カテゴリーアーカイブ:社会の見方

「先の大戦」、内容と名称

2023年10月12日   岡本全勝

10月2日の日経新聞夕刊、斉藤徹弥・編集委員の「「新しい戦前」に必要な思考 多面的で柔軟な外交が重要」に次のような話が載っています。

・・・筑波大学名誉教授で国立公文書館アジア歴史資料センター長の波多野澄雄さんは「先の大戦は4つの異なる戦争が重なったものだ」とみています。
まず日中戦争です。1937年から45年まで戦った一番長い戦争です。2つ目は日米戦争で、太平洋を舞台に多くの犠牲者を出しました。3つ目が東南アジアでの日英戦争です。フランスやオランダを入れてもよいでしょうが、東南アジアの独立に影響を及ぼしました。最後が45年8月から1カ月弱の日ソ戦争です。

先の大戦は、多大な犠牲を払い、あらゆる人に影響を与えました。その教訓も多岐にわたり、理解するのは容易ではありません。このように戦争を4つに分けて考えれば、それぞれの戦争の目的や被害、残した負の遺産などを考えやすくなるでしょう。戦争を多面的にみることができるようになるかもしれません・・・

4つに分けるのは、わかりやすいです。
では、全体を何と呼ぶか。「先の大戦」と呼びますが、悩ましいです。「第二次世界大戦」は日本がアジアで行った戦争だけでなく、ヨーロッパでの戦争を含みます。
当時の日本政府は1941年(昭和16年)に始まった戦争を「大東亜戦争」と呼び、その前に始まった日中戦争は「支那事変」と呼んでいたようです。戦後は「太平洋戦争」が使われるようになりましたが、これは対米戦争を表す言葉でしょう。

外国との経済格差

2023年10月10日   岡本全勝

この30年間、日本の経済が発展せず、所得が上がりませんでした。その間に、欧米は先に行き、アジア各国が追い上げ追い越していきました。日本は、安い国になりました。

9月25日の日経新聞、石鍋仁美・編集委員の「JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国」に次のような話が載っています。
・・・10月1日、JRグループが大幅値上げを実施する。購入方法によるが、上昇率は普通車で49〜69%、グリーン車56〜77%になる。ただし一般の日本人はほぼ関係ない。対象は訪日観光客が買える全国乗り放題の「ジャパン・レール・パス」。売れ筋の7日間用だとこの上げ幅になる。
今の7日券の店頭価格は東京・大阪間の新幹線往復と大体同じ・・・

これまで安くしていた外国人観光客用料金を、日本人並みに上げたのです。それでも、一人あたり所得が日本を超える諸外国観光客からは、まだ安い価格です。
「松竹梅3段階の価格を用意すると、日本人は竹、外国人は松を選ぶ」という業者の話も紹介されています。
都市の高層ホテル、地方の古民家改装宿など外国人狙いの宿泊施設も、高級物件が多いとのこと。東京六本木には、1杯1万円のラーメン店ができたそうです。

一つの国土に、二つの経済圏ができています。
でも、かつて途上国に仕事や観光に行ったとき、同じことを経験しましたよね。悲しいのは今回は状況が逆転して、豊かな訪日外国人に対して、貧しい日本人がサービスを売ることです。

9月29日の日経新聞「経済教室」、吉田二郎・ペンシルベニア州立大学教授「世界一の大都市形成に寄与 住宅市場の特質と課題」には、安い日本の住宅が取り上げられていました。
ワンルームおよび1LDKアパートの家賃は、東京都心では平均約14万円ですが、ロンドンでは約39万円、ニューヨークでは約56万円です。
住民にとってうれしいですが、他の条件の違いがあるとしても、それだけの経済格差があるということでもあるのでしょう。

アジア大会と政治

2023年10月9日   岡本全勝

読売新聞オンライン、10月8日の「君が代や日本の得点にブーイング、韓国と北朝鮮の合同チームなし…アジア大会閉幕」から。

・・・一方、あらゆる場面で政治的な背景を感じる大会でもあった。過去大会は韓国と北朝鮮による合同のチーム結成や行進が話題となったが、関係悪化で今大会は見られなかった。

サッカー女子の日本対北朝鮮戦は、国歌斉唱で君が代が流れるとブーイングが始まり、日本が得点するたびに落胆の声が響いた。バスケットボール女子の日本対中国戦も、日本の好機のたびにブーイングが起きた・・・

永遠の都ローマ展

2023年10月9日   岡本全勝

先日、キョーコさんのお供をして、東京都美術館の「永遠の都ローマ展」に行ってきました。展示されている彫刻などは素晴らしく(複製もありますが彫刻の場合は、鑑賞するには問題ないですね)、なかなかのものでした。
目玉であるカピトリーノのヴィーナスのほか、カピトリーノの牝狼(歴史の教科書に出てきます)、コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(写真で見たことはありますが、こんなに大きかったのですね)・・・。

もっとも、「永遠の都ローマ展」と銘打っていますが、カピトリーノ美術館展という方が正確でしょう。古代ローマから近世までの歴史をたどったもの、全貌を紹介する展示ではありません。
中世の教皇や貴族たちが集めた古代ローマの美術品。ローマ教会にとっては異教の品々です。それに気がついて教皇が手放して、ローマ市に寄贈したのが、美術館の起源のようです。ともあれ、現代に伝わったことはよかったです。ヴィーナス像は、地中に隠され、ずっと後になって掘り起こされたとのこと。だから、保存されたのですね。

見た後は、いつものように美術館の食堂で昼ご飯を食べました。ゆったりとした気分で、心地よい時間でした。室内を見渡すと、ほぼ満席。
で、男性は1割ほどで、残りは女性客です。お店の従業員に「男性客はこんなに少ないのですか」と聞いたら、「ええ」と笑っておられました。

ゆがむネット世論

2023年10月8日   岡本全勝

9月15日の朝日新聞オピニオン欄、山口真一・准教授の「歪む「ネット世論」 一部の声が強調されるリスク、メディアは認識を」が参考になります。

・・・インターネットの普及は、社会における情報のアクセス方法やコミュニケーションの方法を劇的に変化させた。人々はSNSなどのプラットフォームで意見や情報を自由に共有し、瞬時に大勢の人々に情報を届けることができるようになり、人類総メディア時代が到来した。
それに伴い、「ネット世論」という言葉をよく耳にするようになった。インターネット上では多様な人が様々な意見を言っており、政治的運動もしばしば起こっている。マスメディアもそのようなインターネットを人々の意見の場として取り上げ、報道することが少なくない。

しかし、実はインターネット上の意見分布が大きく歪(ゆが)んでいることが、筆者の実証研究で明らかになっている。それを世論としてマスメディアが報じたり、政府・政治家・企業・個人もそう捉えたりすることで、大きな問題が引き起こされていることを筆者は危惧している。
なぜインターネット上の意見分布は歪むのか。それは、インターネット上の意見には能動的な情報発信しかないためである。つまり、言いたいことのある人だけが言い続ける言論空間だ。その結果、極端な意見や強い信念を持った人々が大量に発信することが容易になっている。これは、通常行われるような世論調査が、聞かれたから答えるという受動的な発信であるのと逆である・・・

・・・昨今、マスメディアは情報の取得源としてインターネットを頼りにしている。しかし残念なことに、その際にこのバイアスを見落とすことが多い。特に、SNS上でのトレンドやバズといった情報は、多くの人々の意見を反映しているように見えるが、実際には一部のノイジーマイノリティーの意見が目立っていることも少なくない。その結果、サイレントマジョリティー、すなわち静かに意見を持っているがそれを公然と表現しない大多数の声が、マスメディアに拾われない。
この現象がもたらす社会的な影響は大きい。ノイジーマイノリティーの声が過度に強調されることで、社会の中での意見や価値観の多様性が失われる恐れがある。また、一部の声ばかりがマスメディアを通じて大きく取り上げられてお墨付きを得ることで、不要な対立や誤解を生む可能性もある。さらに、一部の声が多数派として伝わり、公共の議論や意思決定の参考とされてしまう・・・