プラスチック文明

2026年5月19日   岡本全勝

5月7日の朝日新聞に「プラスチック文明、自然観まで変えた」が載っていました。

・・・イラン情勢の悪化を受けた石油関連製品の供給不安は、現代文明がどれほどプラスチックに依存してきたかを可視化しつつある。20世紀を通じて日常生活のあらゆる場面に浸透した人工物質は、「夢の物質」や「悪魔の物質」と呼ばれながら、人々の感覚や自然観にも影響を与えてきた。
「プラスチック」は、化学反応によって合成される100種類以上の物質の総称だ。19世紀半ばに米国で発明されたセルロイドや、1907年生まれのフェノール樹脂がその始まりとされる。第2次世界大戦後にポリエチレンなど石油由来のプラスチックが爆発的に普及し、大量消費社会の到来をしるしづける。
木材や陶土などに比べて低コストで、自由自在な造形が可能。鮮やかな色彩や、流線形のデザインをまとった新素材を、当時の人々は「モダン」の象徴として歓迎した。

昨年末に「感覚史入門 なぜプラスチックを『清潔』に感じるのか」を刊行した東京大の久野愛准教授によれば、「科学の力を信奉するモダニズムの時代は、天然素材より人工物の方が優れているとする見方が一般的だった」。
たとえば、戦後に人気を博した食品保存容器「タッパーウェア」は、米国での発売当時、つるりとした手触りやカラフルな見た目が強調され、「39セントのファインアート」と絶賛された。五感に関する特徴では、無味無臭であることもアピール材料になった。都市の近代化においては「におい」の排除が重要視され、食品などを包む透明な容器やフィルムは、その要請に合致し、視覚優位な社会の形成に貢献したとされる。
「新素材の登場は、人々の感覚や感性の再編成を促し、新たな日常として定着していった」と久野さん・・・

・・・しかしオイルショックなどで大量消費に対する反省が広がる70年代ごろから、プラスチックは一転、その「主犯格」として批判を浴び始める。燃焼時に出るダイオキシンの有毒性も知られるようになり、身体や環境をむしばむ「悪魔の物質」と忌み嫌われるに至った。
それでも79年には米国のプラスチック生産量が体積において鋼鉄を追い抜く。遠藤さんは言う。「海底ケーブルの被覆膜、飛行機の翼、人工心臓。今や代えの利かない『物質を超えた物質』となったプラスチックは、現代文明を陰で支えながら毛細血管のように社会全体に浸透した」
日常風景にあまねく埋め込まれた結果、逆にその存在が見えづらくなっているのが現在のプラスチックだ。フランスの批評家ロラン・バルトはすでに約70年前、こうした状況を「プラスチックは使用されたという事実の中に完全にのみ込まれている」との言葉で喝破した・・・

多くのプラスチックが土に帰らず、ゴミとして海を漂い、山野を汚しています。海洋ではプラスチックスープと呼ばれるほど溜まり、誤って食べた生物が死んでいます。マイクロプラスチックは、人体に悪影響を及ぼしているようです。便利なのですが、人類は、とんでもないことを続けています。