「取りやめさせていただきます」

インフルエンザ対策で、いくつも催し物が中止になっています。先日、私にも、登壇を予定していた討論会を中止するとの連絡が来ました。
今日の話題は、その通知文です。「××の開催を取りやめとさせていただくことにしましたので、ご連絡致します」とあります。

主催者が責任を持って判断したのですから、「開催を取りやめとさせていただくことにしました」は、ないでしょう。なぜ簡潔に「××の開催を取りやめます」と言わないのでしょうか。「××の開催を中止致します」もよいでしょう。
「させていただきます」が、丁寧な表現だと思っているのでしょうか。丁寧に言うなら「××の開催を取りやめることと致しましたので、その旨ご連絡いたします」で、よいでしょう。

文化庁文化審議会答申の「敬語の指針」によると、次の通り(p40。一部省略)。
【解説1 】「( お・ご)……(さ)せて いただく」といった敬語の形式は,基本的には,自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。したがって,ア ),イ)の条件を どの程度満たすかによって ,「発表させていた だく」など , 「…(さ)せていただく」を用いた表現には,適切な場合と,余り適切だとは言えない場合とがある。

【解説2】次の①~⑤の例では,適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。
①相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
「コピーを取らせていただけますか。」
②研究発表会などにおける冒頭の表現
「それでは,発表させていただきます 。」
③店の休業を張り紙などで告知するときの表現
「本日,休業させていただきます。」
上記の例①の場合は,ア ) ,イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる 。
②の例も同様だが  , ア ) の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため ,「発表いたします 」の方が簡潔に感じられるようである。
③の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが,②と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします 」の方が良いと言えるだろう。

参考「させていただく症候群
あなたは、変な日本語を使っていませんよね。