目に出ています。

町工場での外国人労働者

2022年6月26日   岡本全勝

6月13日の朝日新聞夕刊「カモン東大阪、海外の人材」から。

・・・ものづくり大国ニッポン。その大きな拠点が、大阪の東大阪市です。浜名湖ほどの面積に、およそ6千の町工場。工場の集積度は日本ナンバー1です。
東大阪市役所で国籍別の人口推移を見せてもらいました。1980年まではゼロだったベトナムの方が2020年には3千人超えです。ほかの国の方もたくさんいるようです。

ぜったい、町工場で働いている人がいるはず。
私、自転車で巡ります。
まずは「三共製作所」。
創業は1929年。航空機、自動車などの部品をつくる。
この会社、ハンパない。
ベトナム、ネパール、ミャンマー、フランス、ガーナ……。従業員100人のうち6割が、外国のみなさんである。

共生のコツを松本に聞いてみると……。日本語で話し、同じ鍋を囲む。外国人同士でもパーティーを開き、銭湯に行くなど楽しんでいるとのこと。「そもそも、外国人の方が多いので、日本人が外国人の中に入らないと生きていけません、ハハハ」・・・

包摂と介在物

2022年6月25日   岡本全勝

先日「こども食堂3」で、多様性に配慮して共に生きることをインクルージョン(inclusion)と言い、包摂や配慮と訳すことを紹介しました。これを読んだ知人から、次のような指摘が届きました。

昔、鉄鋼会社での私の仕事は、溶けた鉄を固めることでした。そこで出てきたのが「Inclusion」です。「介在物」と訳されていて、主に酸化物で不純物です。介在物があると健全な固体の鉄とはならず、鉄板にした時に割れの起点になったりする厄介物でした。いかに介在物を除去するかが、大きな課題でした。
「所変われば品代わる」で、ここでは「配慮」になるのですね。

インドに日本のカレー店

2022年6月25日   岡本全勝

6月6日の読売新聞「日本の味 アジア開拓…大手飲食業 商品開発 現地好みに」が載っていました。

・・・日本の大手飲食チェーンが海外で新たな市場の開拓を進めている。インドなど日本食レストランの「空白地」だった国のほか、大都市郊外や地方への出店が目立つ。日本食ブームの拡大が追い風となっているが、現地の好みに合った商品開発などきめ細かな対応が成否のカギを握っている・・・

・・・インド・デリー郊外グルグラム。IT企業や多国籍企業の高層ビルが並び、急成長を遂げるインド経済を象徴する場として知られる。
日本のカレー専門店チェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」のインド1号店がここにオープンしたのは2020年8月で、「カレーの本場・インドに日本風カレーの専門店ができる」と注目を集めた。日本人駐在員に連れられたインド人スタッフが知人を連れて来店するなど次第に定着し、最も人気のメニューは「チキンカツカレー」(475ルピー=約800円)という。店員のマーシュ・マックスウェルさんは「この店では辛さやトッピングが調整できる。インドの飲食店ではこうした仕組みはないので面白いですね」と話す。
インドでは日本で牛丼店「すき家」を運営するゼンショーホールディングス(HD)も店舗を展開している。牛肉を食べないヒンズー教徒に配慮して、鶏肉や野菜などを使った丼もののメニューを中心に据える。
インドは巨大市場ながら、「自国の食べ物を好む人が多く、保守的な傾向が強い」(飲食業界関係者)とされる。それでも日本食レストランの数は徐々に増え、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると21年6月時点で約130店となった・・・

感染症対策の科学と政治

2022年6月24日   岡本全勝

6月9日の朝日新聞、飯島渉・青山学院大教授の「中国が続ける「ゼロコロナ」政策の教訓は」から。

――中国が続けてきた政策は妥当でしょうか。
「02年から03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行が、医療・衛生行政の改革のきっかけになりました。経済成長の果実を使いながら、医療保険制度の改革を行いました。現在の対策を見ると、社会主義の下での大衆動員による医療・衛生行政との連続性も垣間見えます」
「感染症対策を決定するのは科学であると同時に、むしろそれ以上に政治、文化や社会であることを痛感します。中国では、政治文化としての介入的で、動員的なモデルからの離脱が難しい。ただ、いずこの国も臨機応変な政策転換は容易ではありません」

――中国の現状から、日本や世界各国がくみ取れる教訓は何でしょうか。
「中国の対策の特徴は、『社区』や『小区』と呼ばれる居住単位を基盤とした厳しい行動規制、情報通信技術(ICT)を駆使した住民管理、それを実現しうる共産党の組織力、物資や医療人材を集中させられる経済力です。同時にロックダウンのコストは膨大で、継続は難しい」
「一方、そのあり方は近未来的でもあり、さまざまな健康情報の集約も含め、過度に情報が一元化されています。その方が効率的だという誘惑にかられるのですが、個人の生活において、常に自分の情報をめぐって防疫との『取引』をしなければいけない世界だといえます」
「中国の感染症対策におけるICTの活用は、デジタル化した社会での個人の生活のあり方を考えるきっかけを提供しています。ポストコロナを見据えながら、その過程をていねいに検証する必要があるでしょう」