「部下が上司を選ぶ制度」の続きです。この記事には、中原淳・立教大学経営学部教授の「部下が上司を選ぶ制度は「劇薬」 専門家が語る効果と副作用」も載っています。
――部下が上司を選ぶ制度を採り入れる企業が出てきています。
管理職の定義は、部下の能力を伸ばし、チームで成果を出すこと。ただ、能力は高くても部下の育成やチーム作りに関心がない管理職はどの組織にもいます。そういう問題のある管理職をあぶりだすシステムとしては有効だと思います。しかし、副作用を伴う「劇薬」でもあります。
――副作用とは?
上司が言いたいことを言えなくなる。例えば、耳の痛い注意や厳しい評価のフィードバックは避け、部下にとって耳に心地よいことしか言わなくなる可能性もあります。
普通の会社では管理職は昇格人事なので、部下に選ばれずに降格となれば、給与も下がるかもしれない。そうなると本人のモチベーションは下がってしまいます。
――誰も管理職になりたがらなくなる?
一般的に会社員が管理職に昇格したいと思うのは、給与アップ、人事など裁量が増える、人を束ねて大きな仕事ができる、この三つが主な理由です。ただ、部下に選ばれ、評価され、査定などもできないとなると、管理職のインセンティブは下がりかねない。
管理職は嫌われ役となり、時には耳の痛いことも言い、部下を指導し、チームをまとめていくことが仕事です。管理職を人気投票のように選ぶことで、部下への指導という重大な役割がこぼれ落ちる危険性もあります。