公と政治の関係(p303)について
朝日新聞2003年11月25日夕刊論壇時評で、藤原帰一東大教授が「男性・女性」と題して書いておられます。
その中で、「論壇雑誌は男性向けに書かれているといっていい」
「最近刊行された『日本の論点2004』(文藝春秋)では・・・今の論壇では誰がどんなことを議論しているのか、早わかりになる便利な本だ。だが、議論の焦点は国際情勢、国家、憲法問題などに集中し、男女関係、結婚、家族などににかかわる話題は少ない。そんな領域は「少子社会」とか「高齢化と社会保障」など後半になって登場し・・・結婚と家族の現在などは「日本の論点」にならないらしい」
「性とか家族とかいった問題は、少子化のような天下国家の大事と認められた時にしか議論されていない。天下国家にかかわる「おおやけ」を論じる場では、男女にかかわる「わたしくごと」が考察から外されてしまうのである」
「出生率の低下は、高齢化などと併せ、将来の労働市場や国家財政を揺るがすだけに、これも天下国家の課題として扱われている」
教授は、少子化議論がツボを外しているという主張の中で述べておられます。
文脈は違いますが、拙著の主張からは、「公」の範囲、それと政治との関係としてとらえることができます。これまでは、家庭の問題は、人口が減って労働力が減ること、高齢化で社会保障が増えること、家族での介護が十分でなくなり介護保険が必要なこと、といった視点から政治の課題となりました。
経済や公的サービス、財政の収入と負担、という観点からしか、政治に入力されないのです。私の言うように私たちが暮らしていくのに必要な「関係資本」「文化資本」「公」「公共空間」に対し、これまでの政治は極めて範囲が狭いのです。そして、従来型の発想では、これらの問題は解決しないでしょう。(2003.11.30)
【注】
p337第2章注1
松本英昭著「要説地方自治法」は、第2次改訂版が出ました。
p341第8章注5
神野先生の3つのサブシステム論は、神野直彦著「財政学」(2002年、東京大学出版会)に「第二章 財政と三つのサブシステム」として整理されています。
p342第9章注9
塩野七生著「ローマ人の物語」は「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサル-ルビコン以後」p372以下です。