吉田徹著『ミッテラン 現代フランスを率いた理想と野望』(2026年、中公新書)を紹介します。帯には「戦後フランス初の左派大統領」「高貴にして卑俗なる人生」とあります。
著者は「まえがき」で、この本の二つの趣旨を述べています。政治には、政治家(ステーツマン)と政治屋(ポリティシャン)がいます。しかし政治家も、汚い手を使ってでも選挙に勝たなければ、また政敵を蹴落とさないと、政治家として政策を実現できません。高貴さと卑俗さとを併せ持っています。ミッテランは、その二つを体現していました。
もう一つは、ミッテランの人生を追うことで、フランスの政治史、世界の政治史を学ぶことができるからです。
ミッテランの政治活動は、3つの時期に分けることができます(228ページ)。
第一は、1946年に始まる第四共和制で、戦時中のレジスタンス活動組織化の手腕が買われ、最も若い閣僚として将来を嘱望された時代。しかし、1058年の第四共和制崩壊とともに、不遇の時代に入ります。
第二は、長い時間をかけた、復活の時代です。瀕死の社会党を復権させ、1981年の左派政権へと実を結びます。
第三は、1981年から95年までの二期14年にわたる大統領時代です。しかし、意図していた社会主義は、国際政治と国際経済の中で実現することができず、国家の舵取りに苦労します。
こんな波乱な人生を過ごしたこと、政権を取るまでの苦労を知りませんでした。政治とは、かくも過酷な人生の仕事です。勉強になります。お勧めします。
また「あとがき」で、次のように述べています。
「本書が目指すところは3つあった。ひとつは当然ながら、フランスの一時代を築いたフランソワ・ミッテランという人物がいかなる存在であったかを、過不足なく伝えること。2つ目は、彼の存在と、時代によって異なる力学のもとに置かれるフランスの政治と社会の相互作用を描くこと、最後には、この2つを通じて、フランスという国の20世紀後半の足跡を辿るとともに、政治という、不可思議な営みの本質を探ることである」
この目的を十分に達成していると思います。伝記はしばしば分厚い本になりますが、えてしてその人の人生を追うことに終始しがちです。新書という分量で、著者が掲げたこれらの目的を達成することは難しいことです。
220ページの8行目。「昭仁天皇」とありますが、現在の上皇陛下をさすのなら「明仁天皇」ではないでしょうか。