若い世代の低福祉・高負担感

2026年2月12日   岡本全勝

1月16日の朝日新聞オピニオン欄は「ほころぶ社会保障」でした。
・・・人生のさまざまなリスクに備える「安心」のための仕組み、社会保障。しかし近年は、制度の持続性や個人の負担に対し、不安や不満が広がっています。なぜ今の社会で安心感を持てないのでしょうか。「支え合い」の制度を、立て直す道筋は・・・

宮本太郎・中央大学教授の発言「若い世代に「低福祉・高負担感」」から。
―社会保障への不満や不安が現役世代に強まっています。世代間対立や利用者への偏見をあおるような主張も見聞きします。
「暮らしの困難が増している時に、頼りになるはずの社会保障への支持がなぜ揺らいでいるのか。ここにさまざまな問題を考えるヒントがあります。私は不満が強まるのはむしろ当たり前と考えています」

―なぜでしょうか。
「この約30年、日本の実質賃金は上がっておらず、最近は物価高で生活が苦しい人が増えています。給与明細を見ると、支給欄の金額はあまり増えない分、控除欄で差し引かれた社会保険料や税金が大きく感じられる。このお金がどこに行っているのか、誰でもいぶかしみます」
「特に現役世代は社会保障の給付が少なく、恩恵を実感しにくい。なぜこうなるのか考え、たどり着くネット情報には、誤解や誇張、偏見も少なくありません。高齢者や生活保護受給者、外国人らが不当に大きな給付を得ていると考えてしまう人も出てきています」

―問題をどこから解きほぐせばよいでしょう。
「日本の社会保障の水準は国民全体で見れば、先進国の中で『中福祉・やや低負担』ですが、若者にとっては『低福祉・高負担感』なのです。この落差を解消していくためにも、負担と給付それぞれの中身を詳しく見ることが必要です」

―どんな状況ですか。
「まず『能力に応じた負担』の原則が徹底されていません。社会保険料は料率が一律で低所得層の負担が重くなる逆進性がある。1990年代以降、社会保障費の増加に応じて負担が引き上げられましたが、税ではなく社会保険料が中心で、偏りが拡大しました」
「給付の方も現役世代向けは『必要に応じた給付』になっていない。全世代型社会保障として強化されてきた子育て支援は、現役世代を支える決定打のはずでした。ところが、経済的事情で結婚できない、子どもをもてない層が増えており、最近、この層を中心に、健康保険料への上乗せで財源負担を求められることに反発が出ています」

―制度が社会情勢に合っていないのでしょうか。
「そう言わざるを得ません。もともと日本の社会保障は、男性の稼ぎ手が安定的に働く想定のもと、現役時代は勤め先の年功賃金で家族を扶養し、社会保険は定年退職後の生活や病気などへの対応に重きを置く構図でした。ところが90年代以降、このやり方を支える前提が覆った。非正規雇用やひとり親世帯など、所得が低いのに社会保障の支援を受けられない生活困難層が急増したのです」

―改善にはどんな視点が大切ですか。
「まず社会保障と雇用政策の連携です。ポイントは、介護・医療や保育といったエッセンシャルワークに就いて暮らしていける条件を整えること。働き手の処遇を改善し、サービス量の確保をはかる点で社会保障政策ですが、地域を支える雇用政策でもあります」