富む前に高齢化するアジア

10月17日の日経新聞オピニオン欄「富む前に高齢化するアジア」から。20年ほど前に、日本が、欧米各国に比べて高齢化社会から高齢社会への移行期間が短く、「早く高齢化する」と言われましたが、アジア各国はもっと早いのですね。経済成長だけでなく、年金制度の成熟化などの問題もあります。

・・・問題の深刻度を理解するため、タイの変化を高齢化の進行で知られる国々と比較してみたい。2002年から21年までの間に、タイの人口に占める65歳以上の割合は7%から14%に拡大した。一般的にこの割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」と呼ばれる。
この移行期間が日本は24年、米国は72年、フランスは115年かかった。タイはこの3カ国と異なり、豊かになる前に老いを迎えている。タイでは21年の1人あたり国内総生産(GDP)が7000ドル(現在の為替レートで約105万円)だった。日本の高齢化率が同程度だった1994年、所得水準はドルの実質的な価値に換算して5倍近く高かった。

タイが抱える問題は、経済・社会面で非常に重要なアジア地域での傾向を浮き彫りにしている。ベトナム人の所得水準はタイ人の約半分だ。ベトナムが高齢化社会から高齢社会に移行するには17年程度しかかからないだろう。移行にそれより時間がかかっているインドネシア(26年)やフィリピン(37年)といった国でも、他国と比べてはるかに低い所得水準で高齢社会を迎えるとみられる。東南アジアは地域として2042年に高齢社会に突入する見通しだ。
南アジアはそこから10年近く持ちこたえるだろうが、地域格差は大きい。スリランカは、現在の経済危機以前から平均所得がタイの約3分の1にとどまり、28年には高齢社会になると予測されている。世界最多の人口を抱えるインドの一部はすでに老いに直面している。南部ケララ州では人口の17%が60歳以上だ。50年までに貧困国で予想される高齢者人口の増加のうち、70%はアジアが占める・・・