ウェルビーイングの国際規格

11月21日の日経新聞に「中高年「働きがい」向上へISO規格 指標作りのヒントに」が載っていました。

・・・企業や自治体が社員や住民のウェルビーイング(心身の健康と幸福)を向上させるのに役立つ国際標準化機構(ISO)の規格がこのほど発行した。企業が指導的な役割を担う中高年の社員など向けに、仕事の意欲を高める行動計画作りの手順や効果を測る指標を考えるのに役立つ。規格に沿って取り組む企業は、人材の確保や投資の受け入れで有利になりそうだ。

ウェルビーイングは人々が身体や精神面、社会的に良い状態にあることを指す概念だ。1940年代に世界保健機関(WHO)憲章に書かれた言葉で、ここ数年は日本でもよく使われる。ただ個人の価値観は多様で、ウェルビーイングの具体的な姿は一人ひとりで異なる。そのために企業などが目標や達成する手段を設定するのが難しい面があった。
だが日本や世界では心身の病気や孤独に悩む人が増えている。WHOは2023年、うつ病に悩む人は世界で2億8000万人に達すると発表した。調査会社の米ギャラップによると世界人口の2割強が強い孤独感を抱える。特に中高年の社員は仕事の責任や加齢に伴う体の変化で体調を崩しやすい。

そこでISOは中高年の社員や住民などを念頭に、ウェルビーイングの指標作りなどに役立つガイドラインにあたる規格を作った。ISOの規格は国際的な取引を円滑に進めるために、世界で同じ品質や水準のサービスなどを提供するために作る。日本や米国、中国など約30カ国が10月に実施した投票で規格案が通過し、11月12日に発行した・・・

・・・規格は企業や自治体がウェルビーイングの向上を目指す手順を示す。まず企業の社長や自治体の首長など、議論を主導する人物を決める。次にウェルビーイングの達成度を測る様々な指標や、測り方を定める。指標は仕事への意欲や幸福感など主観的なものと、業績など客観的なタイプの両方を含む。
続いて実施する対策の効果を調べる。例えば企業ではアンケート結果などを基に社員の性格や部署との相性を人工知能(AI)で分析するツールを使い、人事面談や労働環境の改善、人員の再配置に生かす。その後に仕事への意欲がどう変化したかも調べ、次の改善策につなげる。

企業は規格の手順に従い、ウェルビーイングの向上を目指す。ポイントは主に2点ある。まずは体の健康や社員の人間関係の改善、働く意味の提示などの様々な関連分野のうちでどれを対象に選ぶかだ。次に目標に向けて適切な指標を設定することが大切だ。経済産業省が認定している健康経営に取り組む企業の事例が参考になる・・・