曖昧な言葉「不適切でした」

4月26日の朝日新聞オピニオン欄「「不適切」への批判、適切?」、梁英聖さんの「あいまいに逃げず、基準を」から。

・・・差別や人権侵害の疑いがある問題を語る際に「不適切」という言葉を使うことは、やめるべきです。
不適切さの中身を具体的に言わずに済んでしまう言い方だからです。実際、差別をした人が差別だと認めずに謝る際に最も便利な言葉として使われているのが「不適切でした」です。
残念ながら日本では、差別や人権侵害を明るみに出すべき報道機関までが「先ほど不適切な発言がありました」といった言い方を使っているのが実情です。

あいまいな言葉で謝るのは責任から逃げている証拠。まずは、公人がこの言葉で逃げるのをやめさせることから始めなければなりません。問題になっている事実は何なのか、どのような基準に照らして問題なのかを具体的に質問で追い詰める作業が重要です。
ひとくくりに不適切だと言われる言動の中には、人権侵害や差別といった社会正義に反する法規制すべき行為もあれば、芸能人の不倫のようなそれ未満のものもあります。前者ならアウトですが、両者の境界をあいまいにするために、不適切という言葉が使われます。
だから、人権侵害や差別のない社会をつくるには、まず両者の間に線を引くことが絶対に必要なのです・・・