6月7日の朝日新聞に「コンサルのち、すし職人 AI時代、現場で働く」が載っていました。
・・・東京・銀座にある高級すし店「はっこく」。ひのき板で作られた三つのカウンターの一つを任されているのは、駆け出しのすし職人、深澤宏樹さん(30)だ。
慶應義塾大学を卒業後、米大手コンサルティング会社のアクセンチュアに入り、日本法人でテクノロジーを担当。港区のオフィスでIT戦略や経営戦略を語っていた。順調なキャリアに見えるが、物足りなさを感じるようになった。「ITやテクノロジーを分析する分野では世界に自分より優れた人がたくさんいる。自分の強みは何だろう、と考えるようになったんです」
学生時代にアルバイトをした時、海外の観光客にとってすしのブランド力が圧倒的だったことを思い出し、「海外ですし屋をやってみたい」という新しい目標ができた。会社勤めをしながら、すし職人養成の専門学校「東京すしアカデミー」に通った。
アカデミーの福江誠校長(58)によると、コロナ後、社長や、ITやコンサル企業に勤める会社員など、いわゆるホワイトカラー層の受講が一気に増えたという。その背景について、福江校長は「技術を身につけることが魅力的な『生存戦略』に見えるのでしょう」と語る。
5800人の卒業生のうち、およそ1割が海外で開業したり、就職したりした。「欧米の一流店で働くと年収は約2千万円に達するケースもある」と福江校長は話す・・・
・・・AIの普及で働き方はどう変わるのか。「ホワイトカラー消滅」(NHK出版新書)の著者で日本共創プラットフォーム(JPiX)会長の冨山和彦さんに聞いた。
短期的には、AIの浸透でプログラマーや総務や営業などの仕事が削られるだろう。会計士や弁護士であっても、過去の判例や学説を探すような2次情報の検索・分析はAIの独壇場になる。「中間管理職」も、AIと競合するため非常に厳しい立場に立たされる。
生き残っていける働き手には、大きく分けて二つのタイプがある。
一つは、AIを「スーパー部下」として使いこなし、プロンプト(指示)を出してグローバルな判断、的確な意思決定ができる一握りの「優秀なボス」。もう一つは、現場で自らの身体と感情、技能を使って「1次情報」を取りに行くブルーカラー的な働き手だ。人手不足なので、すでに建設現場の高度な重機オペレーターや高所作業員などは、年収1千万円を超える業種もある。
今後はエッセンシャル産業やブルーカラーとホワイトカラーの中間領域の仕事で特殊な資格、技術を持つ人びとが新たな「中産階級」を形成していくだろう。対人サービスや現場労働の集約型産業に富が集まってくる。歴史の必然とも言える。
大企業の歯車として誰に感謝されているか分からない内勤仕事より、目の前のお客さんの役に立ち、直接「ありがとう」と言われる対人労働の方が、仕事としての充実感は圧倒的に高い。人間がやるべき仕事の本質をもう一度見つめ直す、良い機会になるだろう・・・