アメリカ、ロースクールで人工知能を規制

2026年7月21日   岡本全勝

7月4日の朝日新聞に「米ロースクール、AI規制加速 実在しない判例や根拠不明の記述増」が載っていました。

・・・生成AI(人工知能)が、米国の法曹界や大学を翻弄している。弁護士がAIで作成して裁判所に提出した資料に、捏造や誤りが相次いで判明。法律家を養成する法科大学院(ロースクール)では、AIの利用を禁止する名門校も出てきた。

米西部カリフォルニア大バークリー校のロースクールは、今夏からAIの利用を大幅に制限する方針を発表した。採点対象となる課題のほぼすべてでAIの使用を禁止。論文は、テーマや構成案を聞くことのほか、下書きや推敲、文法チェック、翻訳でもAIの利用を認めない。
2年前に定めた規則では、アイデア出しや推敲などに使うことは許されていた。米国の大学で最も厳しい水準の措置に転じたのはなぜなのか。
「我々の教育の目的は、学生が法律家として活躍するために必要な批判的思考力を身につけることです」。カリキュラム担当のジョナサン・グレイター教授はこう話す。「しかし、AIへの過度な依存が、そうした能力の育成を損なってしまいました」

同校の教授たちが「異変」に気づいたのは、2024年ごろだ。学生の提出物に、実在しない判例や根拠不明な記述が増えた。ある学生は「ChatGPT(チャットGPT)との会話中に独自の論を見いだした」と発表したが、それはすでに他の文献に書かれたものだった。
学内のAI規制を主導したクリス・フーフナグル教授は、法律の解釈を現実の事案に結びつける法的推論という法律家の大事なスキルについて「基礎的技術を身につけなければ、AI企業にアウトソースする弁護士ができあがってしまう」と危機感を抱いたという。
AIの利用を禁じることは「実社会と逆行する動き」との批判もある。だが、まずは法的思考力を身につけ、その後にAIの活用を学ぶべきだとする。AIの「監督力」こそが必要になると考えるためだ。

米メディアによると、カリフォルニア州の弁護士2人が6月、AIを使ってありもしない判例を裁判所に提出したとして、それぞれ2500ドル(約40万円)の罰金と6カ月間の活動停止処分を下された。
フランスのHEC経営大学院のダミアン・シャルロタン研究員によると、22年のチャットGPTの登場以降、世界で少なくとも1600件のAIによる虚偽・捏造が裁判所に提出され、そのうち米国が1100件以上を占めた。

もともと弁護士はAIに取って代わられやすい職業の一つと指摘されてきた。業務の多くが大量のテキストデータの処理や過去の判例の照合など、AIが得意とする仕事が多いためだ。人間が何日もかけて調べる過去数十年分の判例や文献を、AIは一瞬で見つけ出せる。
ある弁護士はAI利用について「スタッフを雇う必要がなくなり、はるかに速く、安上がりで仕事ができる。使わない手はない」と話す。
それでも、グレイター教授はAI時代、法律家に求められる力はむしろ重要性が増していると指摘する。
「分析力と倫理観、そして何よりも判断力。それはAIには取って代わられてはいけない」・・・