災害時、混乱する窓口、全体を見る責任者の重要性

2016年10月10日   岡本全勝

少し古くなりましたが。9月29日の朝日新聞夕刊に、「電話の嵐、役場混乱。岩手・岩泉、台風被害」という記事が載っていました。
・・・台風が上陸した日、防災の司令塔となるはずの町役場は、鳴り続ける電話対応に忙殺されて機能不全に陥っていた。1カ月前のあの日、役場で何が起きていたのか。町の検証作業で判明した事実から再現する・・・
・・・(8月30日)電話は午後5時以降、ひっきりなしにかかってくるようになった。会社から帰宅する町民が道路が通れるかどうかを問い合わせてきたためだ。職員は電話の内容を書き留め、道路担当課に問い合わせた上で回答したり、浸水地区に土囊を持っていくよう消防署に要請したりした。
町役場は、代表電話番号にかけると総務課につながるようになっていた。総務課は午後3時以降、対応する職員を5人から10人に増員したが、課内の11台の電話は鳴りやまず、職員の大声で課内は騒然となった。職員は電話メモをホワイトボードに貼ったが、スペースがなくなり、課内の書棚や窓ガラスにも貼った。
午後5時20分、グループホームのそばを流れる小本川を管理する岩手県の岩泉土木センターから「氾濫注意水位の2メートル50センチを超えた」との情報が電話とメールで届いた。気象庁の情報では、今後の雨量が1時間に80ミリを超えると予想されることも確認された。町が避難勧告を出す基準だ。
だが、電話を受けた職員は再び町民からの問い合わせ対応に追われ、情報は共有されなかった。避難勧告を発令する立場の伊達勝身町長にも伝わらなかった。
午後6時7分、日没。「裏山が崩れそう」「水が自宅に入ってきている。何とかして」。支所職員や町民の情報で、総務課から一歩も出られない職員にも、事態が急激に悪化していることが理解できた。だが、目の前の電話対応に追われ、職員同士で話をすることも、同じ階の町長室に事態を伝えにいくこともできなかった。
電話が鳴りっぱなしの状態は、午後8時25分の停電で終わった。真っ暗の庁舎内で職員は懐中電灯を持ち寄り、町長室に集まった・・・
・・・町全域がかつてない被害に襲われたことを職員が知ったのは翌31日の早朝。発電機でつけたテレビなどの報道だった・・・
緊急時に、対応する窓口がどのような状態になるのかが、よくわかります。それぞれの職員は、全力を尽くしています。しかし、全体を見て、組織として何をしなければならないか。それを考える責任者が、いなかったのです。
誰か一人は、みんなと同じことをせず、「現場では何が起こっているか。次にどのような事態が想定されるか」と想像力を働かせ、「役場としてとらなければならない対応は何か。職員をどう動かすか。誰に何を連絡するか」を考える人が必要なのです。
緊急時や前例のない事態の時に組織を動かす、その際の責任者の役割と重要性がわかります。よい検証記事だと思います。(2016年10月10日)