辞書の価値の下落1

2026年7月22日   岡本全勝

福林靖博さんの「わが実家「蔵書放出祭」始末記」(2015年2月19日)は、本好きな福林さんが本を処分した話です。実家に本を預けていたのですが、実家を売却することになり処分せざるを得なくなります。知人や近所の人に引き取ってもらい、最後は古本屋に来てもらいます。
私の「少し古本を処分14」と同様、同じ境遇の人にとっては涙なしには読めません。ただし私のは、ぼやきと実況中継ですが、福林さんの文章は、格調高い随筆となっています。お読みください。

最後の部分で古本屋とのやりとりが書かれ、次のような記述があります。
・・・意外だったのは、『大漢和辞典』の買い取りを、「値段はつけられないので、せっかくですからお手元に残されては」と、やんわりと断られてしまったこと。最近は需要も少なく、また欲しい人は既に持っていることが多いので、箱入りでもない限り引き取っても売れないのだという・・・

大漢和辞典』通称「諸橋大漢和」は、私たちにとっては、偉大な漢字の殿堂でした。判型は異なりますが、広辞苑が13冊並んでいると想像してください。それが、誰も引き取ってくれないのです。
「諸橋大漢和」には、とんでもない労力が費やされています。「完成までに数十年に及ぶ歳月を経ている(鈴木が依頼した1925年から初版刊行の1960年まで35年、諸橋が遺嘱した補巻刊行の2000年まで75年)」。しかもできあがった印刷用の原版が、空襲で燃えてしまいます
この項続く。